大学ホーム医学研究科医学研究科について学修要綱履修モデル・主要科目の特長社会医学系専攻 社会医療情報学分野

主要科目の特長:社会医学系専攻 社会医療情報学分野

社会医療情報学分野の授業科目

科目名 単位
社会医療情報学 講義・演習4
社会医療情報学 実験・実習8
社会医療情報学 課題研究8
社会医療情報学 研究論文演習4

科目の特長(苅田グループ)

衛生学公衆衛生学教室
苅田グループ: 准教授 苅田 香苗、 講師 吉田 正雄

人の健康には、本人の身体の状態や生活環境の事情が大きくかかわり、人が環境に対して適応し、その恒常性を維持することにより「健康」が成立していきます(図1)。「衛生」には生命や生活の「生」を「衛(まも=守)る」という意味がこめられており、社会医療情報学分野では、人々の疾病を予防し、心身の健康を維持・増進することを目的として、さまざまな専門を背景にした研究者たちが相互に学び合いながら研究活動をすすめています。


図1. ヒトの健康にかかわる諸因子

当分野で取り組んでいる研究課題は、疫学調査、フィールド研究、ラボ・実験研究などその手法や研究デザインは色々ですが、いずれの課題も、健康にかかわる自然、社会、環境要因を明らかにするためのエビデンスを築くことを目指しています。

以下に例として、最近苅田グループで取り組む2つの課題のアウトラインと結果を紹介します。

1.女性の健康と生活習慣・ライフスタイルに関する研究

(1) 女子大学生の食生活および気分状態と味覚感度との関連

女子大学生127名を対象に、どのような食生活や気分状態が味覚感度に影響を及ぼすのかを調べるため、各味覚識別閾値の判定検査と食生活習慣・食事摂取頻度調査 および 気分・感情状態について調べることができる Profile of Mood States (POMS) 質問票を用いて評価を行いました。その結果、塩味と苦味に対する識別閾値は飲酒習慣のある者で高く、また味覚低下傾向は POMS の疲労得点が高く敵意得点が低い場合にみられることがわかりました。さらに、酸味の識別閾値が低下傾向にある集団では、鉄と亜鉛の摂取不足も疑われることが多変量解析により示唆されました。

(2) 健康な中高年女性の特性と長寿関連ミトコンドリア遺伝子多型との関連

40~60歳代の人間ドック受診女性321名を対象に調査を行い、診断結果で検査異常値が認められず所見が何もなかった群(健康維持群; n=76)とそれ以外の群(有所見群; n=245)に分け、健康維持群にかかわる要因を調べるとともに、対象者のうち同意の得られた92名に対し長寿関連ミトコンドリア DNA 5178A/C 多型解析を行いました。その結果、閉経前で肥満傾向にない中高年女性で健康を維持している割合が高く、遺伝子解析の結果では、長寿者に多いとされる Mt5178A 型は 43.5%で、健康維持群と有所見群の割合は多型のAとC型で異なり、特に Mt5178C 型の女性では肥満傾向にあるかまたは閉経後に健康維持率が減少することが示されました。

このような疾病予防につながる実証的データを各年齢層で蓄え、健康維持にかかわる有用な指針を今後提示していく予定です。

1.眼疾患と生活習慣にかかわる疫学研究

(1) 老人性白内障に関する大規模追跡調査

日本人約7万5千人の方々を5年間追跡し、調査開始時の身長と体重から肥満度(BMI:体重(kg) ÷[身長(m)2])を算出し、BMI とその後5年間の老人性白内障の発症との関係を解析した結果、BMI が最も低いやせている群と最も高い太っている群では、男女ともに、発症リスクが高くなるU字型の傾向が認められました(図2)。欧米では肥満により老人性白内障の発症率が上昇することが確認されている一方、栄養状態が不良な地域においては低栄養ややせにより老人性白内障の発症率が上昇するとの報告もあります。今回、我々が行った追跡研究の結果、健康的なライフスタイルを維持し、肥満ややせを回避することが、老人性白内障の発症率を低下させる可能性があることが、日本人においても改めて確認されました。


図2. BMIと老人性白内障の発症との関連

(2) 緑内障・眼圧・近視等の有病率とそのリスク要因

緑内障による失明を未然に防ぐためのリスク要因を検討するため、日本人約6万人の自覚症状のない方々を対象に調査したところ、加齢により緑内障有病率が顕著に増大すること、強度近視眼においては正視眼や弱度近視眼に比べ、緑内障有病率が高いことが明らかになりました。

また、眼圧とさまざまな生活習慣や栄養摂取等との関連を調べるため、人間ドック受診者約1,000名の方々を約5年間追跡したところ、血圧や BMI の上昇は眼圧の上昇と関係することがわかりました。

このように疫学研究とは、「集団の観察をもとに疾病の分布や規定要因を明らかにする研究」であり、我々はさらに、日本人約60万人を約5年間追跡した調査データを基に、近視の進行を解明するための研究にも現在取り組んでいます。

当分野では、自立した研究者として必要とされる研究デザイン設定、実施、データ解析および論文作成の基礎的能力を身につけるとともに、地域や現場で総合的な問題解決を実践するための知識・技術を習得していきます。人々の生命と健康にかかわる公衆衛生上の課題に対して、単なる研究だけではなく、広い視野で問題解決のための実際的な活動を実施することも当分野での特長となっています。

(2013年 8月)

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