CRV (Catch the Real Voice) システムを利用して

杏林大学保健学部 教授 岸 邦和 

パワーポイントを使うようになってから,講義の内容は精選され筋書きも整理されてきたが,学生にとっては流れが速すぎて授業時間内に理解できないことが多くなってきたように思う。教員は上手に講義ができたと思っているのだが,テストをしてみると伝えたいことが伝わっていない。私は保健学部の1年生に遺伝をおしえているが,高校での科目選択の幅が広がった結果として学生の基礎学力は多様となり学習意欲も様々である。CRVシステムを使ってみて,学生の理解度を細かくチェックすることが授業を充実させること改めて認識し,次のような点で授業の改善につながる期待をもった。

前の授業で話した基本的な事項を,CRVシステムを使ってテストすることは,次の授業で学生の集中力を高めるためにとても役立つこと。解答用紙や挙手によるテストに比べてCRVシステムは迅速に確実に集計できる。正解と誤答率がすぐに把握できるので学生にとって知識を確認するために有効であるし,教員もより適切な論評をすることができる。?前の授業で十分に説明できなかったことをテストの設問として,教科書を読ませてから回答させると,学生が自習する助けになること。携帯電話の操作が適度な間となって学生に考える時間を与えることにもつながるように思う。?アンケートをとりながら授業を進めると学生の考え方の分布が把握でき,より深い説明ができること。学生も仲間がどのように答えたかを知ることができるので印象深いと話していた。

設問のしかたによっては,携帯電話を操作するのに時間がかかって授業が遅滞することもあるが,いろいろ工夫することによって教育効果を上げることができるだろうとこれからも楽しみにしている。今年行った工夫の一例としては,CRVシステムとパワーポイントを「Alt+Tab」で簡単に切り替えられるので,アンケートの結果を直接にパワーポイントのグラフ上に書き込んで描画のデモンストレーションをしてみた。学生からは,アンケートの結果にはもちろんのこと描画の技法にも興味をひかれたとのコメントをもらった。

何事もはじめる時には気が重い。特にIT関係は,マニュアル通りに操作しているのに目的を達せられなかった経験が新たな試みに対する高い壁になっている。そんなわけでCRVも使ってみたいと思いながらはじめの1年は躊躇してしまった。今年,チャレンジするに当たって事前の登録の仕方に不安があったが,説明会で配布されたマニュアル通りに進むと何のことはないすぐにできた。わからないことは総合情報センターに伺ったら,ていねいにサポートしてくれた。また,学期の途中でCRVシステムを使いたくなって相談したら快く応じてもらえた。

これからも教員と情報センターがそれぞれの工夫を共有しながら,CRVシステムの活用方法を拡大してゆけたらと思う。