大学ホーム医学研究科医学研究科について学修要綱履修モデル・主要科目の特長内科系専攻 小児科学分野

主要科目の特長:内科系専攻 小児科学分野

小児科学分野の授業科目

科目名 単位
小児科学 講義・演習4
小児科学 実験・実習8
小児科学 課題研究8
小児科学 研究論文演習4

大学院教育の特長

小児科学教室
教授 楊 國昌

1.博士課程の目標

検査法や画像解析装置の目覚ましい進歩により、多くの病気の診断能力には顕著な向上がみられます。しかし一方では、このような日常的かつ受動的な診断情報の入手は、平面的思考の医師の増産の原因にもなっています。病気の病態の解明の進歩や新しい治療法の確立には、ダイナミックかつ立体的な思考が必要です。小児科学の特徴は、対応すべき疾患部位が全身の臓器であることに加えて、暦年齢として生後0日から約20歳まで、体重として500gから50kgまでと、大きく異なる生理的背景を対象にしていることです。発達途上にある小児では、例え成人と同じ病名でも、臓器障害の機序、薬剤に対する感受性、回復能などが成人と大きく異なりますが、その理由は分かっていません。当博士課程の目標は、小児の難治性の病気の病態解明と新しい治療戦略において、発達途上にある生体内の臓器間クロストークという広い視野からアプローチできる、高い科学的素養をもつ医師(研究者)を育成することです。

2.履修の概要と特徴

当大学および他大学の医学部および6年制の歯学部、獣医学部、薬学部の卒業生を対象としています。4年間の履修期間で、分子生物学の基本、タンパク質科学の基本、研究対象分子の生理的機能、そしてその異常による臓器機能の破綻のメカニズムを解明することを目標にしています。

現在ヒトでは2万個以上の遺伝子が同定されていますが、その詳細なタンパク機能が解明されている分子は、実はそれほど多くはありません。当課程の研究の方向性は、一般的な戦略、すなわち既に判明している疾患責任遺伝子の分子機能を研究する、というものとは全く異なっています。当研究室では、様々な理由で研究対象の候補になった、タンパク機能が全く未解明である分子について、まずは、その遺伝子のクローニング(図の遺伝子A)、in vivo および in vitroでのタンパク発現、特異抗体の作製、タンパク機能相互作用分子の同定を行います。この過程で得られる結果から当該分子の生体でのタンパク機能を推測し、平行して遺伝子改変動物の作製と解析を行います。最終的に、当該分子Aが、どのような病気の原因・病態あるいは薬剤感受性に関わるかを改めて探索することにしています(図参照)。このような研究スタイルを実践する理由は、この研究の過程により、全く未知のことに対する疑問の想起と、その解決の繰り返しを、思い込みのない状態から経験することで、立体的かつ横断的な思考を習得することができるからです。

実験は、本学臨床研究棟に位置する小児科学研究室内に装備されている遺伝子シーケンサーや分子生物学、タンパク質化学、動物実験に必要な設備を用いて行います。さらに、基礎および臨床研究棟内の共同研究部門に装備されている質量解析装置、次世代型シーケンサー、電子顕微鏡、共焦点レーザー顕微鏡を使用して行います。

また、このような規模の研究には多彩な実験手法と知識が必要ですので、下記の学内および学外の研究グループとの共同研究により、研究の質の向上、結果の正確性、迅速性、効率性を図っています。

(共同研究グループ:学内;薬理学教室、解剖学教室、検査医学教室、学外;京都大学医学部基礎検査展開学分野、京都大学薬学部システム創薬科学、東京大学応用動物科学、東京大学人類遺伝学教室、Matrix Biology, Karolinska Institute)

遺伝子Aの分子機能解析の戦略(楊 國昌:小児腎臓病学研究の方法論.小児腎臓病学会編:小児腎臓病学, p85-89, 診断と治療社, 東京, 2012 を改変)

3.研究の内容

現在の研究テーマは、殆ど全ての臓器機能の維持、障害の原因に関わる可能性のある新規分子群について、機能の解明を行うことです。タンパク質のユビキチン化をコントロールする分子(USP40)、遺伝子発現を制御する環境因子(エピジェネティクス)として機能する分子(NSD3)については、ノックアウトマウスを樹立し、多くの臓器発生や機能維持に関わるこれらの生物学的役割の解明を行っています。さらに、当教室の研究グループは、糖質ステロイドにより誘導される新規分子(GLCCI1)は、未だ明らかでない糖質ステロイド作用の下流に根幹的に関わる分子であることを明らかにしました。この GLCCI1 とその相互作用分子の変異や一塩基多型が、糖質ステロイドの感受性に関わることを仮説として、現在共同研究施設(日本大学医学部小児科、成育医療センター腎膠原病科、東京女子医科大学腎臓小児科、東京都立小児医療センター腎臓内科、松戸市立病院小児科、埼玉小児医療センター腎臓科)から多くのネフローゼの患者さんの血液をご提供頂いて解析を急いでいます。さらに、この分子の機能を足場として、副作用の少ない糖質ステロイド代替薬の創薬化研究を、京都大学薬学部との共同研究で行っています。

4.業績

  1. Yan K, Ito N, Nakajo A, Kurayama R, Fukuhara D, Nishibori Y, Kudo A, Akimoto Y, Takenaka H: The struggle for energy in podocytes leads to nephrotic syndrome. Cell Cycle 11:1504-1511, 2012.
  2. Hara M, Yamagata K, Tomino Y, Saito A, Hirayama Y, Ogasawara S, Kurosawa H, Sekine S, Yan K: Urinary podocalyxin is an early marker for podocyte injury in patients with diabetes: establishment of a highly sensitive ELISA to detect urinary podocalyxin. Diabetologia 55:2913-2919, 2012.
  3. Ito N, Nishibori Y, Ito Y, Takagi H, Akimoto Y, Kudo A, Asanuma K, Sai Y, Miyamoto KI, Takenaka H, Yan K: mTORC1 activation triggers the unfolded protein response in podocytes and leads to nephrotic syndrome. Lab Invest 91:1584-1595, 2011.
  4. Kurayama R, Ito N, Nishibori Y, Fukuhara D, Akimoto Y, Higashihara E, Ishigaki Y, Sai Y, Miyamoto K, Endou H, Kanai Y, Yan K: Role of amino acid transporter LAT2 in the activation of mTORC1 pathway and the pathogenesis of crescentic glomerulonephritis. Lab Invest 81:992-1006, 2011.
  5. Sekine Y, Nishibori Y, Akimoto Y, Kudo A, Ito N, Fukuhara D, Kurayama R, Higashihara E, Babu E, Kanai Y, Asanuma K, Nagata M, Majumdor Å, Tryggvason K, Yan K: Amino acid transporter LAT3 is required for podocyte development and function. J Am Soc Nephrol 20:1586-1596, 2009.
  6. Shimizu M, Khoshnoodi J, Akimoto Y, Kawakami H, Hirano H, Higashihara E, Hosoyamada M, Sekine Y, Kurayama R, Kurayama H, Jyo K, Hirabayashi J, Kasai K, Tryggvason K, Ito N, Yan K: Expression of galectin-1, as a new component of slit diaphragm, is altered in minimal change nephrotic syndrome. Lab Invest 89:178-195, 2009.
  7. Fukuhara D, Kanai Y, Chairoungdua A, Babu E, Bessho F, Kawano T, Akimoto Y, Endou H, Yan K: Protein Characterization of Na+-Independent System L Amino Acid Transporter 3 in Mice: A potential role in supply of branched-chain amino acids under nutrient starvation. Am J Pathol 170:888-898, 2007.
  8. Nakajo A, Khoshnoodi J, Takenaka H, Hagiwara E, Watanabe T, Kawakami H, Bessho F, Takahashi S, Swiatecka-Urban A, Tryggvason K, Yan K: Mizoribine corrects defective nephrin biogenesis by restoring intracellular energy balance. J Am Soc Nephrol 18: 2554-2564, 2007.

    (2013年 8月)

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