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RISTEX公開フォーラム「持続可能な多世代共創社会のデザイン」参加報告


平成26年4月25日(金)、丸ビルホールで開催されたRISTEX(社会技術研究開発センター)の公開フォーラム「持続可能な多世代共創社会のデザイン」に研究所の蒲生、相見、松井、多田が参加した。会場は定員200名のほぼ総てが埋まる盛況であった。参加者の内訳は不明であるが、政府・官庁関係者、大学関係者、自治体関係者、各種産業関係者、が多数を占めると推測された。本フォーラムの趣旨は、これまでのRISTEXの活動状況の紹介と、平成26年度に設定される新規研究開発領域「持続可能な多世代共創社会のデザイン」(領域名は仮称)にどのように取り組むべきかについての意見交換であった。

 はじめにJST(科学技術振興機構)理事の外村正一郎氏から開会の挨拶が行われた後、RISTEXセンター長の泉紳一郎氏から「社会との協働が生む、社会のための知の実践」と題して従来の取組と新規研究開発領域の紹介が行われた。泉氏によると、RISTEXの事業目的は、少子高齢化、環境・エネルギー、震災復興など社会における具体的な問題の解決を通じて、物質的豊かさと精神的豊かさの両面において社会の安寧に資することである。そこで、基本理念として、現場における経験的かつ実践的な知見の重視、自然科学と人文・社会科学の知見の統合とステークホルダーとの協働、個別プロジェクトの統合・普遍化と政策・制度や新たな仕組みづくりへの貢献を掲げている。そこから導かれる今後の研究開発の方向性は、これまで取り上げられてこなかった研究開発領域においてイノベーションに貢献し、最終的には成果を「社会実装」することであるとした。

 次に、千葉大学法政経学部の広井良典教授による「人口減少社会を希望に」と題する基調講演が行われた。そこでは、真の「豊かさ」とは何かという議論を中心に、ポスト成長時代の社会構想が議論された。日本は人口減少社会を迎えており、経済的な側面を中心に将来を悲観する議論が多いが、人口減少をポジティブに見る視点が必要である。人口減少社会では、若い世代のローカル志向や、時間軸から空間軸への優位の移行など、高度成長期の延長線上とは異なる流れが生じる。高齢者の増加によりコミュニティの重要性は高まり、福祉政策と都市政策の統合や、コミュニティ経済の発展が重要になる。また、日本では従来若い世代の保護が弱いことから「人生前半の社会保障」を高めることや、伝統文化の再評価、都市と農村の持続可能な相互依存の強化などが必要である、という議論がなされた。

 休憩を挟んだ後、泉氏がファシリテータを務め、7名のコメンテータが様々な取り組みを紹介するパネルディスカッションが行われた。
 東北大学名誉教授で合同会社地球村研究室の石田秀輝氏は、人と地球を考えた暮らし方の形として、物質文明を超越し、生きることを楽しむ「生命文明」を目指すことが必要と指摘した。そこで必要となるのは、利便性を追求した依存型のライフスタイルと、自給自足の制約型ライフスタイルの中間に位置する「間」のある暮らし方である。京都大学大学院経済学研究科教授の植田和弘氏は、持続可能な地域づくりとソーシャルイノベーションのために、地域資源の評価・活用が重要であるとした。千葉大学准教授でNPO法人ほのぼの研究所代表理事・所長の大武美保子氏は、ほのぼの研究所における多世代共創の試みとして、共想法(会話支援手法)を活用した認知症予防の取り組みを紹介した。認定NPO法人JKSK(女子教育奨励会)理事の大和田順子氏は、生きもの共生型農業を核とした持続可能な地域づくりに関して、渡り鳥と共生する地域づくりを事例として多様な主体の連携による取組を紹介した。株式会社まちづくりカンパニー・シープネットワーク代表取締役の西郷真理子氏は、高松市丸亀町の再開発などを例にして、人口減少社会における持続可能なまちづくりを議論した。最後に、株式会社日立製作所の丸山幸伸氏は、「きざし」という観点から、社会イノベーション事業におけるビジョンデザインを紹介した。
 
 パネルディスカッション終了後は、財政的な問題に関する質問や、コンパクトシティ概念に関する疑問の提示など、フロアの参加者を交えて活発な議論が展開された。新規研究開発領域の方向性等について得るところの多いフォーラムであった。

以上(文責・松井)