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どこまで治せる?あたらしい脱毛症治療(講演概要)

2016年11月12日(土)開催:杏林大学公開講演会

 医学部 教授 大山 学
(専門:脱毛症、自己免疫性疾患、再生医学)



    ○講演概要

     脱毛症は生命にかかわることはまずない病気ですが、患者さんの外観を大きく左右し、社会生活、精神状態に大きな影響を与えます。たんに「毛が薄くなる」という見方でみれば脱毛症はひとくくりの病気と考えられるかも知れませんが実はいろいろな疾患から成り立っています。原因としては毛をつくり出す器官である毛包が何らかの原因で壊されてしまうもの、毛周期と呼ばれる毛の生えかわりに異常をきたすものなどがあります。前者の代表が円形脱毛症で後者の代表がいわゆる男性型脱毛症です。

     円形脱毛症は、毛包の根元に対する炎症が生じ毛が抜けます。この炎症のおこる原因は自己免疫=自分の身体にたいして免疫応答(病気の原因などを排除するはたらき)が生じてしまうことと考えられています。したがって、免疫を何らかのかたちで抑える必要が生じます。方法としてはステロイドなど免疫をおさえる薬を使う方法、間接的に免疫をおさえる方法などがあります。ステロイドの使い方としては、塗り薬、注射、飲み薬などがありどれも効果がありますが、症状の重い方が長期にわたりこの薬を服用すると様々な副作用がでることも知られています。この副作用を回避するため、症状が出てすぐの段階で入院のうえ、大量に、しかも短期的にステロイドを点滴する治療が行われるようになりました。かなり有効な治療ではありますが、適応となる患者さんを慎重に選ぶなどの細心の注意が必要で専門医による判断が必要となります。

     男性型脱毛症は男性ホルモンを抑える飲み薬であるフィナステリドが使われはじめ、塗り薬であるミノキシジルとともに有効な治療がすでに存在します。しかし、患者さんのなかにはこれらの薬では十分効果を得ることができない方々がいらっしゃるのも事実です。フィナステリドに似ていますがより男性ホルモンを抑える飲み薬であるデュタステリドが最近登場し今後治療に活用されることが期待されます。

     脱毛症は頭髪だけにおきるわけではありません。睫毛もなくなると整容的な問題のみならず眼にゴミなどがはいり傷つきやすくなるなどの問題が生じます。最近ビマトプロストという睫毛を伸ばす作用のある薬が登場しています。自費の薬ですが、単に睫毛のボリュームを増やす目的だけでなく、抗がん剤などで睫毛貧毛に悩む患者さんには朗報といえるでしょう。

     まだまだ治療法が確立していない脱毛症もあります。一度症状が固定すると毛が再生しない瘢痕性脱毛症などがこれにあたりますが、こうした病気の将来の治療としてはiPS細胞などを用いた再生医療があり、現在研究を進めているところです。まだ部分的で不完全ではありますが、ようやく毛のような構造を再生することができるようになってきました。
     このように脱毛症の病気のメカニズムが明らかになるにつれて少しずつ新しい治療が開発されてきています。今後さらに研究をすすめさらに患者さん方に還元したいと考えています。


    2016年11月12日(土)『どこまで治せる?あたらしい脱毛症治療』
    杏林大学医学部 教授 大山 学


    杏林大学 広報・企画調査室




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