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知っておきたい“頭痛の基本” 講演会報告

杏林大学「地(知)の拠点整備」事業
杏林大学・三鷹ネットワーク大学 共催

市民公開講演会

知っておきたい“頭痛の基本”

日時:平成29年10月14日(土)午後1時30分〜午後3時

場所:杏林大学井の頭キャンパス E棟 104教室

講師:宮崎 泰(杏林大学医学部第一内科学教室 講師)


講演概要
”「頭痛はふだんよく経験する症状ではあるものの、脳梗塞や脳出血が心配である」というあなたに、これだけ知っていればひとまずは安心という頭痛の基本をお話しします。また、様々な頭痛に対して、どのような検査・治療が行われているかご紹介します。頭痛には、実際見逃すと怖いくも膜下出血や髄膜炎などの病気もあります。この際、どういうときに病院にかかるべきなのか、急ぐべきなのか、見分けるコツもお伝えします。”

宮崎泰先生

宮崎泰先生

講演風景

講演風景

 10月14日土曜日の午後1時30分より、杏林大学井の頭キャンパスE棟を会場に公開講演会「知っておきたい頭痛の基本」が開催され、地域の住民等約110名が参加された。講師の宮崎先生は東京大学医学部の出身で、2001年に東京大学医学部大学院修了後に本学医学部第一内科学教室に着任された。神経内科を専門にされおり、「パーキンソン病など神経変性疾患の臨床の解析とdisease-modifying therapyなど早期介入により有効な治療法および機能外科などに関する検討」を研究テーマとされている。

 頭痛とは頭部に感じる痛みであり、日常に最も多い症状であり、最も多くの人が経験する。痛みには「痛みが起きる場所」があり、「痛みを伝える神経」があり、「痛みを感じる場所」がある。最終的に痛みを感じているのは脳なのだが、脳自体には「痛みを感じる受容器」がないので、脳自体から痛みが生じているわけではない。脳の周辺の太い血管や脳を取り巻く髄膜、三叉神経から痛みが生じ、脳に伝えられて「頭」が痛くなる。宮崎講師は多くのよく準備されたスライドを呈示しつつ、頭痛が起こるメカニズムを解説された。改めて考えると頭痛とは不思議な症状である。
 頭痛を適切に言葉で説明することは難しい。特に頭痛は、手足の痛みと異なり、その原因となるキズや場所を明示することは出来ない。我々は痛みを「ズキズキ」とか「キリキリ」とか所謂オノマトペ等を用いて表現するが、それがどのようなものか、また痛みの程度もどのように伝えるのに苦労する。大正期の作家芥川龍之介は、自身の片頭痛が、片側の拍動性で閃輝暗点と呼ばれる視覚症状を伴うこと、慢性再発性の頭痛であることを的確に描写している。また、明治前期の不遇の作家樋口一葉が肩こりを伴う緊張性頭痛に悩まされたことを、昭和-平成の作家井上ひさしが戯曲の中で描写している。いずれを悩ませた頭痛も慢性再発性であり、今でも作家のみならず多くを悩ませる。
 宮崎先生は、「たかが頭痛」と等閑にして見逃すと重篤な結果に至る場合もあると警告された。例えば脳腫瘍に緊張型の頭痛を伴う場合がある。さらに、くも膜下出血等の脳血管障害は激しい頭痛を伴う。麻痺や意識障害を伴う場合は重篤な原因に付随する頭痛の場合がある。迅速で適切な治療が必須である。また、慢性硬膜下出血では物忘れ、髄膜炎では言語理解の障害等、高齢化に伴うような症状が頭痛と共に現れる場合がある。この場合、認知症とは異なり治療することで物忘れ等も完治できる。宮崎先生は、会場からの質問に対しても、適切に症状を把握し、その原因を究明することの重要性を指摘された。

 宮崎先生の講演は、頭痛という日常的な症状の背後を多くの資料を使い詳細に解説するものであった。限られた時間の中、多数ご参集いただき熱心にご聴講いただいた市民の方々、また市民の皆様の質問にも丁寧に対応いただいた宮崎先生に、主催者の一員として感謝します。

杏林CCRC研究所
蒲生忍