大学ホーム医学部医学部研究成果黄斑円孔に合併した網膜前増殖は進行した黄斑円孔に見られ、術後は網膜の機能修復を補助する

黄斑円孔に合併した網膜前増殖は進行した黄斑円孔に見られ、術後は網膜の機能修復を補助する

高橋 洋如(眼科学教室助教)
井上 真 (眼科学教室教授)
平形 明人(眼科学教室教授)

研究のハイライト
  • 黄斑円孔に合併した網膜前増殖について、多数の症例で調査した。
  • 網膜前増殖は視細胞の障害が強い患者や近視が強い患者に多い。
  • 網膜前増殖は黄斑円孔内部とつながっている。
  • 手術後に黄斑円孔の中に残った網膜前増殖は網膜視細胞の回復を補助している可能性がある。

概要

人間の眼の内部には網膜という神経組織が視覚情報の受容器官として存在しています。網膜の中心の部分を黄斑といい、物を見る視界の中心に対応しています。この黄斑部網膜に円形の欠損(円孔)ができる病気が黄斑円孔であり、急な視力の低下や、視界の歪み・欠損の原因となります。眼球内部を占める硝子体というコラーゲンに富んだ組織が液化変性して、黄斑部網膜を引っ張ることが円孔の病因となり、加齢と共に発症が増加するとされています。黄斑円孔は一部の患者さんを除いては自然に治りません。眼科で手術顕微鏡を用いた硝子体手術を行い、網膜表面上の膜を除去して、円孔を閉鎖させる必要があります。その表面上の膜を除去する際に、膜の上に増殖する組織があることはこれまで知られていましたが、観察例が少なく性状などが明確になっていませんでした。
黄斑円孔の手術前の検査には、網膜の断面像を得ることのできる光干渉断層計(optical coherence tomography;以下OCT)が有用です(下図)。20世紀末に開発されたこの器械は今世紀になって解像度が飛躍的に進歩しました。 黄斑円孔の周辺の網膜の表面上をOCTにより詳細に観察すると、正常な網膜上にはない増殖組織があることがわかります(下図矢頭。以下この部分を網膜前増殖と呼びます)。この網膜前増殖の黄斑円孔との合併率と様々な臨床的特徴に注目して、4年間で約400人の黄斑円孔を調査しました。
調査した結果、網膜前増殖は約8%の黄斑円孔に合併し、黄斑円孔内部の網膜の裂け目(黄斑裂開)とつながっていることが多いことがわかりました。私たちは、このような黄斑裂開につながった網膜前増殖が、病期が進行していて網膜の視細胞の障害が強い患者や近視が強い患者に多いことを明らかにしました。さらに網膜前増殖を含む網膜表面上にあった組織は、手術後に閉鎖された円孔内にしばしば残ることがあり、この残された網膜前増殖が手術前に障害されていた視細胞の回復を補助している可能性が示されました。
これらの研究結果は黄斑円孔手術における、網膜の修復機構の解明や、より良い手術方法の開発につながる可能性があります。今後は、他の網膜疾患における同様の病態の有無や、治療における長期的な評価が必要です。

図1
(上)光干渉断層計による正常網膜の断層像。高い解像度により網膜(約0.2~0.3ミリ)の層構造が可視化される(白矢印)。
(下)黄斑円孔の網膜断層像。白矢頭の部位に、正常網膜上には見られない組織増殖がある。

掲載論文
発表雑誌:Retina
論文タイトル:MACULAR DEHISCENCE-ASSOCIATED EPIRETINAL PROLIFERATION IN EYES WITH FULL-THICKNESS MACULAR HOLE
筆 者:Takahashi H, Inoue M, Itoh Y, Koto T, Hirota K, Kita Y, Hirakata A
(高橋洋如、井上真、伊東裕二、厚東隆志、廣田和成、北善幸、平形明人)
DOI: 10.1097/IAE.0000000000002366

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2018年12月27日

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