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社会入にも開かれた杏林大学大学院 国際協力研究科

                                   教授 斉藤 元秀

今振り返ってみると、私の人生のなかで
大学院時代は最も充実した時の一つであった。優れた環境のもとで、国際関係論やソ連外交などの研究に没頭することができた。杏林大学大学院国際協力研究科(学科長千葉洋教授)は博士前期課程と博士後期課程を有す。博士前期課程には、国際開発専攻と国際文化交流専攻が、博士後期課程には開発問題専攻がそれぞれ設けられており、現在、博士前期課程115名、博士後期課程34名の合計149名が学んでいる。うち53名が、中国、台湾、韓国などからの留学生で、国際色豊かである。トルコからの留学生もいる。

大学院は、八王子キャンパスと三鷹キャンパス双方で開講され、昼間に加え夜間や土曜日にも授業が行われており、社会人の方々が働きながら大学に通うことができるよう種々の工夫が凝らされている。一例をあげると、危機管理コース、政策形成コース、経営開発コース、経済開発コースの4つのコースからなる国際開発専攻には、政府の「教育訓練給付制度」の対象講座が設置されており、キャリア・アップを支援する態勢になっている。大学院を修了した場合には、本人が支払った額の8割に相当する額(限度額30万円)が教育訓練給付金として支給される。また、本大学院の博士前期課程では修士論文の執筆が求められているが、修士論文を執筆しなくとも、リサーチ・ぺーパーを書くことによって代替できるような仕組みを採用している。本大学院はこれまでの大学院とは異なり、社会人の再教育や生涯教育に力点を置いており、専門的な知識がない場合でも大学院で学べるようになっているのである。私は現代ロシア特論を担当しているが、社会人の院生の熱心な研究態度に頭が下がる思いである。

指導陣のなかには、三重野康・日銀元総裁(国際金融論担当)を始め、田久保忠衛教授(国際秩序特論担当)、平松茂雄教(現代中国特論担当)など、力量のある教授がひしめいており、ここで全員紹介することは到底できない。笈川博一教授は、東研究で活発な活動を展開している。熱帯医学の権威の辻守康客員教授は熱帯地域疾病特論を教え、藤井明・杏林大学外国語学部長は、東アジア文化交流特論を担当している。

杏林大学大学院国際協力研究科に、激動する現代社会の多様な二ーズに対応するため、多くの魅力ある科目が開設されているのも自慢の種である。リスクマネージメント特論、情報セキュリティ特論、政策管理特論、国際コミユニケーション特論、国際人材開発特論、比較会計特論、eコマース特論、国際経営情報特論、比較財産法特論、国際開発特論、国際協力実践論、世界経済論、国際貿易特論、国際金融特論、東アジア政治特論、現代中国文化社会特論、アジア交流史、イスラム的思考論、地域社会論、社会変容特論、国際法特論、国際商法特論、比較民事手続法、比較家族法、比較法制論演習、比較財産法演習。設置科目のリストはまだまだ続き、枚挙に暇がない。環境保健学特論、地域保健学特論、環境衛生特論、医療計画論、人類生態学特論など、医学部や保健学部を擁する杏林大学ならではの強みを活かした科目が設置されて、少人数主義の教育理念に立脚して、きめこまやかな指導が行われている。

国際文化交流専攻関係の科目としては、比較言語学特論、言語文化相関論、比較音韻学特論、日本文学特論、日本語構造論、日本語教育特論、バイリンガル教育特論、日米文化交流特論、日本語教授法論その他多数開講され、留学生が日本人の院生にまじって一生懸命研究し、成果をあげている。

大学院国際協力研究科がスタートしてか8年経過し、これまでに多くの方が大学院を巣立っていった。大学院修了者には、国際開発専攻出身の鈴木恵美さんのように米国のジョンズ・ホプキンズ大学の大学院博士課程に現在留学中の人や、国際文化交流専攻出身の杉浦千里さんのようにブルガリアのソフィア大学で日本学科に勤務している人、小橋史行氏のように防衛庁に勤めている人がおり、まさに多士済々である。椿裕己氏は、日本国際協力事業団(JAICA)の漁業プロジェクト専門家として、アフリカのチュニジアに派遣された。多仁安代さんは、博士号を取得し、学位論文を出版した。

世界政治経済の中枢米国の首都ワシントンには、杏林大学付属教育研修所がある。酒向克郎教授が常駐し、現地で指導助言にあたっており、院生の間で好評を博している。米国連邦議会図書館に日参して資料を渉猟したある院生は、日米関係の優秀な論文を提出した。ワシントンを拠点に研究や人的ネットワークづくりをすることもできる。希望すれば、学部生も同研修所を利用することができる。

なお、杏林大学大学院の情報は、ホームページ(http://www.kyorin-u.ac.jp/kokusai/)も入手可能だ。