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パラリンピック選手とのボッチャ体験会 参加報告


 今回、COC事業の地域活動の一環として保健学部理学療法学科一場友実講師・芝原美由紀教授が主催された「パラリンピック選手とのボッチャ体験会」が10月31日(土)と11月7日(土)のそれぞれ午後1時から4時まで、三鷹キャンパス体育館で開催され、研究所からも全員が参加した。ボッチャは「白い目標球に、赤・青のそれぞれ6球ずつのボールを投げたり、転がしたり、他のボールに当てたりして、いかに近づけるか」を競う障がい者向けに考案された競技で、パラリンピックの正式種目でもある。ボッチャは高齢者でも生涯にわたり楽しむことが出来る知的なスポーツであり、芝原教授、一場講師らが高齢者スポーツとしての可能性に着目し、学生と共に八王子市を中心にその理解と普及に努めてきた。
 両日とも東京都に活動拠点を置くボッチャチーム「Noble Wingsノーブルウィングス」の皆様に参加いただいた。ノーブルウィングスは北京とロンドンの二回にパラリンピック参加経験を有し、今年度のBoccia World Openで個人戦銀メダル・団体戦金メダルを獲得された日本の第一人者廣瀬隆喜選手、北京パラリンピック参加経験を有する海沼理佐選手、国内外の様々な競技会で入賞経験を持つ藤井金太朗選手、佐藤駿選手、蛭田健一郎選手、佐藤翼選手の6選手を有し、スタッフの皆様も審判員資格を持つなど国内でも有数の強豪チームである。
第一回、第二回ともに選手の紹介に始まり、廣瀬選手のパラリンピック体験と次回大会への抱負についてのインタヴュー、競技説明、選手による模範演技、参加者と選手の対戦というプログラムで進行し、予定時間を大幅に超過し交流を楽しんだ。

体験会風景1

体験会風景1

体験会風景2

体験会風景2

 第一回には近隣市のボッチャ愛好家、三鷹市民他が参加し、また本学からは跡見裕学長、五十嵐事務局長等が参加した。第二回には三鷹市民約20名が参加し、本学からはポール・スノードン副学長他が参加した。また、二回とも保健学部理学療法学科の多数の学生が競技コートの準備設営、参加者案内受付、競技の進行と審判等、体験会の全般にボランティアとして支援にあたった。
 ボッチャを体験してみると、その競技ルールは極めて単純明快であり理解しやすいものであり、体力や持久力等で優劣が決するものではないこと、身体的な負荷が多くないことを実感できる。ただし、国際的な競技会で実績を積み重ねてこられたNoble Wingsの選手の皆様の投球は正確で力があり、実技供覧で様々な技を披露いただいた。また選手の皆様との対戦では、投球すべき場所等をご教示いただきながら進めるにもかかわらず、圧倒的な力の差を感じる結果となった。従って、実際に競技として進めるためには相当の技術・実力が必要であることも実感できる。
 体験会において選手及びスタッフの方から、来年に迫ったリオデジャネイロ・パラリンピックに対する抱負と意気込みを伺い、活躍を期待するところである。しかし、障がいを持ちながら我々と同じく生活のための仕事を行い、さらに競技を目指す選手の方々の日々の健康管理や練習環境、支援の現状を伺うと何とも歯がゆく「日本社会の成熟度」に疑問を禁じ得ない。我々杏林大学が直近に出来ることを実行することに加えて、2020年の東京パラリンピックに向けて出来る支援を着実に積み重ねていくことも必要である。

 重度の身体障がい者も参加し等しく競技でき、楽しめるスポーツとして考案されたボッチャは、体力に自信のない高齢者や疾病に伴い歩行困難等の身体的機能が衰えた者でも参加できる可能性を示唆している。「高齢社会における健康寿命の延伸」は本学の知的また人的資源を集約し取り組むのに最も適した分野であり、それ故に本学COC事業の重要なテーマとして位置付けている。研究所はCOC事業において本学の知的資源を集約し長期的な展望を確立する使命に加えて地域社会で市民と共に活動する使命も併せ持っている。従って、研究所においても健康寿命の延伸に寄与しうる今回の活動に積極的な支援を継続し、地域での普及活動に貢献できればと考える。研究所が主催した「ボッチャ連続講座」では基本的に4回の連続講座に総て参加することを条件としたため5名の市民の参加に留まった。しかしその市民は今回の「パラリンピック選手とのボッチャ体験会」にも参加され、選手との競技を楽しまれた。極めて好評を得、引き続きの活動を希望する声もあがっている。「体験会」や「連続講座」を介して得た市民との接点をより密な連携に確立することが喫緊の課題であり、その連携の接点をさらに面へと拡大していくことが次なる課題と考える。
 また、杏林大学がこの種の事業を実施する以上、本学の健康医療に関する資源を有機的に連携させることが必要である。即ち、健診体力測定に始まり、各自に応じた運動処方と指導、万一の事故に備える教育、事故対応、さらに万一の場合の機能快復等、総合的なプログラムの確立が望まれる。

 実際に連続講座を実施しまた体験会に参加し、適切な会場の設営と確保、道具の確保等の幾つかの技術的な問題にも直面した。しかし、技術的な問題はCOC事業という枠組みの中で多くは解決可能であろう。最も重要な点はCOC事業による助成終了後も活動を維持の連続性を確保すること、即ち伝統の確立ではないだろうか。体験会は主催された一場先生・芝原先生、保健学部の学生は講義や実習等の合間を割いての活動であり、そのボランティア精神に支えられている。連続講座も両先生のご助力ご尽力によって初めて行うことが出来た。この種の活動がボランティアと共助の精神、社会の成熟によることは論を待たない。COC事業終了後も継続性のある活動としていくためには、一部の教員や学生のボランティア精神に頼るのではなく、より多くの学生や教職員が参加し一端を担うことが重要である。COC事業において地域社会やボランティアに関する理解を深める教育と実践を進めている所であり、少なくともその理念を理解し共有を求めたい。即ち学内の裾野を広げ、また大学と市民との協働を実現することが必要である。今回の試みは「優れた人格を持ち人のために尽くす」建学の精神にも通じ、本学が一層の力を入れて取り組める事業の端緒と考える。また、地(知)の拠点整備事業が大学と地域の協働として求めていることである。2020年の成熟した日本社会実現に向けた第一歩でもある。

本体験会を可能にしていただいた「Noble Wing」の皆様に感謝し、今後の競技会での活躍を祈念します。本体験会の実施にご尽力された皆様、特に保健学部一場講師、芝原教授、保健学部の学生諸君に感謝します。 

杏林CCRC研究所
蒲生 忍