オリンピック・パラリンピック特集未来への継承

  

東京オリンピック・パラリンピックでは、大会ビジョンとして3つの基本コンセプトを掲げています。
そのひとつが「そして、未来につなげよう(未来への継承)」です。大会が終わったあとも、さまざまなレガシー(遺産)を残していこうというものです。
大会での経験や蓄積を今後に生かしていこうという取り組みを紹介します。

高齢者も楽しめるスポーツに

保健学部理学療法学科 一場 友実

 障がい者競技として生まれたボッチャは、欧州で考案された脳性まひなど重度四肢麻痺者が参加できる競技で、パラリンピック種目です。
 互いに持つ赤・青のカラーボールを目標球の白いボールの近くに投げられた方が勝つというシンプルなルールですが、戦略や駆け引きも必要です。
 この競技を高齢者の健康増進に役立てようと、普及活動をしているのが理学療法学科の一場友実准教授です。 「ボッチャは体力のない人や高齢者が行うスポーツにも適しています。立位バランスが悪かったり、歩行が困難でも座って実施が可能です。またボールを取りにいったり、戦況確認のために自然に体を動かします。さらに、呼吸の仕方も意識すればよりよいです」と呼吸ケア指導士でもある一場准教授は話します。

ボッチャで元気になるシニアも


 三鷹市には、市公認の「ボッチャの輪作ろう会」があります。高齢者約30 名が、毎月競技を楽しんだり、普及のために体験会を実施したりしています。
 そのなかの一人に、大きな病気をして運動の機会が減ったが、体験会でボッチャの魅力にはまり、気持ちに張りが生まれ、元気になった方がいます。「何よりボッチャが運動をはじめるきっかけとなれば」と一場准教授は話します。

活動で得たデータを研究に活かす

 一場准教授は、高齢者への普及活動で、運動機能に関するデータを集め、「高齢者の健康維持と増進」に役立てる研究もすすめています。「今までの経験からボッチャは身体活動・知的活動、さらに心理・社会活動面へのアプローチも可能と思っています。今後の更なる普及のためには、ボッチャによる健康増進、知的活動への効果を立証していくことが必要と考えます」と話しています。

いちば ともみ:吉備国際大学卒業。首都大学東京大学院人間健康科学研究科修了。日本DMAT隊員、健康科学アドバイザー、呼吸ケア指導士、日本ボッチャ協会クラス分け委員、認定訪問療法士、認定理学療法士(呼吸)、日本障がい者スポーツ協会中級障がい者スポーツ指導員

若者に広まれ、ボランティアの心


外国語学部 野口 洋平

 東京都は、年々増加する外国人旅行者の受け入れ環境を整備する取り組みの一環として、東京の魅力や観光地を紹介する中高生ボランティアの育成事業「おもてなし親善大使育成塾」を2014 年から実施しています。
 私は、この育成塾で5 年前から講師をしています。担当するのは、外国人旅行者誘致に向けた取り組みや、観光情報の発信、誰もが安心して観光できる環境整備の取り組みといった東京都の観光施策と、交通アクセスを含めた代表的な観光スポットの基礎知識です。受講者たちは、座学と実地からなる2日間の研修を受け、“おもてなし親善大使”に任命されます。これまで1000人近い中高生の大使が誕生しています。
 彼らは、浅草での観光ボランティア体験のほか、海外からの参加も多い「東京マラソンフレンドシップラン2019 」で、ランナーたちへフェイスペイントを施すなど、おもてなしと交流を体験しています。目前に迫ったTOKYO2020では、これまでの学びや経験を生かしていってくれるはずです。

気づきが視野を広げる


 「自分が暮らす街に、誰かに見せたい場所、紹介したいお店がありますか?」。育成塾では、身近なものごとへの気づきや関心を大切にしています。それが観光ボランティアとして視野を広げることにつながるからです。また、おもてなしには、相手とのコミュニケーションが深く関係します。旅行の際、ガイドブックにはない、地元の人が勧めてくれた場所やお店等が良い経験や思い出になることがあります。東京の歴史や文化、魅力について学び、自分の言葉で表わすことに挑戦して欲しいと思います。
 そして、ボランティアはいつでも誰でもできます。最初から「実際に助けられるか、役に立てるか、言葉が通じるか」を心配する必要はありません。目の前に困っている人がいたら、まずは声をかけ、相手の状況を知ろうとすることが大切です。「ボランティアは相手のためである前に自分のためだ」と考え、まずは行動を起こしてください。そして、大会後、若い人たちがそれぞれの人生の中で今回の経験を活かし、自分自身の成長や変化について語り継いでいってくれることを期待します。

のぐち ようへい:立教大学卒業、立教大学大学院修了。専門はホスピタリティ・マネジメント、旅行業の経営およびマーケティング。東京都の「おもてなし親善大使」育成塾のほか、通訳ガイド育成事業、地域通訳案内士認定研修、東京シティガイド検定などに関わる