1993年現在の呉屋朝幸教授(元国立がんセンター中央病院外科医長)が赴任して以来、「患者さんとともに語り合い、その心の痛みを分かち合って病気に立ち向かう。」を基本理念とし、「徹底した情報の開示」、「患者さんへの説明と同意」を実践することをモットーに、「患者さん中心の医療」の実践に力を入れてきました。現在では肺がんを中心とする呼吸器外科の診療・研究体制が充実してきました。当診療科は高度先進医療機関である杏林大学において、東京西部地区の肺がん診療の中心として、高い水準の医療を実践し地域に還元してまいりました。また、良性疾患の気胸・嚢胞性疾患、慢性膿胸、縦隔腫瘍の診療と研究も実践しています。呼吸器良性・悪性疾患、及び甲状腺疾患における研究成果と臨床経験をもとに患者中心の医療を行っています。
当科では積極的に人材の育成にも力を入れ、当医局の出身者は東京西部地区のみならず、関東を中心として活躍しています。今後、さらに臨床・教育・研究体制を充実するとともに、地域の皆様の健康と快適な生活に貢献して行きたいと考えています。
◆平成20年度診療活動報告書<PDF・226KB>
●肺がん
現在、肺がんは本国において最も死亡人口の高い疾患であり、年間およそ6.2万人(平成18年)の患者さんの命を奪う難治がんの一つです。肺がんの発がんの要因として最も関連性が高いのは喫煙です。肺がんは喫煙により男性ではおよそ4.5倍、女性ではおよそ2.5倍も罹患の危険度が増します。肺がんの初期は無症状であることが多く、通常はこの時期に発見することが重要です。手術をお受けになられた患者さんの多くが、検診または他疾患の治療中に発見されて専門の医療機関に受診されたかたです。しかしながら、日本における検診受診率は、欧米などの他の諸外国と比べて低く、このことは社会的な問題であり、その対応は急務であると考えます。また近年、日本においては喫煙習慣のない女性(非喫煙者・女性)の肺がんが増加しています。
正確な診断と適切な治療
肺がん治療は主に手術療法、化学療法、放射線療法の3つが柱になります。当科ではこれらの治療を組み合わせて行う集学的治療を積極的に取り入れています。肺がん治療開始に当たっては、病期(ステージ)の診断が重要です。治療法はステージによって異なります。病期I、Ⅱ期は手術中心の治療、Ⅲ期、Ⅳ期は抗がん剤を中心とした治療が適しています。
肺がんの手術治療(胸腔鏡下手術)
肺がんの手術療法は術後の呼吸機能に影響を及ぼします。我々は患者さんが退院後に手術前と同程度の生活ができるよう、低侵襲とされる胸腔鏡を利用した手術を多く実施し成果をあげています。胸腔鏡を利用した手術では、肋骨や筋肉を温存することも可能で、術後の創部の疼痛を極力最小限にとどめる努力をしています。
進行肺がんに対しては標準開胸による手術を実施し、気管・気管支形成術や拡大手術などを実施します。
以下に、最近発見されることの多い、病期Ⅰ期の肺腺がん症例を示します。

肺がんのコンピューター断層撮影画像;左肺上葉に胸膜陥入像を伴う結節を認めます。

同症例の肺がんの肉眼像(切除検体の割面);中心部が灰白色・黒色、その周囲が白色で、辺縁の形状がいびつな腫瘍(腺がん)です。
「患者さんとともに語り合い、その心の痛みを分かち合って病気に立ち向かう。」
「患者中心の医療」
「徹底した情報の開示」
「患者への説明と同意」
「総合的がん治療」
「地域全体で支えるがん治療」
1.患者中心の医療:常に患者の利益を念頭に置き、診療を行います。
2.徹底した情報の開示:患者の診療におけるデータを積極的に開示し、情報開示の希望があれば十分に対応します。
3.患者への説明と同意:診断や治療における方法や結果についてくまなく説明・記載・記録をし、十分な納得と同意を得ます。
4.総合的がん治療:がん治療に当たっては外科的治療のみではなく、内科的治療による診療を含めて、患者の立場に立った総合的な治療方針をたてます。
5.「地域全体で支えるがん治療」:診断・治療から緩和ケアまで、地域全体で患者を支える医療を推進します。
具体的な理念に基づいて、患者さんが充分に納得できる診療を行うことを目標とします。
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