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講演概要:「なぜがんは再発するのか 乳がん治療の最前線」

2013年9月7日開催:杏林大学公開講演会


杏林大学医学部 教授
井本 滋(専門:腫瘍外科学、腫瘍免疫学)




    ○講演概要

     女性の悪性腫瘍の第一位は乳がんです。年間6万人以上の方が乳がんと診断され、1万人以上の方が亡くなっています。主な死因は再発による病状の悪化です。乳がんの一部は早い段階から骨髄中や血液中にがん細胞が存在する全身病です。再発予防のために、腫瘍の性質に応じた薬物療法が行われています。なぜがんは生まれてくるのか、なぜ再発するのか、それを防ぐ手だてはどこまで進歩しているのか、難解で専門的な内容ですが、最新の研究結果を一緒に考える機会にしたいと思います。
     乳がんはマンモグラムやエコーで診断されますが、広がり診断としてMRIが有用です。多くの乳がんが乳管の中に広がっていますので、乳房温存療法は乳房の切除に加えて乳房への放射線治療が必要です。但し、数%の方はがんが広がっていませんので、そのような方を対象にラジオ波焼灼治療の臨床試験を進めています。がんは遺伝子の病気です。乳がんはホルモン感受性、HER2遺伝子の増幅、Ki67の発現などにより内分泌療法、抗HER2療法、化学療法など適切に組み合わせて行っています。
     さてがんはなぜ再発するのでしょうか?乳がんの場合、5年、10年して再発される方もいます。それは腫瘍休眠状態と言ってがん細胞が静かに骨髄やどこかの臓器に潜んでいる状態です。ところが、がん細胞の潜む環境や宿主(患者)の何らかの状態の変化ががん細胞を休眠状態から活動状態に変えると考えられます。一方、がんが目に見える形になるまでに10年掛かると考えられています。その間、がんを殺す免疫細胞の監視を掻い潜り、逆に免疫細胞を操って自らの生存と増殖を計るようになっていきます。ですから、がん患者の血液の免疫細胞を人工的に増やしても中々がんは治らないのです。そこで、がん細胞が増殖する環境に応じた新しい分子標的治療や免疫細胞を強化する治療法が開発されています。
     最後に覚えておいていただきたいことは、1)乳がん検診は重要です。2年に1度は受けて下さい。2)がんの個性に応じた治療を行っています。但し、早期がんでも進行がんでもすでに全身病の方がいます。3)がんになったら拒否せず受け入れて下さい。なぜなら、元はあなた自身の一部であったのですから。4)再発後はがんが進行しないように治療します。大切な時間を有意義に使って下さい。
     以上、乳がんを通してがんへの正しい理解を深めていただければ幸いです。



    2013年9月7日 杏林大学公開講演会
    『なぜがんは再発するのか 乳がん治療の最前線』 医学部教授 井本 滋

    杏林大学 広報・企画調査室




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