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地域で支える認知症 講演会報告

杏林大学「地(知)の拠点整備」事業
杏林大学・三鷹ネットワーク大学 共催

市民公開講演会

地域で支える認知症

日時:平成29年7月8日(土)午後1時30分〜午後3時

場所:井の頭キャンパス F棟 309教室

講師:長谷川 浩(杏林大学医学部高齢医学教室 准教授)(高齢診療科/もの忘れセンター)


講演概要
 ”2025年には認知症が700万人、その一歩手前の軽度認知機能障害が700万人を超えると言われており、65歳以上の高齢者のうち、5人に2人が認知症か軽度認知障害になると考えられています。このため、認知症はどのような病気があるのか、どのような症状が出るのか、困ったときにどこに相談すればよいのかなどを知ることが重要です。また、われわれが行っている地域連携も含め、地域でどのように認知症に対応していけばよいのかを皆さんと一緒に考えたいと思います。”

講演風景

講演風景

長谷川浩先生

長谷川浩先生


 7月8日土曜日の午後1時30分より、杏林大学井の頭キャンパスF棟を会場に公開講演会「地域で支える認知症」が開催され、地域の住民等約150名が参加された。講師の長谷川先生は千葉大学医学部の出身で、慶應義塾大学医学部、北里研究所病院、米国Wake Forest University留学等を経て2003年に本学医学部高齢医学教室に着任され老年医学、認知症を専門にされている。2013年より准教授に昇任され、現在、高齢診療科・もの忘れセンターでの診療に活躍されている。

 長谷川先生は孫子の「彼を知り己を知れば百戦あやうからず」の言葉を引き、まず「彼を知ること」――認知症に関する最新の知識を紹介した。杏林大学が位置する三鷹市と周辺の武蔵野市等を併せた6市人口が約100万人、65歳以上の高齢者が18万人弱、さらに認知症患者の推計は2万8千人以上に上る。認知症は「慢性あるいは進行性で記憶、思考、見当識、理解、計算、学習能力、言語、判断などの多数の高次皮質機能の障害を示す症候群」であり、もの忘れだけではなく「通常の社会生活がおくれなくなった状態」である。認知機能を評価する問診、アンケートによる心理検査とMRIやCTによる画像診断により幾つかに分類される。アルツハイマー型認知症では、軽度認知機能障害Mild Cognitive Impairmentの時期から治療を始めることが議論されており診断は重要である。また脳血管性認知症やレビー小体病等を鑑別することが治療方針を決定するのに重要である。また記憶障害等の認知症の中核症状に加えて、徘徊、妄想、幻覚、不眠等の認知症にともなう行動障害と精神症状Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia(BPSD)が出現し介護者の負担となる。BPSDは不適切なコミュニケーションや環境等により起こりやすくなるとされ、介護の改善が第一選択となる。適切な介護を行うためには介護者教育と無理のない介護体制を作ることが必要であり、介護者を含めた地域連携が重要となる。杏林大学では地域の医療機関、地域包括支援センター等との情報共有を進め連携する全国的にもモデルとなる体制作りに努めている。

 認知症の進行を遅らせる治療はあるが、治癒させる治療法は確立されていない。すなわち認知症治療の決定打は未だになく、出来る限り遠ざけ早期に診断し進行を遅らせることが必要である。長谷川准教授はつづけて「己を知る」として薬物療法に加えて自ら行える認知症の予防について紹介した。認知症の増悪因子として「悪い生活習慣」「生活習慣病」「睡眠障害」等がある。残念ながら十分に実証されたといえるレベルの報告は少ないが増悪因子を減らすこと、すなわち運動や食生活の改善、健全な余暇活動に努めることが予防となると考えられる。これはまた近年紹介されている虚弱(フレイル)という概念とも通じる。身体的なフレイルと精神的なフレイルは原因や背景因子として重複する部分が多く、相互に影響し悪循環を生む関係にあると考えられる。長谷川先生は「認知症やフレイルをよく知り、自己の健康状態、予防方法、地域の情報を知れば、やみくもに怖がることはない」と結論した。

 加齢に伴い記憶が困難となり判断能力が衰える。また筋力が衰え運動や活動に不自由を感じるようになる。どのような助けが必要になるかは予測できないが、誰もが何時かは誰かの助け無しには日常の生活を維持することが困難になる。自らそれに備える事(自助)は必須であるが認知症となるとそれにも限界があり、加えて社会制度的な援助(公助)や地域等での援助(共助または互助)も必須である。認知症治療の決定打が実現されることを期待しつつ、互助共助が豊かな社会の実現も期待したい。

 今回の講演会ははじめて午前に一コマ、午後に一コマを配した。いずれも盛況で、昼食をキャンパスで済ませ二コマに継続して参加された方も多数に上ったようである。たまたま午前中に「高齢期の意思決定」の問題を取り上げ、午後には「認知症」と二つの関連し、また地域が直面し直視すべき高齢化に関連する問題を取り上げることとなった。主催者としては、このような講演会をより実り多いものにするためには、相互に事前の内容確認等を行い、問題提示を鮮明にする等の検討も加えていきたいと感じた。

 限られた時間の中、猛暑の中、多数ご参集いただき熱心にご聴講いただいた市民の方々、また講師の長谷川先生に主催者の一員として感謝します。

杏林CCRC研究所
蒲生忍

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