大学ホーム医学研究科医学研究科について学修要綱履修モデル・主要科目の特長内科系専攻 内科学分野(呼吸器内科学コース)

主要科目の特長:内科系専攻 内科学分野(呼吸器内科学コース)

内科学分野(呼吸器内科学コース)の授業科目

科目名 単位
呼吸器内科学 講義・演習4
呼吸器内科学 実験・実習8
内科学(呼吸器内科学) 課題研究8
内科学(呼吸器内科学) 研究論文演習4

科目の特長

内科学教室(呼吸器内科)
講師 和田 裕雄、教授 滝澤 始

I.大学院で何を学ぶか

本来、博士号 Doctor of philosophy (Ph D) の取得は、独立して様々な困難に立ち向かえる資質を示す資格です。医学においては、一人で問題に直面した時の対処法として、以下の方法が考えられます。

  • (1)エビデンスを求めて文献を検索・渉猟をする
  • (2)疫学的アプローチにより、自分で答えを探す
  • (3)基礎医学的アプローチで方法論から解決策まで包括的に取り組む

われわれ、杏林大学大学院医学研究科内科系専攻 内科学分野(呼吸器内科コース)の博士課程での目標は、上記の方法を習得し、一人で問題に立ち向かえる資質を身に着けることで、われわれは、以上の目的達成に必要な学びの場と研究の場を、様々な職種、様々な立場の人、様々な事情の方に、状況に応じて提供出来ると考えています。

II.学びの場と研究の場

1.肺がん医療の臨床と研究

近年、肺癌の進展に関して、EGF 受容体、K-Ras、ALK、VEGF 等の遺伝子に変異が生じていることが判ってきました。治療を選択する時も、これらの分子に対する分子標的治療、さらには抗腫瘍薬と遺伝子多型などの遺伝情報に基づき治療選択を行うなどのテイラーメード医療を念頭に治療を考えることが主流となりつつあります。

患者さん一人一人の希望を聞き、治療の経過を細やかに観察することにより、アドヒアランス adherence さらにはコンコーダンス concordance の良好な医療提供を行う時代となってきました。我々は、当該患者さん、そして、未来の患者さんの治療に役立つ知見の集積するよう心がけています(J Clin Oncol 2010; 29: e191-2. Oncologist 2013, in press.)。

また、当科では、以下のように様々な臨床研究に参加しています。臨床研究は、患者さんを集団として考える機会となり、さらに新しい治療を学び、知見を集積できます。

当科で施行(中)の肺癌臨床試験
治療レジュメに関するもの分子標的・遺伝子診断に関わるものQOL に関わるもの
TCOG 0701 (CATS TRIAL)
TORG0604
TORG1018
WJOG 7512L
ALCT01
ALCT03
ALCT04
BBPL study
LCEN1001
LCEN1301
TORG0911
SCRUM study
ALKAS
JNUQ-LC study
ONO-7643
ALKAS
ALCT02

2.びまん性肺疾患と薬剤性肺傷害

当科では、新潟大学や Cincinnati 大学との共同研究で、肺胞たんぱく症の解析を行っています(Chest 2009; 136: 1348-1355, Eur Respir J 2011, in press)。昨今は医学諸分野に分子標的治療が導入されています。また、新しい薬剤も登場しています。最近、こういう薬剤による薬剤性肺傷害が注目されています。薬剤性肺傷害は原因が判っているびまん性肺疾患を来すと考えられ、この知見を集積(Oncologist 2013, in press)することは、原因不明のびまん性肺疾患を考察する上でも重要であると考えています。

3.地域医療と健康関連生活の質 HR-QOL

昨年、改訂された厚生労働省の「健康日本21」に、「発症予防と重症化予防に取り組む非感染性疾患」に慢性閉塞性肺疾患 COPD が加えられました。COPD は、重喫煙者が発症する病気で、喫煙で発症・進展を予防できると考えられることから呼吸器領域の「生活習慣病」と考えられています。COPD が進展すると、慢性呼吸不全の状態に至りますが、当科では、こうした慢性呼吸不全患者を対象に、医師・看護師・理学療法士らが多職種共同で在宅酸素療法 (HOT) 外来を開設しています。患者さんの医学的利益と HR-QOL の共存に焦点を当てて外来を行っています。外来で、呼吸リハビリテーションを行ったり、社会リソースの検討を行ったり、それぞれの患者さんに適した酸素機器の選定とその改善を試みたりと、呼吸器系疾患管理の HR-QOL についての知見が集積する場となっています。

また、地域医家とともに「多摩気管支喘息 QOL 研究会」や「北多摩南部吸入療法研究会」を主宰し、気管支喘息の地域医療のレベルの向上と維持を図っています。東京多摩地区の気管支喘息医療の状況を明らかにし、発表・啓発してきました(日胸臨 2008; 67: 860-873, Allergology Int 2011; 60: 473-481)。

HOT外来チームで日常臨床の問題解決と新たな知見の勉強のため学会出席。背景は松本城。
「患者の会」とのミーティング。
看護師が外来で診察。
多職種合同の HOT 外来でのミーティング。

4.環境曝露からみた気管支喘息の発症と増悪(基礎医学研究)

疾患発症メカニズムを「環境要因」と「遺伝要因」とから考察すると、呼吸器疾患の「環境要因」には、喫煙PM2.5 などで話題の公害、病原微生物による感染、さらには、嚥下などが考えられます。呼吸器疾患の最大の特徴は、「環境要因」が比較的はっきりしていることで、基礎研究と臨床研究との translational research を容易にすると考えられます。そこで、われわれは、呼気凝集液や採血サンプルなどの臨床サンプルの解析と同時にモデル動物と培養細胞実験系の確立し、細胞内シグナル伝達エピジェネティックスの観点から解析しています。

これまでは、ヒトサンプルの解析を採血サンプルで行ってきましたが(Am J Respir Crit Care Med 2005;171:1465. Pathophysiology 2006; 13: 29-33. Biomarkers 2012. J Am Geriatric Soc 2007; 55: 1141-1142)、あらたに呼気凝縮液 exhaled breath condensate (EBC) を用いた気道炎症の評価を試みています。また、学内諸科、英国や近隣大学との共同で喫煙曝露動物モデルも確立し、解析を行っています(FASEB J 2009; 23: 2310-2319, Transl Res 2011; 158: 30-37. J Pharmacol Exp Ther 2013, in press)。

 
呼気は37℃、湿度100%と考えられ、呼気を冷やした金属の筒を通すことにより、水滴として呼気が採取される。

5.呼吸器感染症グループ

呼吸器感染症も「環境要因(=病原微生物)」への曝露と捉え、臨床的な炎症の病態(Biomarkers 2011; 16: 530-535. J Hosp Infect 2011; 79: 267-268, J Infect Chemother 2012; 18: 160-168)、動物モデルの確立と解析を行っています(FEMS Immunol Med Microbiol 2011; 62: 182-189, Inflammation 2013, in press)。さらに、当科は、臨床検査部と共同で新種の抗酸菌を発見し、大学名に因んで Mycobacterium kyorinense と名付け、発表、本菌についての研究を世界に発信しています (Ann Intern Med 2009; 150: 568-570、Int J Syst Evol Microbiol 2009; 59: 1336-1341, Emerg Infec Dis 2013)。

<A>
<B>
肺炎マイコプラズマの菌体を吸入させると、吸入させない<A>に比べ、<B>は多くの炎症細胞が肺へ遊走していることが判る。肺炎マイコプラズマの肺炎モデル動物の確立を試みた実験より(FEMS Immunol Med Microbiol 2011 より改変)。

III.大学院生の1週間

当科では、様々な立場の大学院生に対応するべく、基本的には個別指導を行っていますが、全員参加の以下のミーティングも行っています。

1. Progress Report

木曜日午後に大学院生全員が、それぞれの毎週の成果の発表と討議を行います(詳細略)。

2. Journal Club

大学院生を主体として、火曜日夕方に論文紹介 journal club を行っています。目的として、

  1. 最近読んだ文献で皆に内容を知らせたい文献
  2. 英語文献を読む訓練となる文献
  3. 直接的に自ら、あるいは、仲間の研究に関連する文献
を読んで紹介しています。新しい研究の際は、日本発の古い文献を紹介することもあります。

最近の文献紹介例
日時紹介者文献
7/2KNNakamura Y et al., Cigarette smoke extract induces thymic stromal lymphopoietin expression, leading to Th2-type immune responses and airway inflammation. J Allergy Clin Immunol 2008; 122: 1208-14
7/9MSLeuppi JD et al., Short-term vs conventional glucocorticoid therapy in acute exacerbations of chronic obstructive pulmonary disease. the REDUCE randomized clinical trial. JAMA 309; 2013: 2223-31
7/30TITakishima T et al., Direct-writing recorder of the dose-response curves of the airway to methacholine. Chest 1981; 80: 601-606
8/6MNShen N et al., Anti-interleukin-17 antibodies attenuate airway inflammation in tobacco-smoke-exposed mice. Inhalat Toxicol 2011; 23: 212-218
8/20KHNewcomb DC et al., IL-17A inhibits airway reactivity induced by respiratory syncytial virus infection during allergic airway inflammation. Thorax 2013; 68: 717-723
8/27KNNoti M et al., Lymphopoietin-elicited basophil responses promote eosinophilic esophagitis. Nat Med 2013; 19: 1005-1013.

IV.まとめと具体例

以上の通り、当科が提供する学びの場と研究の場は、基礎医学・臨床医学・社会医学と多岐にわたり、また、基礎研究、治療、ケア、疫学と手法も多岐にわたっています。このため、医者と医学研究者だけでなく、広く生物学の研究者、看護師・理学療法士・検査技師等、医療従事者の皆さんにも学びの場と研究の場を提供できると信じています。

最後に、これまでの大学院生の具体的な例を挙げます。積極的に複数の研究テーマについて学び、研究し、業績として形を残しています

大学院生の研究テーマ(具体例)
 具体的内容具体例1. S.M.生具体例2. S.H.生
1年目臨床症例についての研究・考察緑膿菌の耐性獲得危険因子の同定の研究。American Thoracic Society 2009 で発表。その後、Journal of Hospital Infection 誌 (2011) に掲載。英国リバプール大学熱帯医学研究所で研究。成果は Tropical Medicine & International Health 誌 (2007) と Journal of Tropical Medicine 誌 (2009) に発表。
2年目基礎医学研究
3年目マウスの喫煙モデルの研究。BMB 2010 で発表、その後 Translational Research 誌 (2011) に掲載。本論文で博士号取得。マウスの感染症モデルの確立と解析。ERS 2009 で発表、FEMS Immunology & Medical Microbiology 誌 (2011) に発表。本論文で博士号取得。
4年目

(2013年 8月)

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