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第3回 高校と大学をつなぐFD/SDを開催しました


 平成28年7月4日(月)に杏林大学井の頭キャンパスで「第3回 高校と大学をつなぐFD/SD」が開催されました。テーマは「アクティブラーニングとは何か -高等学校の教育現場から - 」、 講師は専修大学附属高等学校の英語科教諭米元洋次先生です。北村一真准教授の司会で、坂本ロビン外国語学部長の挨拶から始まりました。

 米元先生のご講演では、まずご自分の自己紹介から始まり、特に高校において、キャリア教育を日頃の授業に導入していることと、ファシリテーションスキルを活用していることが述べられました。

 本題に入り、アクティブラーニングとは、学習者(生徒)を“アクティブラーナー=自立した学習者”に教育によって導くことであるという結論から、話が始まりました。一般に考えられているような授業そのものがアクティブかどうかはあまり関係がないということです。
 例えば、生徒が沈思黙考していても、脳は非常にアクティブになっている場合があります。授業自体が“お祭り”になることが、アクティブラーニングではありません。
アクティブラーニングが登場してきた背景には、ICT(インフォメーション・コミュニケーション・テクノロジー)教育環境の向上と、異文化理解の重要性があります。ここでいう異文化理解とは、グローバル化ではなく、一人ひとりの生徒の間にある異文化のことです。つまり、40人のクラスでは、40の異文化が存在するということです。
 そうした教室の場において、主体的・協働的な学びの場で、アクティブラーナー育成のための教育を行うことが、アクティブラーニングです。
 例えば、WEBサービス「Padlet」を使った情報共有もアクティブラーニングのツールの一つとなります。

 教師は、こうした学びの場において、ファシリテーターとして、学びの場の活性化を行う役割(「待ち」の姿勢)と、プロフェッショナルとして、教育コンテンツの提供や問いの仕掛け、学習者からの質問に対する臨機応変な対応などが求められます。アクティブラーニングの教育の場では、生徒が安心して失敗できることが重要です。それによって、自由な学びにつながり、行動変容が起きるからです。

坂本ロビン外国語学部長のあいさつ

坂本ロビン外国語学部長のあいさつ

司会:北村一真准教授

司会:北村一真准教授

 米元先生の授業では、KP法を用いています。KPとは、“紙芝居プレゼンテーション”のことで、一枚の紙にあらかじめ記入された項目を多数黒板に貼り付け、授業を進めます。これによって、教師にとっては講義時間の短縮と、生徒にとっては思考の整理・表現活動の場が与えられます。また、コーチングスキルすなわち“傾聴・質問・承認”を用い、一話完結型の授業を行っています。このなかでは、“振り返り”がとても重要になります。

 また、生徒に一学期の授業を始める前の最初のオリエンテーションが非常に重要な意味を持ちます。
まず、生徒が先生を知ること、次に生徒が自分自身と同級生を知ること、そして最後にそうした多様性(異文化)がクラスにあることを知ることが、その後の授業に大きな影響を与えます。
 “先生を知る”では、“I am not a teacher.” という導入から入るそうです。
 “自分自身や同級生を知る”では、コーチングのタイプ分けやコミュニケーション活動「まちをつくろう」などが使われます。
 「まちをつくろう」は、言葉で表現された町の要素をひとりひとりが順番に一つの絵に書き込み、全体として共同作業で一つの町の絵を作ります。こうすることによって、自分の考えている町と他人が考えている町の違いを理解し、自分と他者を知るきっかけとなります。
 
このようなオリエン授業がアクティブラーニングにとっては非常に大切なこととなると締めくくりました。

 

その後フロアーとの質疑応答に移りました。

 まず、最近の英語の教科書は、アクティブラーニングに向いているのかどうか、という質問が出ました。米元先生は、英語自体は中級レベルで、内容が議論しやすいようなものを扱った教科書を選んでいるそうです。できれば、オバマ大統領の広島訪問を題材に、公民の先生と共同で大統領のスピーチを教えたいと思っているそうです。

 アクティブラーナーとは、どういう人なのかという質問に対して、自分で物事のPDCA(プラン・ドゥー・チェック・アクション)を回せる人だと答えました。まず、教師がアクティブラーナーである必要があります。

 アクティブラーニングの授業に参加しようとしない子に対してはどう対処するかという質問に対しては、介入は最小限にとどめて、あとは生徒の自主性に任せるようにしているそうです。

 反転授業を多く取り入れると、生徒の時間が不足するが、どのようにしたらよいかとの質問には、全ての教科で取り入れることは時間的に無理があり、同様の問題を感じているそうです。

 最後に、同僚教師との会議や刺激の与え合い・あるいは外部でのファリシテーションスキルの研修などがアクティブラーニングの教育を行う上で大変役に立っている、すなわち、教員の学びが大切であると結び、講演を終わりました。

 その後、杏林大学井の頭キャンパスにある4つのPBL教室の紹介が写真とともに行われ、アクティブラーニングへの活用が期待されています。

                                          2016.07.09 高大接続推進室