━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■□■杏林大学医学図書館ニュース■□■ 第95号 2020.3.2 配信

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

□Contents□
■ご挨拶■ 
■図書館からのお知らせ■ 
■お勧め図書■ 
■図書館長の多話ごと(たわごと)■ 
■図書館員のひとりごと■ 
■編集後記■ 

+‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥+
■ご挨拶■
+‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥+

1年前は何かにつけて「平成最後」というふわふわした空気が漂っていたように思います。
今年の春は新型コロナウイルス一色ですね。イベントが続々と延期・中止になっています
が、メルマガはいつも通りお送りします。どうぞ最後までお楽しみください。

+‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥+
■図書館からのお知らせ■
+‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥+

・図書館ホームページのURLが変更になりました
システム更新に伴い3月2日からホームページは新しいURLにリダイレクトされます。
ブックマークをご利用の方は変更をお願いいたします。
旧)https://library.kyorin-u.ac.jp/
新)https://library.kyorin-u.ac.jp/


・[閲覧開始!]岩波書店電子ブック50冊タイトル決定
2020年購読タイトル50冊が決定し、3月1日から閲覧できるようになりました。
タイトル一覧はこちらから。

上記丸善ブックライブラリーから出版社「岩波書店」で絞り込んでご利用ください。
タイトル選定のアンケートでは42名、延べ1,126冊のリクエストを頂きました。
ご協力ありがとうございました。
タイトル詳細や利用方法のお知らせはこちらから。


・図書館システム更新に伴い一部サービスが停止します
図書館システム更新のため、2月26日(水)から3月2日(月)までMyLibraryなどオンライ
ンサービスが一部停止します。
詳細は後日図書館HPに掲載する予定です。


+‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥+
■お勧め図書■
+‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥+

『ホテルに学ぶ図書館接遇/ 加納尚樹著. -- 青弓社, 2018.』
(請求記号 013.1:H96 / 資料ID:0016451098 / 井の頭図書館所蔵)

「接遇」とは、サービス、おもてなし、マナーをその都度、最善、最適、最高の状態でゲ
ストに提供する業(わざ)である。
例えば、うまさが評判でメディアでも引っ張りだこのラ-メン屋さん。ただし店主が変わ
り者で、荒々しく注文をとる以外は殆ど無言。薄汚れたテーブルに、壁には私語厳禁やら、
注文は一回で済ませろなど張り紙も多く、行列の客(ゲスト)を流れ作業的にこなし、目
も合わせない。せっかくラーメンはうまいのに客側の満足度という点ではかなり損をして
いそう(食べログか!)。これと同じく、図書館員の無表情な貸出・返却の対応、無造作
にモノが並んだカウンター、どことなく埃っぽく、壁には私語厳禁などの命令調の張り紙・
・・・。ラーメン屋さんのケースとなんらかわらない光景である(ちなみに杏林の話では
ない)。

図書館も一昔前のように、利用者(=ゲスト)が必要としている情報や空間さえ提供して
いればそれでよしというわけではない。名コンシェルジュと呼ばれた著者は、「接遇」の
実践方法を学ぶことにより、ゲストとの良好な関係を築く力をアップさせ、よりお互いが
ハッピーになれると語っている。本書ではその実践方法について、図式や写真を駆使しな
がら、カウンターで本を提供する際の本の持ち方、目線、話すスピード、動くスピードか
ら声のトーン、さらに座席の配置などの空間管理にいたるまで事細かに解説している。タ
イトル通り一流ホテルの「接遇」がしっかり生かされている内容だ。自分がゲストだった
場合、どういうサービスを受けたら気持ちよく満足できるかを想像することが、「接遇」
を理解する一番の近道ではないかと感じた。図書館のみならず接客業全体にかかわる内容
なので、他の業界でも参考になるだろう。(よ)
☆貸出状況はこちらから☆

+‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥+
■図書館長の多話ごと(たわごと)■ 美しい言葉、好きな言葉
+‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥+

この3月末をもって杏林大学を定年退職いたします。したがって、図書館長も退任となり
ます。これまで数回にわたって「多話ごと」と称して駄文を寄稿してきました。多くは「言
葉いちゃもんシリーズ」で、今どきの言葉の使い方に対して文句を言うということが多か
ったのですが、最後ですので「美しい言葉、好きな言葉」について書きたいと思います。

1)しのだ
これはきつねうどんのことです。主に大阪の言い方でしょうね。私の育った神戸ではあま
り使いません。文楽や歌舞伎の物語「蘆屋道満大内鑑(あしやどうまんおおうちかがみ)」
は、白狐が化身した葛の葉姫が、困ったところを助けてくれた安倍保名(あべのやすな)
との間に子どもをもうけますが、ふとしたことから正体が明らかになり、子どもを置いて
森へ帰ってしまうという物語です。「鶴の恩返し」にも似ていますね。その葛の葉姫ゆかり
の神社が大阪府和泉市にある信太森(しのだのもり)神社です。落語にもこの話(天神山)
があり、私は桂枝雀のCDを持っていますが、なかなかいい人情噺(狐情噺?)です。若
い人はともかく、ある程度以上の年齢の大阪人なら、「しのだ」と聞けば必ず狐を連想する
わけであります。
甘辛く煮たあげが乗せてあるうどんですから、「あげうどん」でいいものを「きつねうどん」
という。さらにそれを「しのだ」と言い換える。なかなか品がある言葉とは思いませんか?

2)よう言わんわ
「よう〜ん」は古語の「え〜ず」と同じ、つまり「〜できない」という意味ですね。「よう
言わんわ」は「(あなたの発言に対して)何も言うことができない」ということです。この
セリフは発言者によって随分ニュアンスが変わってきます。京都の舞妓さんなんかが姉さ
ん(先輩の芸妓)にからかわれた時に「いやんもー、よー言わんわ」とかいうのは、「恥ず
かしくて何も言えない」という意味で、ちょいと色気もありますが、これが大阪あたりの
御婦人が井戸端会議で、「へえ、あの奥さん、そんなことしたはんの。いやー、よう言わん」
となると、「あきれてものが言えない」ということになります。
「美しい言葉」とはちょっと違うかもしれませんが、その場の情景が目に浮かぶような表
現です。

3)こぬか雨、しぐれ、狐の嫁入り
これは言うまでもなく雨を表す言葉の仲間です。日本語にはこういう言葉がたくさんあり
ます。「こぬか雨」は、春先に降る、ぬかのように細かい雨です。行友李風作の戯曲「月形
半平太」(土佐藩士、武市瑞山がモデルといわれています)で、半平太が言う「春雨じゃ、
濡れて参ろう」の雨はこれだと思われます。昔の子どもはこういう台詞を大人から聞いて
知っており、雨が降ってきたのに傘がないと、こう言って濡れて歩いたものです。
「しぐれ(時雨)」は、秋の終わりから冬の初めにかけて、突然空がかげったかと思うとハ
ラハラと降りだし、短時間でサッとあがり、また降り出すといった雨のことをいう、と辞
書にあります。「今はとてわが身時雨にふりぬれば言の葉さへに移ろひにけり」(小野小町)。
「狐の嫁入り」は解説不要ですね。陽が差しているのに雨が降る、きっと狐のいたずらだ
ろう、というような意味だと思いますが、「嫁入り」には悲しい伝説があるという説もある
ようです。英語で「土砂降り」を意味する「raining cats and dogs」を少し連想させます。

4)千秋楽
語源には諸説あるようですが、相撲や歌舞伎など複数日にわたって行う興業の最終日を言
う言葉です。
私の子供の頃は、今のように色々なスポーツの中継をテレビでやっていたという時代では
なかったので、野球、相撲、プロレスが子供から大人まで人気がありました(相撲をスポ
ーツと言うかどうかは別にして)。地面に丸(土俵)を描いてよく相撲を取ったものです。
一日の取り組みの最後、つまり結びの一番では、行司の木村庄之助が、両力士の名前を呼
んだあとに、「この一番にて、本日のうちーどーめー」と言いますが、最終日には「この一
番にて、せんしゅうらくー」と言うのです。当時は大鵬・柏戸が横綱の、いわゆる柏鵬時
代。千秋楽に優勝をかけて両横綱が対戦(実際にはそんなに何度もありませんでしたが)、
などというのをワクワクしながらテレビで視ていたのです。

5)田毎の月
長野県更級郡姨捨(おばすて)山のふもとの、小さな棚田の一つ一つに映る月、と辞書に
ありますが、一度に複数の田に月が映ることはあり得ません。畦道を歩いて行くと、それ
につれてこちらの田、そちらの田と、次々に月が映っていくという絵柄ですね。日本人は
お日様だけでなく、お月様とも親しいお友達のようです。
高校の頃に住んでいた町の、駅から家までの間に「田毎」という名前のお好み焼き屋があ
りました。その頃は読み方も意味もわかりませんでしたし、その店でお好み焼きを食べた
こともありませんでしたが、今思うとなかなか詩情のある名前だったんだと思います。

他にも色々ありますが、長くなりますのでこれくらいでおきましょう。これまでお付き合
い下さってありがとうございました。また機会があれば書かせていただきます。(赤木)

+‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥+
■図書館員のひとりごと■ 武蔵野珈琲店のマスターとロイヤルミルクティー
+‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥+

私はひとりでお茶をする時間を大切にしている。
自分にとってその時間がとても重要で欠かせないものだと気付かせてくれたのは、武蔵野
珈琲店で過ごした時間と、マスターが入れてくれたロイヤルミルクティーのおかげだ。

武蔵野珈琲店は吉祥寺にある小さな喫茶店で、もう40年近く年中無休で営業している。
初めて店に入ったときのことはあまり憶えていない。
当時私は今とは別の仕事をしていて、ハードワークがたたりひどく疲れていた。
日々残業して家に帰る前、通勤で利用していた吉祥寺でちょっと休憩して帰りたい、そう
思ったのが最初だったような気がする。

同じく吉祥寺に店がある、カレルチャペック紅茶店オーナーの山田詩子さんの著書にあっ
たが、人は疲れているとき薄くて甘いミルクティをおいしく感じる傾向があるらしい。
私は根っからの紅茶好きというわけでは全くないけれど、数ある店の中で武蔵野珈琲店の
ロイヤルミルクティーが当時の私にぴったり合い、心身を労わってくれたのだった。

この武蔵野珈琲店のマスターがなかなかクセ者で、極端な物言いで誠に恐縮だが「お客様
は神様です」、とは全く思っていないことは間違いない。入店しても「いらっしゃいませ
」、とただクールにひと言あるだけだ。

頻繁に通ううち、ある日それまで見たことのない、小花柄の可愛らしいティーカップでお
茶が出されたことがあった。しばらくしげしげと眺めていたところ、カウンターの中のマ
スターからぼそっと、「それ、うちで一番高いカップ」。聞けばわざわざ海外まで行って買
い付けてきた、値の張るものだったらしい。そんな器で出してくださるようになって、こ
ちらも客として認めてもらえたような気持ちになり、嬉しかったのを憶えている。

その後も通い詰めて何年経ったか、私は勤めていた会社を辞め、吉祥寺を訪れる回数が減
り自然と店への足も遠のいてしまった。しかし今では生活の中ですっかりひとりお茶の習
慣が定着し、日々心身をリフレッシュしてエネルギーチャージするための大切な時間とな
っている。珈琲店と看板をあげながら紅茶にも全く手を抜かず、お茶時間の豊かさを教え
てくれた武蔵野珈琲店とマスターに心から感謝したい。(い)

ホームページ「吉祥寺武蔵野珈琲店」

+‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥+
■編集後記■
+‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥+

いかがでしたでしょうか。家の中でじっくり読んでいただきたいボリュームとなった今号。
図書館員としては「サービスとは」を考える機会がよくありますので、おすすめ図書もひ
とりごとも読み流せない内容でした。そして図書館長の人気エッセイは、日本語の情緒に
敏感でいたいと感じさせられました。館長の退任は寂しいですが、いちゃもんシリーズの
復活を楽しみに待ちたいと思います。(笹)

○サポートライブラリアンメルマガ バックナンバーはこちらから


◆◇◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━―…‥・・

杏林大学医学図書館
〒181-8611 東京都三鷹市新川6-20-2
TEL:0422-47-5511 ex.3322,3323 FAX:0422-40-7281
MAIL:medlib[at]ks.kyorin-u.ac.jp
HP:https://library.kyorin-u.ac.jp/

・・‥…―━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆◇◆