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グローバルな視点を忘れず、さらなる学びを

 平成26年度の卒業式にあたり、学長として一言ご挨拶を申し上げます。
 実は、私は学長として卒業式に望む度に、皆さんをうらやましく思っています。私は45年前に大学を卒業しましたが、当時は大学紛争たけなわのときで、卒業式がありませんでした。区切りなく卒業したとの思いがいつまでも残っています。
 さて、卒業生の皆さん、今どのようなお気持ちでしょうか。杏林学園の大学院3研究科、4学部、医学部付属看護専門学校でともに学んだ1059名の皆さんが、今日の良き日を迎えられました。学んだ年限に長短はありますが、入学してから、卒業に至る道は決して楽しかったことばかりではないでしょう。時に悩んだり、苦しんだり、涙が出るほど辛い日々もあったことと思います。特に中国を始めとした留学生の方々は、その苦労はまさに筆舌に尽くしがたいものがあったと推察いたします。それを乗り越え、その結果が本日の卒業式となりました。私は、皆さんの努力にまず敬意を払いたいと思います。
 皆さんがこの喜びの日を迎えるに当たり、何よりあなた方を支え、応援してくださったご父母、ご家族、友人の皆様に感謝の気持ちを新たにしてください。また、諸君の勉学を積極的に支援してきた杏林学園の教員、職員の働きも決して忘れないでいただきたいと思います。

 卒業とは学校の全課程を終了したことを学校が認定し、その学籍から離れることです。これは何を意味するのでしょうか。卒業証書を得ることは、杏林大学が皆さんを卒業に値すると認定し、保証しているのです。この卒業証書を大事にしてください。もちろん卒業はすなわち修了したことを意味しますが、その言葉の中には次の段階へ発展する可能性も秘めた言葉なのです。杏林大学は卒業した、そして次に皆さんがなすべきものは何なのでしょうか。今はスタートの時点でもあります。これからのあり方をしっかりと考える時点でもあるのです。

 卒業生の大半は、次の段階として実社会へ旅立たれることになりますが、そこはどのような社会なのでしょうか。そこでは、今グローバルがキーワードの一つとなっています。皆さんの中には、日本の会社に勤めるので、グローバリズムとは関係ないと考えている方もいると思います。実はそうではありません。我が国を訪問される外国の方が一年間で1000万人を超えたのが2013年でしたが、2014年には1300万人を超えました。外国からの観光客は平均6日滞在されるので、単純に計算すると平均一日に20万人の方が日本で、旅行などをしています。これは私が今住んでいる東京都渋谷区の人口とほぼ同じです。買い物などでの消費は2014年度では、なんと1.6兆円に上ったとのことです。2020年には2000万人を目指すのが政府の方針ですので、倍近い観光客が我が国を訪れ、その経済効果も倍増するでしょう。もともと220万人の外国籍の方が日本に住んでいます。両者を合わせると240万人を超える方が常時我が国にいます。また毎日病院などを受診される外国籍の方は数万人ともいわれています。この数字をみる限り、レストラン、病院を問わず日本のどこでも、外国籍の方々と接するのが当然のこととなります。

 今日、我が国の企業の多くは、海外へ進出しています。私が関係している医療の分野でも、多くの利潤を海外であげるようになってきた製薬企業も少なくありません。海外から我が国へ観光と医療をかねて来日するmedical tourismや医療を主とするmedical travelも推し進められようとしています。
 人の行き来だけではありません。昨年から世界を騒がせたエボラ出血熱は、まさに国境を越えた広がりを見せました。約1万人の方が主として西アフリカで亡くなられました。我が国でも、アフリカから帰国した方が、たびたびエボラ出血熱を疑われ、その度にメディアが大きく報道し、国民の不安をかき立てました。鳥インフルエンザなどもそうですが、世界的な広がりを見せる感染症には、まさにグローバルな視点からの対応が不可欠です。

 本学は、文部科学省のプロジェクト“経済社会の発展を牽引するグローバル人材育成支援事業”に採択されています。それとともに様々な学習環境が整いました。皆さんの中にも英語サロン、中国語サロンで語学を磨かれた方も少なくないと思います。医学部、保健学部、総合政策学部、外国語学部、看護専門学校で学んだことを基礎に、グローバルな視点も忘れず、引き続き学びを進めてください。

 皆さんはマハトマ・ガンジーをご存知ですか。60年以上前に亡くなった方ですが、インドがイギリスから独立する運動を指揮しました。彼は“すべての人の目から、あらゆる涙を拭い去ることが私の願いである”を信念にしていました。彼は暴動ではなく「非暴力、不服従」によってインドの独立に成功し、この思想は、植民地解放運動や人権運動における平和主義的手法として、世界に大きな影響を与えました。
ガンジーはこのようにも述べました。
 “Live as if you were to die tomorrow. Learn as if you were to live forever” 明日死ぬかのように生きよ、永遠に生きるかのように学べ。このことは決して容易ではありませんが、少しでも良いのです、学びの気持ちを持ち続けてください。

 杏林学園の卒業生は3万名を超えており、ここに新しく皆さんが同窓生として加わります。三鷹、八王子の両キャンパスでともに学んだ皆さんも、新しい杏林学園の同窓生として、しっかり絆を深めていただきたいと思います。また母校と皆さんとの連携もいつまでも続くものでありましょう。
 杏林学園は平成28年度に創立50周年を迎えます。50周年に向けて八王子キャンパスから、吉祥寺駅、三鷹駅に近い井の頭キャンパスに移転することが決まり、今まさに建物が建ちつつあります。ロケーションもよく、本当に素晴らしいキャンパスとなるでしょう。杏林学園はさらに発展する大きな一歩を踏み出そうとしています。皆さんのお力を是非お貸しくださるよう、お願いいたします。卒業生の皆さん。健康に気をつけてご活躍ください。
 これで、学長の式辞といたします。

平成27年3月卒業式 学長式辞より