平成16年3月27日
 
世界で初めて拒絶反応のない皮膚移植に成功
 
 杏林大学付属病院の熱傷センタ−の島崎修次教授(高度救命救急センター長)と高見佳宏助教授(形成外科学)が、世界で初めて拒否反応を起こさせずに他人の皮膚をヤケドの患者に移植することに成功し、3月23日と24日に千葉市の幕張メッセで開かれた第3回日本再生医療学会で発表しました。
 皮膚組織は、一番外側の表皮、真ん中のコラーゲンと呼ばれるタンパク質でできている真皮などで構成されており、他人の皮膚を移植した場合、表皮の細胞が拒絶反応を起こして生着(自分の皮膚となること)せず、腐ったりはがれ落ちてしまいます。このため、全身をヤケドして治療に自分の皮膚を使えない重症の患者を助けるためには、拒絶反応を起こさせずに他人の皮膚を移植する方法の開発が急がれていました。
 本院の島崎教授と高見助教授は、本院の皮膚バンクに保存されている他人の皮膚の表皮細胞を高度食塩水で洗い落とすなどして除去した後、残った真皮の表面に培養した患者の表皮細胞をつけ、反対側に生着力を高めるために患者自身の線維芽細胞をつける新しい手法を開発しました。
 そして2002年11月と2003年11月に全身ヤケドの2人の女性患者に、新しく開発した方法で他人の皮膚を移植したところ、移植した皮膚は拒絶反応を起こすことなく完全に生着させることに成功しました。
 本院の熱傷センターでは2002年の5月、ロシアのサハリンから体表の70%を損傷したヤケドの患者を受入れ、奇跡的とも言えるほどに回復させるなどの数々の実績がありますが、今回の手法の開発はこれらの移植技術をさらに高めるものと言うことができます。
 これまで助けることはほぼ不可能といわれている全身の80%から90%をヤケドした患者の治療に極めて有効な方法として移植医療関係者から注目されており、島崎チームでは、4月に東京で開かれる日本形成外科学会や、8月に横浜で開催される国際熱傷学会でもこれらの成果を発表することにしています。