CRV (Catch the Real Voice) システムを活用して

杏林大学外国語学部 教授 熊谷文枝

私は、この十年来講義・講演ではパワーポイント・プレゼンソフトを使用している。また、教室でインターネットにリンクできるようになってからは、インターネットにも接続している。私が担当する授業科目は、世界各国の社会問題、国際ニュース、国際地域研究分野であるために、“リアル”な状況を講義に盛り込むことが求められている。情報社会の恩典をフルに活用することで、音声・画像・地図情報などを提示し、教育的効果が高まることは言うまでもない。また、講義を学生参加型にすることも可能である。

その私の教育に対する夢を現実のものとしたのが、今学期から「アメリカ社会論」の講義で活用させていただいているCRVシステムである。CRVを実際の講義に活用し、そのシステム・プログラムの偉大さにただただ驚嘆している。それは、私のような「高齢者」にも充分に利用できるシステムである。多くの教員が、担当授業に利用されて、杏林大の講義の質的向上を図られることを切望する。

正直に言うと、CRVを利用するにあたって多くの不安があったことは否めない。まず、マニュアルを自分一人で読んでいたのでは、不安感を募らせるばかりである。そこで、学部の精鋭「オタク」教員の一人にアプローチし、使用方法をご伝授いただいた。彼は親切にも私に代わりCRV利用申請をし、私担当の授業でCRVシステムを利用できる環境整備および、講義の初期設定を完了してくださった。(しかし、これらのことも一度要領を飲み込めば簡単至極なことである。要は、教員側の教育姿勢の問題に関わってくる。)

私が、CRVシステムを毎週の授業で利用しているのは、「出欠管理」、「クイズ」および、「アンケート」機能である。

・「出欠管理」:出席集計時刻を予め設定しておくことにより、講義の出席、遅刻、欠席の判別登録ができる。出席登録には、毎講義ごとに異なるパスワード入力が必要である。リアルタイムで、登録学生ごとに出欠が記録・表示されるので、私自身が出欠票を整理する時間は全く不要となった。

・「クイズ」:毎回の講義説明終了後、クイズ(小テスト)を課している。講義準備として、T/F選択形式の問題を5問作成しておく。講義では、英文問題を私が読み上げ、学生が回答を選択し、送信する。CRVの威力は、5問のクイズ終了後の“Answer”セッションで遺憾なく発揮される。集計・平均値のグラフ表示、各学生の得点および、平均点などが瞬時に表記される。さらに、その週のクイズ参加学生の“トップ・テン”も表示することができる。つまり、選択形式の「クイズ」結果の管理は、全てCRVシステムが代行するので、私の「アメリカ社会論」講義後の時間的コスト削減は無限となった。(^_~)

・「アンケート」:毎回授業終了直前に、「英文アーティクルを事前に読んだか否か」、「講義は理解できたか否か」を問う。さらに、時々「授業に対する全般的なコメント」を文章で入力してもらう。「アンケート」機能の回答は、個人名が表記されないので、学生の声はまま正直なものである。CRV導入の講義に対する学生の反応は、大方良好である。たとえば、最初は予習をしてこない学生が多く見受けられた。しかし、その結果を示すことによって、学生の学習意欲を促進する効果がある。その結果、講義を聞く前にアーティクルを読んだ学生のパーセントも徐々に上がり、また講義の理解度も高くなっている。

CRVシステムの効力は、受講学生が多い講義課目で特に顕著です。受講学生が少ない講義課目でも、CRVシステムを有効に活用することは可能です。また学生の反応も良好です。授業開始前に、前の席に着席する学生も多く見受けられます。さらに、遅刻学生も減少しました。私語は皆無といえます。「ダメ学生」を生むのは「ダメ先生」と言うのが私の持論です。それはことばを反せば、「良い学生は、教員の教育に対する熱意から生まれる」と言うことになります。多くの教員が、CRVシステムを講義に活用し、大学の講義向上を目指されることを切望いたします。