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日本学術会議政治学委員会シンポジウム 参加報告

日本学術会議政治学委員会シンポジウム
第25回中央大学学術シンポジウム
「進む少子高齢化/大都市圏郊外自治体の構造的危機」


 平成26年9月13日(土)、日本学術会議政治学委員会及び中央大学経済研究所主催の公開シンポジウム「進む少子高齢化/大都市圏郊外自治体の構造的危機」が中央大学駿河台記念館で開催され、研究所の松井が参加した。参加者の詳細は不明であるが、一般市民に加えて、東京都及び都内自治体、大学、メディア等の関係者が多く見受けられた。特に、本学COC事業の連携自治体の羽村市・並木心市長が登壇者の一人であることから、多数の羽村市関係者が参加していた。本シンポジウムの趣旨は、少子高齢化により、地方とは別の形で構造的な危機を迎えつつある大都市圏郊外自治体に焦点を当て、危機の本質とそれを乗り越える政策のあり方を徹底討論するというものであった。第Ⅰ部の講演に引き続き、第Ⅱ部としてパネルディスカッションが行われた。

シンポジウムでは、はじめに、日本学術会議政治学委員長・参議院議員の猪口邦子氏が開会挨拶を行った。初代少子化担当大臣を務めた際の経験として、少子化問題を国の中心的重要課題と位置づけた過程の困難と意義が語られた。また今後は、都市部とは異なるライフスタイルを提示することによって、若年層を地方・郊外が惹きつけていくことが重要になると指摘した。
 一人目の登壇者は慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授の曽根泰教氏で、「少子高齢化が直撃する日本の大都市—東京が危ない」と題する講演を行った。曽根氏は、「東京問題」を考える際の基本的視座として、問題が自治体行政単位で生じるわけではないことや、合併・分権には限界があることから、大東京圏という発想を持つことが重要であるとした。地方から都市への人口移動を制限することは不可能であり、大学進学や就職におけるインセンティブを変化させるほかない。東京の高齢化は深刻であるが、都心に限られた現象ではなく、郊外においても同様に深刻である。少子化の背景には晩婚化・非婚化があり、東京が突出している。しかし、その根本的な原因の究明はまだこれからであるとした。
 二人目の登壇者は中央大学経済学部教授の山﨑朗氏で、「大都市圏郊外自治体の危機と地域政策」と題する講演を行った。山﨑氏は地域政策の観点から、空間克服(モビリティ)の向上が地域の発展のために極めて重要であるとした。東京多摩地域は、自己完結した機能を持つ地方中核都市とは異なり、都心からの近さのために、ベッドタウンとしての特殊機能を担わせられてきた。しかし、少子高齢化が進む中で生き残っていくためには、広域的連携(産業クラスター)の推進などによってベッドタウンから「都市」に転換していく必要がある。都心への近さに安住することなく、三島など「超郊外都市」との競争も意識する必要がある。多摩地域は交通面で優位な位置にあるように見えて、実際には空港や新幹線へのアクセスが非常に悪いため、横田基地の活用や知識経済化が重要になるとした。
 三人目の登壇者は慶應義塾大学経済学部教授の土居丈朗氏で、「大都市圏郊外自治体の空洞化と税財政」と題する講演を行った。土居氏は、財政学の観点から少子高齢化が東京都郊外自治体に与える影響を議論した。日本の社会保障制度の特徴として、地方自治体が果たす役割が非常に大きい。地方議会で医療や介護の保険料が決定されるほか、低年金・無年金の高齢者の増加に伴い、生活保護給付も市町村にとって無視できない負担となっている。若年層の減少により、社会保険料や税収も打撃を受け、給付の財源を賄えない状況が生じつつある。近年そのような状況を受け、医療機能の分化・連携に関する取組や、介護保険サービスの見直しが進められているとした。
 第Ⅱ部ではパネリストとして上記の三名のほか並木心・羽村市長が加わり、佐々木信夫・中央大学教授をコーディネータとしてパネルディスカッションが行われた。並木市長からは、配布資料を基に、羽村市の概要と少子高齢化問題の影響が説明された。その後、各々の視点から各パネリストの講演内容が掘り下げられ、活発な意見交換が行われた。東京都郊外の自治体における少子高齢化問題への対応という点で、本シンポジウムの趣旨は本学COC事業の目的とも合致するものである。本学の事業は羽村市を含む都市郊外自治体との連携を基盤としており、その視座を広げる意味において得るところの多いシンポジウムであった。

杏林CCRC研究所
松井孝太