当院の1,2次救急外来には年間およそ36,000人余り(平均約100人/日)の患者が訪れます。平成17年度の統計によると、その内9割が軽症にて帰宅し、1割弱が一般病棟に入院となり、残りが転院または救命センターに入院となっています(図1)。うち、内科受診の患者数はおよそ10,000人(平均約30人/日)に上ります(表1)。これまでこれらの内科受診患者の診療には、4内科が日替わりで当直を担当する体制(本直制度)で対応してきました。
内科本直制度の問題点
しかし、内科当直の業務は、1)初期診療、2)専門科への診察依頼、3)救急入院の手続に加え、4)病棟の入院患者への対応と多様で、しかも限られた人数で24時間の対応をするという勤務になっています。このため、休憩などで救急車の受け入れをストップする時間が必要となり、現在は午後5時から翌朝午前9時までの16時間中平均約7時間もの間救急車の受け入れをストップしている状態で、このことが当院の救急体制上の問題の1つでした。
内科救急患者の救急車の受け入れストップの主な理由として、1)準夜から深夜帯に来院する多くの患者に対して、医師は上述した多様な業務をこなさなければならないこと、2)日中の診療業務に引き続き本直に入るといった長時間連続勤務による疲労のため、診療効率が落ちることが挙げられます。
さらに3)救急患者の多くが来院する準夜帯には、現在救急外来の診察室は3室、内科系観察ベッドは6床しかなく、診察室と観察ベッドは準夜帯に入ると間もなく占拠されてしまうという問題も抱えていました。
解決策
これらの問題を解決し効率の良い救急診療を提供するために、本院では現在の内科当直制度(本直制度)を廃止し、平成18年5月8日より救急初期診療チームATT(Advanced Triage Team)を発足することにいたしました。
このATTは、最高責任者を高度救命センター長とし、救急医学科、4内科、2外科および研修医からなるチームで、1,2次救急外来を訪れる内科・外科・複数外傷患者の初期診療と専門科への振り分け(トリアージ)を行います(図2)。
すなわち、この体制により従来の内科当直業務は、ATTによる救急初期診療業務と、各専門科当直による急患コンサルトの対応および病棟入院患者の管理に分割されます。
ATTでの勤務体制は、日勤・準夜・深夜勤務の三交代とし、患者の集中する準夜帯には、研修医を含め常時10人前後の医師が勤務するよう配置します。
さらにATT稼働に先立ち、1,2次救急外来を一部改装し、診察室1室および内科系観察ベッド2床の増設とスタッフステーションの拡張を行いました。
このように業務を分割し、医師・看護師を増員して勤務をシフト制にし、十分な医療スペースを確保することで診療効率を上げ、質の高い救急初期診療の実践を目指します。
ATTの運用方針
ATT の中心的業務は以下の通りです。
1) ATTは全診療科当直と密接に連携を取りつつ、救急車受け入れストップ時間をなくす方向で努力する。そして、可能な限り多くの救急患者を受け入れ、初期診療(診断・初期治療・専門科へのトリアージ)を行う。
2) ATTは原則として入院患者の担当主科にはならず、1,2次救急外来における初期診療に当たる。
3) ATTで勤務する医師は入院患者の治療や手術には関与しないが、救急入院の過程で必要な緊急検査や処置(緊急内視鏡処置の補助、イレウス管挿入、胸腔ドレーン挿入、中心静脈ラインの確保、緊急MRI撮影等)は積極的に行う。
4) ATTでの初期診療過程で専門治療が必要と判断した場合は、専門科にトリアージを行う。その際、専門科の選定および入院適応はATTの各勤務帯の責任者が最終決定する。
おわりに
近年、救急医療の分野においては北米型ER方式の採用が注目を浴び、その導入を試みる病院が増加しております。しかし、多くの施設でその運用は芳しくないのが実情です。
新しいシステムが導入される際には、その情報伝達が組織の末端まで到達するのに時間がかかるため混乱や抵抗が生じます。
しかし、当院では準備に一年近くを費やし、学外からの専任医師の招聘を2名にとどめ、その他は「身内」でATTを構成することに成功しました。このため、患者様をトリアージする際に専門科との間で起こりうるトラブルは、最小限に食い止められると期待しています。
内科・外科・救急医学科をはじめ全診療科が協力しあって、研修医や若手医師の教育体制を充実させ、質の高い、患者様に親切な救急初期診療の確立を目指します
