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地域と高齢者と医療 講演会報告

杏林大学「地(知)の拠点整備」事業
杏林大学・三鷹ネットワーク大学 共催

市民公開講演会

地域と高齢者と医療

日時:平成27年1月24日(土)午後2時〜午後3時30分

場所:三鷹ネットワーク大学 教室ABC

講演者:熊谷文枝(杏林大学名誉教授)

 平成27年1月24日(土)三鷹ネットワーク大学にて杏林大学公開講演会「地域と高齢者と医療」が開催された。研究所からは蒲生、相見、松井、多田が出席した。講演に先立ち、杏林大学広報担当者から杏林大学名誉教授 熊谷文枝先生のご紹介の後、熊谷先生から「地域と高齢者と医療」と題した講演が行われた。

 講演では日本の地域、高齢者、医療の関連性ついてご説明頂いた。
 日本社会は二重構造(近代性と伝統性が共存)を成していると分析できるのではないかと考えられる。東日本と西日本では文化的社会的構造が異なり、日本社会の地域性と多様性がある。日本はよく県民性と言われるが、県民性ではなく地域性を考える必要がある。同じ県であっても東西南北によって気質・生活習慣が異なることが多い。こうした違いは江戸時代の302藩に基づき、さらには五畿七道(古代日本の律令制における広域地方行政区画)にまで遡る。五畿を中心として七道を介して文化伝播は街道沿いに広がるため地理的に離れているが文化形態が似ていること、五畿七道の下の行政単位は江戸末期までの1000年以上も続いた。五畿七道は行政単位としての国のみならず日本地域の文化社会確立にも大きな影響を及ぼしたとのことである。
 高齢人口が7%以上を占めた時に高齢社会と言われる。フランスは1800年代終わりに最も早く高齢社会を迎えたが現在の高齢者人口は14%以下、アメリカは1945年ぐらいに高齢社会を迎え、現在は14%程度である。日本は1970年に高齢社会を迎え、2013年で25.1%、2060年には約40%となると考えられており、日本は高齢社会の進展が非常に早く、世界的に稀である。日本の世帯推移をみると単身世帯が増加していくことがわかり、特に高齢者の単身世帯(独居高齢者)が増加してくる。都道府県別の全世帯に対する3世代世帯の割合は山形県が21.49%ともっとも高く、鹿児島では3.18%と非常に低く、東京都は2.26%で最も低い。山形県は3世代世帯が多い以外に共働き世帯割合が一般世帯より多く、女性の就業率も高いなどの特徴がある。また鹿児島県では隠居分家と末子相続の習慣から3世代世帯が少ないという地域特性を持つ。
 単身高齢者が急激に増えており、高齢者は経済・住まい・健康と医療・社会参加の4つの問題に直面する。高齢者の健康と医療の問題では高齢者の生活自立度を評価する際、ADL(Activities of Daily Living:日常生活動作)だけでなくIADL(Instrumental ADL:手段的日常生活動作)も考慮することが必要である。東京都福祉保健基礎調査によると生活自立の高齢者は9割を超えている。そして三鷹市における生活自立高齢者の地域社会参加に関して杏林大学と地区の公民館・コミュニティーセンター・小学校などをICT活用したネットワーク構築することで健康相談や世代間交流などが可能となるのではないかとご提案頂いた。
 熊谷先生のご講演は日本の歴史と現在の我々が抱える問題の関連を、先生の豊富な国内及び国外の体験を交えながら解説いただくものであった。多彩な内容であり興味深いお話であったが、時間が限られているのが残念であった。

杏林CCRC研究所
相見祐輝

熊谷文枝先生

熊谷文枝先生

会場風景

会場風景