医学教育振興財団では毎年20名の医学生を全国の医学部から公募、試験をして英国の大学病院での短期臨床実習に派遣しています。本学医学部6年の嶋崎君は多数の応募者の中から見事試験に合格し、この実習に参加しました。もちろん英語力は英検1級と抜群です。その貴重な体験記を掲載します。
(学長 長澤俊彦)
英国の医学部での短期実習を経験して
杏林大学医学部6年 嶋崎鉄兵

↑呼吸器内科病棟にてステントン先生と
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今回、医学教育振興財団からの派遣で、2005年3月7日から4月1日までの4週間にわたって英国のNEWCASTLE
UPON TYNE大学にて臨床実習を行う機会を頂きました。NEWCASTL大学は、地理的にはイギリス北東部でスコットランドとの境に位置しています。
実習は、1週間ごとのローテーションプログラムで、小児科、呼吸器内科、消化器外科、感染症内科の順に回りました。内容は、基本的には杏林大学で行われているBSL(臨床実習)とほぼ同様で、外来見学や手術見学、病棟実習などからなります。 病棟では、回診や一般病棟業務の他、MDT meeting(Multidisciplinary Team meeting)とよばれる合同カンファレンスを見学する機会がありました。
MDT meetingとは放射線科医、病理医、内科医、外科医・看護師等が一同に集まって、担当症例の治療方針に関して討論を行うものです。 感染症内科では、H.I.V感染症の患者が主ということで、医師、看護師だけでなく、ソーシャルワーカーやリハビリの方も交えての討論でした。討論の対象も患者の疾患だけに
とどまらず、交友関係や家族構成など社会的バックグラウンドにまで及んでいました。チーム全体で患者の情報を共有しようという姿勢がみられました。この様な包括的・全人的なアプローチは、悪性腫瘍やH.I.Vの様な根治の難しい疾患において、特に重要であると感じました。
また、地域医療実習として、開業医の先生のクリニックにお邪魔して、外来の様子を1日見学する機会も頂きました。イギリスでは、ほとんどの人がかかりつけ医を登録しています。大学病院の様な基幹病院は、Accident
and Emergencyを除けば、かかりつけ医からの紹介状無しには新患をとりません。この点は、フリーアクセス制の日本との大きな違いでした。 また、かかりつけ医のいるクリニックは医師個人の所有ではなく国の財産で、複数の医師が共同で使用している点も、日本の開業医の概念とは異なっていました。
4週間の実習で感じたことですが、治療の過程や手技に日本と英国の間で大きな差があるわけではありません。ただ1つ、違いを挙げるとすれば、病院内が多国籍であることです。例えば、僕が感染症科病棟で実習していた時の指導医は、パプアニューギニア出身、1年目・2年目の研修医はそれぞれインド系・中国系マレーシア人でした。コンサルタントの先生方も、シンガポール出身、ドイツ出身、マレーシア出身と多岐に亘っていました。 患者も様々で、英語が全く喋れないという人にもしばしば出会いました。その様な患者のために病院には通訳の方達もいます。この多様な文化・習慣・言語の交錯した場所で、不慣れなJapanglishを駆使しながら、医学的なディスカッションを行った4週間は、非常に刺激的かつ有意義な経験となりました。
最後になりましたが、今回の実習に際して、多くの方々からサポートを頂きました。今回の貴重な実習の機会を提供してくださった医学教育振興財団、推薦状を書いてくださった長澤俊彦学長、Alicja先生、本当にありがとうございました。そして、僕を含めた4人の日本人留学生のためにプログラムを作ってくださり、ご自宅まで招いて歓迎してくださったNEWCASTL大学のSnow先生、Alexander先生、心から感謝しております。
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