公開講演会・公開講座
ピロリ菌と胃がん検診(講演概要)
2016年11月26日(土)開催:杏林大学公開講演会
橋 信一
○講演概要
1)胃がんの状況
世界的に、胃がんによる死亡者数は全がん死亡者数のうち男性で第2位、女性で第4位と極めて高く、その対策が重要です。しかもその多くが東アジアの日本、韓国、中国の患者さんです。日本では毎年5万人の方が胃がんで死亡されています。戦後のベビーブームに誕生した世代が胃がん好発年齢となりました。今後ますます胃がん死が増えるものと危惧されています。
2)ピロリ菌と胃がん
ピロリ菌は、正確にはヘリコバクター・ピロリ菌といいます。胃の中に住み着くラセン型の細菌でヒトによってはいろいろな病気の原因となります。
この菌は子供の頃にヒトに感染し、自然には除菌されること無く、その子が大人になってもずーっと感染し続けます。そして胃の粘膜に慢性の炎症(慢性胃炎)を引き起こし、胃の粘膜を荒らし続けます。この慢性胃炎が原因となって、胃潰瘍や胃ポリープ、あるいはMALTリンパ腫や胃がんなど、いろいろな病気が発生してくることが知られています。
1991年、ピロリ菌感染者は胃がん発症率が高いことが初めて報告されました。そして最近ではWHO(世界保健機関)から、胃がんの8割はピロリ菌が原因で、その除菌により胃がんの発症を30%から40%予防できると報告されました。胃がんが予防できるようになりました。2013年からは内視鏡で「胃炎」と診断された方は保険でピロリ菌の検査と除菌ができます。世界でも日本だけの画期的なことです。
3)内視鏡検診による胃がん二次予防
胃がん二次予防とは、胃がんを早期に発見し治療することです。杉並区では50歳以上の方を対象に、胃内視鏡による胃がん検診が行われております。また、多くの自治体で胃がんリスク検診が採用されています。血液検査によって胃がんになり易いかどうか、検診受診者をABCの三群に分類し、B群、C群の方に胃内視鏡検査を受けていただく方法です。
これらの取り組みで日本から胃がんを撲滅したいと切望しております。
2016年11月26日(土)『ピロリ菌と胃がん検診』
杏林大学医学部第三内科学教室(消化器内科)
特任教授 橋 信一
杏林大学 広報・企画調査室