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宇宙飛行士の運動トレーニング -無重力とヒトの体 講演会報告

杏林大学「地(知)の拠点整備」事業
杏林大学・三鷹ネットワーク大学 共催

市民公開講演会

宇宙飛行士の運動トレーニング -無重力とヒトの体

日時:平成28年9月24日(土)午後1時30分〜午後3時

場所:杏林大学三鷹キャンパス 医学部大学院講堂

講師:山田深(杏林大学医学部リハビリテーション医学教室 准教授)


講演概要
 ”成長期のお子さんの発達促進から高齢者の寝たきり予防まで、運動は健康な体を作り、維持していくためにとても大切です。重力に逆らって体を支え、歩くことをはじめとした活動をしないと、筋肉が衰え、骨が脆くなってしまいます。無重力の環境で生活するために、宇宙飛行士は普段からの運動を欠かせません。宇宙飛行士の健康づくりの秘密を知り、運動の大切さについて学びます。”

山田深先生

山田深先生

 9月24日の午後、杏林大学三鷹キャンパス医学部大学院講堂を会場に医学部リハビリテーション医学・山田 深准教授による公開講演会「宇宙飛行士の運動トレーニング 無重力と人の体」が開催された。あいにく直前より雨に見舞われた土曜日の午後、地域の住民47名が参加された。山田准教授は慶應義塾大学医学部のご出身で、杏林大学医学部や慶應義塾大学のリハビリテーション医学教室で勤務され2012年より杏林大学講師、2016年より准教授として勤務されている。また2010年より宇宙航空研究機構JAXAの宇宙医学生物学研究室主任研究員、宇宙飛行士健康管理グループの一員として研究活動と宇宙飛行士の支援にあたられている。山田准教授は本講演において、「宇宙」の無重力という特殊な環境が人の体にどのような影響を与えるか、その影響をどのように防ぐかについて、実際に宇宙飛行士の支援の経験を、多くの貴重な動画を交えて解説した。
 有人宇宙飛行は1961年のガガーリン(旧ソ連)に始まる。この時の大気圏外の滞在は地球を一周2時間弱と言われている。その後、宇宙開発は月面着陸を行ったアポロ計画やスペースシャトル等を経て、現在は国際宇宙ステーションでの活動へと進展した。この間に、宇宙飛行士の宇宙滞在時間は増加を続け、現在は半年に及ぶ長期滞在も稀ではない。長期の宇宙滞在は精神的なストレスに加え身体機能にも多大な影響を与え、地上からの心身の健康管理支援は必須である。特に、無重力という状態では、地上での重力に対応してきた筋肉と骨が大幅に減少する。従って、山田准教授を含む医療スタッフが、宇宙飛行士の身体機能維持のための筋力トレーニングをはじめとして地上から宇宙飛行士の健康管理の支援に当たっている。また、地球への帰還後は身体機能回復のためのリハビリテーションを支援する。
 宇宙医学で蓄積された多くの叡智は、数年に及ぶ宇宙滞在が必須の火星有人探査に向けた技術開発のみならず、我々の身近な問題、寝たきり高齢者のリハビリテーションや栄養管理、また限られた資源の中での対応が求められる災害医療などにも応用が期待される。
 山田准教授は、特に宇宙飛行士の健康管理をモチーフとして運動と栄養の大切さを子どもたちに教える世界的教育プロジェクト「ミッションX」の企画運営にも参加されている。現在、本学COC事業の一端として三鷹市を中心に「ミッションX」を取り入れた「地域における健康増進プログラム」を進めている。今後の展開を期待する。

杏林CCRC研究所
蒲生忍