杏林大学 総合政策学部

令和の時代を迎えた今、日本は「キャッシュレス元年」ともいわれている。通勤や通学での交通系ICカードの利用はもちろん、スマホだけで改札を通過するのも今や当たり前。日常生活のいたるところで電子マネーによる「キャッシュレス」が身近となった。なぜ、キャッシュレスが広まったのか、これから、どうなっていくのだろうか?

現金払いに比べて、圧倒的に便利なのがキャッシュレスだ。消費者の利便性が増すということは、消費活動が刺激され、経済の活性化につながっていく。消費税増税のタイミングと合わせて、キャッシュレスでの支払いでポイントが還元されるサービスが相次いだことにも注目したい。海外からの観光客にとっても、キャッシュレス決済は両替の手間を省けるメリットがある。キャッシュレス化の進展は、日本の経済成長の「鍵」を握っている。 

企業は、キャッシュレス決済によって得た正確な「消費履歴」のデータを分析することで、消費者の好みを把握し、より良い商品やサービスを生み出すことが可能になる。また、「その商品が欲しい」と思う人にピンポイントで広告が届くようになるだろう。キャッシュレス化は、新しいマーケティングの手法でもあるのだ。 

日本のキャッシュレス比率が20%台なのに対し、韓国は90%以上、中国は60%以上。海外との比較で分かるのは、日本がまだまだキャッシュレス後進国だという事実である。キャッシュレス先進国は、政府が率先して政策に取り組んでおり、例えば英国は、2012年のロンドンオリンピックを機に国を挙げてキャッシュレス化を推進。韓国も政府主導でさまざまな特典を与えるなど、いわゆる「官民一体」での動きが見られた。日本の将来を考えるうえでも、海外の事例は参考になるはずだ。

キャッシュレスは、未来の経済の姿であり、新しい経営スタイルを生み出そうとしている。それは、日本に留まらず世界的な動きでもある。経済×経営×国際という3つの分野をクロスオーバーさせて、「キャッシュレス」について考えてみよう。 

「働き方改革」は、日本で重要なトピックだ。残業・長時間労働の改善、女性も男性も働きやすい環境づくり、仕事と子育ての両立、高齢者の雇用延長など、働き方をめぐって、さまざまな取り組みが行われている。政府や企業でも積極的な改革が進められているが、なぜ今、働き方が注目されているのだろうか?

現代の企業は、長時間の残業規制や有給休暇の促進など、「働き方改革」に取り組まなければ、より良い人材の確保が難しくなっている。加えて、限られた人員のなかで利益を生み出し、業績を上げなければ企業は存続できない。仕事の効率アップが求められるなか、AIやITの活用で生産性を向上させる試みは、働き方に密接に関係する話題といえる。

働き方を変えるためには、法律の改正も必要だ。そこで労働基準法が、働き方改革のもと70年ぶりに改正されることになった。法改正により、時間外労働の上限設定や、有給休暇の取得義務化が促進されると共に、非正規雇用者への待遇改善など、幅広い変化をもたらしている。

働き方に注目が集まった背景の一つに、「人口減少社会」がある。少子化が進めば、日本の労働力人口も減っていく。2060年には約4,000万人となり、現在と比べて42%減少することが予測されている。こうした状況のなか、子育て世代の女性が活躍できる場を生み出すこと、高齢者でも働きやすい環境をつくることは、働き方改革の重要な柱の一つである。

新しい働き方を提供できるのは企業であり、その動きを加速させるために法律が存在している。そして、女性や高齢者の活用も働き方改革の一つだ。経営×法律×福祉という3つの分野をクロスオーバーさせて、「働き方」について考えてみよう。

アルバイト店員などによるSNSへの不適切な投稿が後を絶たない。いわゆる「バイトテロ」と呼ばれる行為は、実は損害賠償請求や業務妨害罪といった罪に問われる可能性があり、「悪ふざけ」で済ませられる問題ではない。なぜ、こうしたバイトテロが起きるのだろうか?バイトテロを防ぐ方法はあるのだろうか?

バイトテロは「悪ふざけ」ではなく、犯罪になる可能性もある。例えば、衛生上問題のある行為によって食中毒などが起きれば、傷害罪が適用される。また、顧客情報などを流出させた場合、アルバイトを雇用する店側への損害賠償請求も考えられるなど、「悪ふざけ」の枠を超えた大きな問題である。

飲食店などを経営する企業は、従業員への教育などを含め、バイトテロのリスク管理と再発防止策を行い始めている。一方、こうしたバイトテロが発生するケースは、正社員が不在で、アルバイトだけで店舗を管理するような、いわゆる「ワンオペ」の環境下で生じやすく、社員不足の問題も関係しているといえる。

バイトテロを防ぐには、罰則の強化などと同時に、義務教育レベルで「メディアリテラシー」と呼ばれる情報の扱い方を教えるのも有効だ。また、バイトテロの背景に労働条件が関わっているとすれば、最低賃金の引き上げや、雇用形態に左右されない公正な待遇の確保、すなわち「同一労働同一賃金」といった取り組みが必要となるだろう。これは、政治が果たすべき役割でもある。

SNSは便利な一方、使い方を間違えれば、取り返しがつかない問題を引き起こすきっかけにもなる。そのことを理解したうえで、法的な問題は何か、なぜ起こるのか、打てる対策は何かを考える必要がある。法律×経営×政治という3つの分野をクロスオーバーさせて、「SNS」について考えてみよう。

さまざまな物事をテーマに取り上げ、自分の思考を深めることができるのが、クロスオーバーの魅力だ。
CASE1〜3で挙げたテーマ以外にも応用ができる。
例えば「自動車運転」なら、自動運転や自動配送の実現によってもたらされる物流業界への好影響は大きいものの、自動運転時に事故が起きた場合など、どう法整備を進めていくのか、という経済と法律の観点から考察できる。
他にも「災害・防災」「環境問題」など、さまざまな物事をテーマに取り上げ、思考を深めることができる。
着眼点と思考力を身につけ、あなただから見える未来を発見しよう。