2,300人の留学生の多くにとって八道里実(2002年大学院卒)は本当の友達である。シラキュース大学キャリアサービスのキャリアコンサルタントである八道は、在学生と卒業生にキャリアデベロップメントから就職活動に関わるまでのカウンセリングをしている。
「留学生は就職活動をする際により多くの困難に出くわすことが多いです。」と教育学部でカウンセリング教育の修士号をとった八道は言う。「留学生たちは外国人というステータスを保ちつつ、違う文化に適応していかなくてはなりません。私たち、キャリアカウンセラーはそのあたりの問題を考慮しつつ、進路選択を手伝っていくべきなのです。」
日本人である八道は東京にある杏林大学で学部生をしていたときに留学生のカウンセリングをすることに興味を持った。
とても仲の良かったスリランカからの留学生が入院したときに、彼女は留学生をサポートするリソースがあまりないことに気づいた。「その友達はとてもホームシックであった上に、クラスでも遅れをとっていました。私はもっと彼女を助けてあげることができればよかったのに、という思いをいつも抱いていました。」と外国人に対する日本語教育を学んでいた八道は言う。「その友達に対して教授たちは学問の上でのサポートをすることができていたのは幸運ですが、それ以外に気持ちの面の(プロフェッショナルな人からの)サポートが欠けていました。」
学部生だったとき、八道は留学生に外国語としての日本語を教えるチューターをしていたこともある。「彼ら、彼女らと話していて、自分は(日本語を教えるより)直接ヘルピングをすることに興味があることに気づいたのです。(私が会ってきた)留学生たちは大変な時間と労力を外国での勉強と働くことに費やしています。(だからこそ、後悔しないために)彼ら、彼女らは目的意識のはっきりした進路決定をするためのサポートが必要なのです。」
八道はカウンセリングの専門知識を学ぶために渡米を決意した。「米国はとてもいろいろな文化を持った留学生が集まっています。(だから、米国を留学地に選んだ。)シラキュース大学を選んだのは自分の興味に一番沿ったカウンセリングのプログラムがあったからです。」
シラキュースでの留学経験は八道にとって良い経験であった。
「留学生でいることによって人間的に強くなり、大人になり、そして自分から行動を起こしていく姿勢を学びました。今でもとてもはっきり覚えているのは英語で自分をうまく表現できずに、とてつもなくもどかしい思いをしたことです。でも、今は世界中から集まってくる人たちとの交流を存分に楽しんでいます。文化の違い、価値観の違いに直面するのはチャレンジでもあると同時に私を成長させてくれました。」
八道は自分の(留学生としての経験)をSUの留学生と接するときにうまく使っている。
コンピューターサイエンスを専攻したインドからの留学生タルン・カタリア(大学院2003年卒)は自分の就職活動における問題点等を八道に対して打ち明けやすかったと話している。「キャリアカウンセラーに話している、というより友達と話しているようでした。」と言う。
タルンが最初に八道に会ったのは3ヶ月に渡るうまくいかない就職活動のあとの8月のことである。「500通も応募書を送ったのに1社の面接にも呼ばれずにいて、とてもいらいらしていました。中でも有るコンピュータ会社が私のコミュニケーション能力が低いと言って自分の応募を却下したときはショックでした。」
八道はそんな彼に電話で企業側にフォローアップしたり、自分の声を録音しながら電話面接の練習をすることを勧めた。「それから、面接の依頼が来るようになったのです。」と語る。
就職活動において、文化の違いのために不利になってしまうことがあることをよく知っている八道はキャリアセンターでの留学生に対するサービスの向上やプログラムの運営に力を入れてきた。
その一つがネットワーキング、インタビュー、コミュニケーションスキル、履歴書作成等のテーマを含むワークショップシリーズである。また、(キャリアディベロップメントや就職活動における)文化の違いを系統立てて調べるためにフォーカスグループも運営している。
「留学生によく、『とても高いGPAを持っているのにどうして仕事が見つからないのか?』と聞かれるのですが、(GPAが高くても仕事が見つかるわけではないアメリカでは)このような文化の違いについて説明しなければなりません。米国において仕事を探そうとする以上はこの国のやり方でやらなければならないことを理解させると同時にどのように適応していったら良いのかを教えるようにしています。例えば、ネットワーキングが仕事の探し方においては一番大事なものである、など。」
八道は留学生だけでなく、アメリカ人の在学生、卒業生に対してもカウンセリングを行っている。
「彼女はとてもキレがよく、才能を持ったカウンセラーです。ここで働きだしてから今まで、オフィスにおいて一番多くのカウンセリングの量をこなしてきました。今、社会はすごい速さでグローバルマーケットになっています。そこにおいて、私たちは文化の違う人たちとうまく働いていくことが不可欠になっています。里実のバックグラウンドは他のスタッフが他文化から来ている学生たちの経験や、物の見方を理解し、その違いをありがたく思えるようにしてくれています。」
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