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防災から減災へ−首都直下地震に備える− 講演会報告

杏林大学「地(知)の拠点整備」事業
杏林大学・三鷹ネットワーク大学 共催

市民公開講演会

防災から減災へ −首都直下地震に備える−

日時:平成26年9月13日(土)午後2時〜午後3時

場所:三鷹ネットワーク大学 教室ABC

講演者:山崎登(NHK解説主幹)


 平成26年9月13日(土)三鷹ネットワーク大学にてNHK解説主幹 山崎登氏による杏林大学市民公開講演「防災から減災へ‐首都直下地震に備える‐」が開催された。研究所からは蒲生、相見、多田が出席した。講演に先立ち、杏林大学広報担当者から山崎氏のご紹介の後、山崎先生から「防災から減災へ‐首都直下地震に備える‐」と題した講演が行われた。

 山崎氏は自然災害・防災担当のNHK解説主幹で地震や火山噴火、豪雨・洪水などの災害被災地で自治体・被災者や専門家などを取材し、災害原因や今後の教訓を考えてテレビやラジオで伝えてこられた。多くの取材を通じて世の中には色々な課題(政治や教育など)があるが、その課題に社会が冷静に立ち向かっていくための最低の条件が、安心と安全ではないかと感じたとのことである。山崎氏が取材した中で阪神淡路大震災と東日本大震災が最も印象に残っているとのことである。阪神淡路大震災はマグニチュード7.3(M7.3)で死者6,434人、東日本大震災はM9.0で死者18,958人であった。地震の規模を示すマグニチュードは1.0多くなると地震のエネルギーは32倍になり、東日本大震災のM9.0は阪神淡路大震災の600から700個が同時に発生したエネルギーに相当する。M9.0クラスの地震は100年間に地球上で数回しか起きないとされ、日本周辺の状態から起きるとは誰も想定できなかった。東北には津波を防ぐ10mを超える堤防があったが、堤防は過去の経験から想定して作られ、“想定外”には対応できない。そして東日本大震災は“想定外”が起こりうることを示し、これにより社会の認識を「防災」から「減災」へと変える必要があることを示唆した。「減災」とはどんな構造物を作ろうが、予防策を講じようがそれを超える自然の力があると考えて対策をとることである。例えば想定を越えて堤防を越える津波から海辺の人々が避難できるビルを作る、津波が町に侵入しないように内側に盛土をした鉄道や道路を作り2番目の堤防とする、さらになるべく住まいは高いところに移して暮らして被害を最小限にするということである。しかし防災から減災への切り替えたとしても防災意識を高めておかないと上記の仕組みは活きない。
 現在懸念されている首都直下地震は、M7.0クラスの地震を想定しており避難者数は約300万人以上とのことである。東日本大震災の避難者数は38万人で、その中には1週間経っても水や食料が届かないところがあったことから考えると、想定避難者数約300万人に必ず物資が届くとは考えられない。災害の被害を決める要因は季節・天候、時刻、地域性によって異なるとが、誰かが何とかしてくれるものではない。また阪神淡路大震災で瓦礫の中から救助された人の約8割は家族や近隣の住民が救出していることから、地域の力が被害を減らす。
 「減災」とは、様々な人達の視点を入れて取り組むことで被害は減らす取り組みとのことである。本学COC事業においても「災害に備えるまちづくり」を具体的テーマの一つに掲げており、今後の事業の展開に際し、示唆に富む講演であった。

杏林CCRC研究所
相見祐輝


山崎登氏

山崎登氏

講演風景

講演風景