医師の(初期)臨床研修

研修の理念

杏林大学医学部付属病院の初期臨床研修は、将来選択する専門領域にかかわらず、その土台となる以下の基本的臨床能力の修得を目標としています。

  • 医師にふさわしい責任感・倫理観を身につける。
  • 患者の立場・気持ちを深く理解し、思いやることができる。
  • 頻度の高い疾患・病態に関する適切な知識を有し、それを個々の患者に応用できる。
  • 患者の病状をよく把握し、適切な検査・治療を計画できる。
  • 患者・家族に検査・治療の説明を適切に行い、同意を得ることができる。
  • 医療スタッフとコミュニケーションをよく取り、よい人間関係を築く。
  • ルールを遵守し安全な医療を実践する。
  • 適切な基本的診察・検査・治療技能を身につける。

 

初期研修の特長

 

一次から三次まで幅広い救急研修

平成30年度からのプログラムでは、救急部門の研修は4か月間です。そのうちの2か月間(1年次に1か月、2年次に1か月)は、欧米型ERに近い形態の一次・二次救急外来で、救急総合診療科に属し、日中および時間外の主にウォークインの患者の診断と初期治療について学びます。年間救急患者数(一次・二次)約3.5万人のうち、小児および眼科・耳鼻咽喉科などの専門診療科が直接受ける患者を除く全患者を救急総合診療科が扱います。したがって、2か月の研修期間で多くの症例を経験し、まだ診断がついていない患者の診療能力を身につけることができます(この期間以外の、他科研修中にも救急総合診療科での研修が割り振られています)。なお、救急総合診療科での研修期間のうち、日勤での研修はまさに「総合診療科外来研修」と位置づけることができるので、このたびの制度改訂(令和2年度から実施)で必修になった外来研修の期間として算定します。

さらに2か月間(原則として2年目)は、高度救命救急センターでの研修です。充実した設備と熱心な指導スタッフのもとで、ハードではありますが、重症患者の全身管理を学ぶことができます。

 

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気管挿管などの手技、呼吸管理や体液管理などがマスターできる麻酔科研修

このたびの制度改定では麻酔科は必修科目になっていませんが、当院では平成15年の新しい研修制度の開始以来、2か月を必修としています。この間に、約100例の麻酔を経験し、気管挿管はほぼ確実にできるようになります。毎日ミニレクチャーも行われ、呼吸・循環・体液管理などについて基礎から最先端までの知識を身につけることができます。選択研修でさらに高度の麻酔、ペインクリニックおよび集中治療についても研修できるため、人気のある研修科目のひとつです。

麻酔科2か月と救急部門4か月の研修により、研修修了時には、どのような患者に対しても適切な初期対応ができる医師に育っていきます。豊富な患者数・手術件数が充実した研修を支えています。

 

 

地域医師会との連携による
地域医療研修/僻地医療の研修も可能

三鷹市・武蔵野市・調布市医師会の協力を得て、特定機能病院である大学病院では学べない地域医療の使命と実際を学ぶことができます。また、北海道、岩手県、東京都の三宅島、高知県、長崎県の壱岐や五島列島の病院や診療所で僻地医療の研修をすることも可能です。

 

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ハイレベルな専門診療科において
基本的診療能力を身につける

大学病院ではプライマリケアを行っていないので、初期臨床研修には不向きである、という意見があります。これは「プライマリケア」という言葉の意味の曖昧さによる誤った認識であると私たちは考えています。高度な専門医療は、しっかりした基礎の上に成り立っていますから、研修医は各専門診療科をローテートする間に、この基礎の部分(研修の理念に示した8項目)を身につけていくことができます。

また、特定機能病院であっても、特殊な疾患の患者さんばかりではなく、むしろ大部分はcommon diseaseであり、厚生労働省令の定める「経験すべき症候」(29項目)と「経験すべき疾病・病態」(26項目)を2年間で確実に経験することができます。

 

 

侵襲的な手技を
安心して繰り返し練習できる
クリニカル・シミュレーション・ラボ

平成19年4月に、病棟の一角にクリニカル・シミュレーション・ラボが開設されました。気管挿管、心肺蘇生、中心静脈カテーテル挿入、採血などの侵襲的な手技を、シミュレーション機器を用いて上達するまで繰り返し練習することができます。

 

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指導医の指導能力向上のための
「指導医養成ワークショップ」

すでに多くの病院や団体が指導医のための講習会を開催していますが、当院も平成16年秋から令和5年11月までに33回の「指導医養成ワークショップ」を行い、713名(退職者を含む)の指導医が厚生労働省医政局長の印の入った修了証を授与されています。ロールモデルとなる指導医が各科におり、研修医は優れた指導医から指導を受けることができます。

 

 

病院全体で研修医を育てる体制

卒後教育委員会(=研修管理委員会)には、医師だけでなく看護副部長、事務部長・課長、リスクマネージャー、外部委員、そして研修医代表が参加して意見交換をしています。オリエンテーションや研修途中で行われる勉強会でも看護師、リスクマネージャー、検査技師、放射線技師、薬剤師など多くの職種が協力します。また、上記の指導医ワークショップには第1回から毎回看護師や様々な職種の職員も参加して医師と同じグループで討論に加わっています。このように、病院全体で研修医を育てる体制と文化があります。

 

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患者と研修医を医療事故から守る

臨床研修の大部分は「on-the-job training」すなわち、「医師としての業務を行いながら(つまり診療をしながら)学ぶ」ことが基本です。臨床経験がまだ浅い研修医が診療に参加するわけですが、そのために患者さんの安全が脅かされることがあってはなりません。また、「研修医の安全」すなわち「研修医を医療事故の当事者にしない」ということも重要です。そのためには、

  • 研修医の業務・裁量の範囲を明確にすること
  • 研修医の能力を正しく評価し、「任せられる業務」と「指導医・上級医が側で指導・監督すべき業務」を明確にすること
  • 研修医は「報告・連絡・相談」をしっかり行い、指導医・上級医は研修医の診療内容をきちんとチェックすること

の3点が重要です。「指導医養成ワークショップ」などでは、この点を強調していますし、各科の研修プログラムには、「研修医の業務・裁量の範囲」が明示されています。さらに、個々の研修医が単独で行ってもよい医療行為を明確化するシステムを導入しています。