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ピロリ菌と胃がん検診 講演会報告

杏林大学「地(知)の拠点整備」事業
杏林大学・三鷹ネットワーク大学 共催

市民公開講演会

ピロリ菌と胃がん検診

日時:平成28年11月26日(土)午後1時30分〜午後3時

場所:三鷹キャンパス大学院講堂

講師:髙橋信一(杏林大学医学部特任教授 消化器内科)


講演概要
 ”WHO(世界保健機関)が世界で初めて、「ピロリ菌は胃がんを発症させる細菌である」と公表したのが1994年の事でした。その後、多くの研究が行われ、今では、①ピロリ菌を除菌することで胃がんの発症を予防する(一次予防)、②胃がんになりやすい人を絞り込んで胃内視鏡や胃バリウム検査を行い、胃がんを早期に発見する胃がんリスク検診(二次予防)、が全国で行われてきています。 毎年5万人の方の命を奪うにっくき「胃がん」、ピロリ菌とのかかわりやその早期発見法につき、わかりやすくご説明してまいります。”

髙橋信一先生

髙橋信一先生


 11月26日の午後、杏林大学三鷹キャンパス大学院講堂を会場に医学部消化器内科学 髙橋信一特任教授による公開講演会「ピロリ菌と胃がん検診」が開催され、地域の住民等約60名が参加された。髙橋教授は杏林大学医学部のご出身で、杏林大学医学部第三内科学教室に入局され、1993年から米国のハーバード大学への留学、その後1999年から杏林大学医学部第三内科学教室教授、2010年からは付属病院副院長を務められた。2016年からは特任教授として活躍されている。ピロリ菌感染症、胃潰瘍、胃癌、慢性肝炎肝癌の診断と治療を専門とされている。本講演ではピロリ菌感染と胃がんの関係、胃がん予防と早期発見に向けた検診について丁寧に解説された。
 厚生労働省のがん統計によると胃がんの年齢調整死亡率は近年大きく減少し、粗死亡率は一定水準、死亡数は約5万人とほぼ一定を維持している。しかし、胃がんの最重要な危険因子はピロリ菌の感染であり、団塊世代を含めた高年齢世代の感染率は高く、団塊世代が高齢化し発がんの危険率が高まる今後、胃がんによる死亡は増加すると予測されており、実際症例数は近年大きく増加している。従って、胃がん予防は喫緊の課題であり、平成25年よりピロリ菌感染による胃炎の場合、除菌が保険診療とされ胃がん予防に高い効果が期待されている。髙橋教授はピロリ菌を除菌すると胃の潰瘍が劇的に改善されること、さらに胃がんも減少することを多くの内視鏡画像を示しながら解説した。また優しく丁寧な語り口でピロリ菌の検査方法と除菌の方法を解説した。

 現在、発がんにつながるピロリ菌の感染を迅速に発見するため、胃がんリスク検診(ABC検診)が進められている。三鷹市と周辺ではこの検診を年度内に満年齢で40歳、45歳と5歳刻みで70歳に達する市民に対し低額で受診を提供している。この検査で感染が明らかな場合には内視鏡による検査へと進む。その結果、早期の胃がんの発見の実績が上がっている。嘗て、胃がんは日本人の国民病とも考えられていた。進行した胃がんの治療も大いに進歩してきたが、それに加えて、現在では危険因子であるピロリ菌の除菌と食生活改善という一次予防、さらに内視鏡検査による早期発見という二次予防が進んでいる。
 髙橋教授は予防と早期発見のためのこの検診の実現に努力され、現在も検診の普及と実践に日々活躍されている。講演後も丁寧に質疑に応じつつ、検診の重要性を力説された。超高齢社会の中で健康寿命延伸のモデルともなる事業が進められていることを心強く思い、またこの検診を多くの市民が受診されることを期待した。

杏林CCRC研究所
蒲生忍