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北島教授が台湾の国立成功大学病院、Sunshine Queer Center等を訪問しました


 1月4日から9日にかけて台湾を訪問しました。平成28年度厚生労働科学研究「外国人に対するHIV検査と医療サービスのアクセス向上に関する研究」の活動の一環として、台湾におけるHIV対策に関する情報収集と、台湾のHIV研究者やNGOとのネットワークを構築することが主な目的でした。

 台湾の人口は日本の人口の約5分の1ですが、2014年の新規HIV感染者数は2236人と日本での報告数よりも700人ほど多く、日本よりもHIVによる疾病負荷が重い国と言えます。以前は違法薬物使用者におけるHIV感染が多かったのですが、対策が功を奏し、近年はMSM(Men who have sex with men、男性同性愛者)における感染が増えており、その対策に力が入れられています。

 今回は台北、高雄、台南を訪問しました。高雄では、国立成功大学のNai-Ying Ko教授のご紹介で、台湾Love and Hope Association(LHA)というNGOの下部組織であるSunshine Queer Center(SQC)を訪問し、中心メンバーのDanielさんからお話をお聞きしました。SQCは台湾CDC(Center for Disease Control)からの助成を得て、主にMSMを対象とした支援活動を行っています。週3日、周辺の医療機関や高雄市保健局との連携のもとHIV検査とカウンセリングを提供しており、受検者数は毎月100人位とのことでした。また、週1回近隣の病院の医師による巡回診察も行われています。その他、講演会やワークショップを開催したり、中学校や高校を訪問してHIVやMSMに関する講義をしたり、MSMに理解のあるお店をMSMフレンドリー店として認定したりと、様々な活動をしています。MSMの居場所としての役割も担っており、私が訪問したときには若い人が次々入って来て、友人と話しをしたり、麻雀をしたり、テレビゲームをしたり、本を読んだりと、それぞれ思い思いに過ごしていました。


Sunshine Queer Centerの外観
Sunshine Queer Centerの外観

Sunshine Queer Centerで、左から2番目の方がDainelさん
Sunshine Queer Centerで、左から2番目の方がDainelさん


 SQCを訪問した日の夜に開催されたLHAの忘年会(台湾の正月は1月末)に参加させてもらいました。とても賑やかで楽しい会でした。参加者はLHAのメンバー以外に、高雄市保健局長など行政関係者、台湾エイズ協会会長、医療関係者、大学の研究者、薬局のオーナーなどで、LHAが様々な関係者と連携をしながら活動していることをうかがい知ることができました。忘年会でお会いしたLHAの理事をしている方は、看護師として働いていた時に、杏林大学病院に研修に行ったことがあると仰っていました。

NGOだけではなく、高雄市保健局も性的マイノリティーのためのコミュニティーセンターを開設していました。また、隣の台南市にもSouth Rainbow Streetという名前のコミュニティーセンターがありますが、ここは台南市の助成を受けて運営をしているそうです。

 台南国立成功大学病院を訪問し、HIV検査やHIV感染者の診療についてお話を伺いました。現在約1000人のHIV感染者が、HIV専門外来ではなく、内科外来で他の患者と一緒に医療を受けているそうです。患者の約7割がMSMとのことでした。4人のケースマネージャー(HIV陽性者を担当する専門看護師)が、メンタルや服薬遵守における問題を抱えている患者のカウンセリングを担当しています。台湾人であれば、1受診当たり約600円の自己負担をするだけで治療を受けられるそうです。病院を見学させて頂いた後に、内科の医師と看護師などを対象に杏林大学の紹介、日本のHIVに関する動向、研究プロジェクト概要に関する話をする機会をいただき、意見交換をすることができました。

忘年会での記念撮影

忘年会での記念撮影

成功大学病院のケースマネージャーの方々

成功大学病院のケースマネージャーの方々

総合政策学部・大学院国際協力研究科 教授 北島 勉
2017.1.10