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リウマチ、膠原病って何? 講演会報告

杏林大学「地(知)の拠点整備」事業
杏林大学・三鷹ネットワーク大学 共催

市民公開講演会

リウマチ、膠原病って何?

日時:平成28年9月17日(土)午後1時30分〜午後3時

場所:杏林大学井の頭キャンパス

講師:要伸也(杏林大学医学部第一内科学教室 教授)


講演概要
 ”皆さんは「リウマチ、膠原病」と聞いてどんな病気を思いうかべるでしょうか?進行すると関節が変形する「関節リウマチ」は、早期診断と薬の進歩によってかなりコントロールできるようになってきました。一方、「膠原病」はリウマチを含むいくつかの病気の総称で、全身の結合組織や血管の「自己免疫病」とひとくくりにすることもできます。本講演会では、難病というイメージが強いこれらの病気について、できるだけわかりやすくお話しするつもりです。腎臓病とのかかわりについても少し触れたいと思います。”


 9月17日の午後、杏林大学井の頭キャンパスを会場に医学部第一内科学要伸也教授による公開講演会「リウマチ、膠原病って何?」が開催され、連休にかかる土曜日にも拘らず地域の住民115名の多数が参加された。要教授は東京大学医学部の出身で公立昭和病院、米国ラホーヤ癌研究財団研究所等を経て2007年杏林大学医学部第一内科(腎臓・リウマチ膠原病内科)准教授、腎・透析センター長、2014年より第一内科教授として、腎臓病、膠原病、血管炎等の教育、研究と治療を担当されている。要教授は本講演において、「膠原病」の複雑な概念とその代表的な疾患の治療法とその上手な付き合い方について詳細に解説した。
 「リウマチ」は関節の腫れや発赤を生じる状態で、関節リウマチを初めて記載したのは古代ギリシャの医聖ヒポクラテスと言われている。一方、「膠原病」は1942年に米国のクレンペラーにより提唱された疾患で、全身に分布する結合組織の「膠原線維Collagen」に変性が見られ、関節のみならず多臓器が障害される。「関節リウマチ」は必ずしも「膠原線維」に変性が見られるわけではないが、「膠原線維」を含む結合組織が障害される全身性の疾患ということで「膠原病」の一つと分類される。また「膠原病」の多くでは自分自身に対する抗体が検出される「自己免疫疾患」という特異な側面も有している。即ち「膠原病」とは「結合組織疾患」と「リウマチ性疾患」と「自己免疫疾患」の重複であるが、症例毎に必ずしも全てが当てはまるわけではなく、多様性を示す。代表的な膠原病には関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、皮膚筋炎・多発筋炎、全身性強皮症、血管炎症候群等の多様で、指定難病とされている疾患も多い。
 女性に多く発症し、遺伝的な素因と環境要因が関与するが、その発症機構は明らかでない。そのため根本治療はないが、近年ではその症状に応じて副腎皮質ステロイドや免疫抑制薬、消炎鎮痛薬等を用いた各種の治療法が開発されている。また規則正しい生活や過労を避けること、禁煙すること等の日常生活上の注意を加えることで、ほとんどの病気をコントロールし症状を改善可能とされている。
 「膠原病」は複雑な疾患であり、その症状の程度はひとりひとり異なり、根本治療がないまさに難病である。要教授の詳細な講演後、薬物の副作用や代替治療に関する質問等が相次いだ。時間の制限上全てにご回答できなかったのは申し訳ない次第であったが、来場された多数の市民の皆様が「膠原病」の治療や予後に強い関心を持つと実感できた。近年治療法が飛躍的に進歩しているとはいえ、まだまだ長期の療養を必要とする疾患である。それ故に医療者からの適切で丁寧な情報提供と患者側の理解と対応、すなわち主治医と患者のコミュニケーションと信頼関係の構築の重要性、また難病治療における大学病院のバックアップ機能充実の重要性を痛感した講演であった。

杏林CCRC研究所
蒲生忍