高齢者の人格

                        

(1)人格の定義

人格… 一般的に、知的側面を含む広い意味でのその人らしさを示す

    その人本来の特性だけでなく、性別や年齢、社会的地位などの役割期待にそった特徴が影響していると思われる=人格は一貫性をもっているが、固定的なものはなく、変化する可能性があることを示している。

(2)人格の発達的変化

人格には変わりやすい部分と変わりにくい部分とがある。また、人格の基本的な部分は加齢のみでは変化しないと考えられている。

 

   次にあげる三者は、それぞれの発達段階に発達課題があると考え、それを克服することにより、人格は発達すると考えた。

 

    エリクソン(Erikuson,E.H.) 人の発達を8段階に分ける。

       老年期(第8段階)の発達課題…「統合」

                

 ペック(Peck,R.) 老年期を3つの段階に分ける。

@ 引退の危機 ― 自我の分化

         A 身体的健康の危機 ― 身体の超越

         B 死の危機 ― 自我の超越

 

 ハヴィガースト(Havigahurst,R.J.) 人に発達を6段階に分ける。


 老年期の課題

@     体力や健康の衰えに適応すること

A     引退と収入の減少に適応すること

B     配偶者の死に適応すること

C     同年代の人びとと親密な関係を結ぶこと

D     社会的・市民的義務を果たすこと

E     身体的に満足でききる生活環境を確立すること


(3)人格の安定性

コスタとマックレー(Costa,P.T.Jr&McCrae,R.R.) 多くの人格特徴の中から加齢の影響を受けにくく、安定していると考えられる次の3因子を見出した。

@     神経症性  不安,敵意,うつ,自己意識,衝動性,性を表す因子

A     外向性  暖かさ,集団性,強引さ,活動性,興奮追求,肯定的感情を表す因子

B     経験への開放性  空想,審美,感情,行為,思考,価値を表す因子

          開放性とは、過去の経験や社会の因習にとらわれないという傾向

   (4)人格の変化に影響を及ぼす要因

@     心身の機能の低下  高齢者になり、身体的機能が低下し、さらに精神的機能の

           低下にもつながる                                       

A     老性自覚  人が年をとったと感じること  

B     環境の変化  定年退職や子どもの独立、高齢者施設に入所するといった変化

(5)高齢者の人格特徴

@     自己中心性,頑固  知的能力に低下が環境への適応力を低下させた結果生じる。

A     猜疑心,ひがみ  感覚器官,特に聴覚の機能の低下により生じやすくなる。

B     保守性,内向性  社会からの刺激が少なくなることによる。

C     慎重さ,用心深さ  生理的老化により反応速度が低下するということが、

           慎重さに見えているのかもしれない。

D     心気性  外界から自己の内面へと関心が移るにつれて、健康状態が気になり、 

      少しの症状を病気と結びつける傾向が出てくるとされる。        

 

      人格の変化を調べる方法

  横断的方法…同時期の若齢者と高齢者を調査する方法

  縦断的方法…同じ人を長期にわたって追及する方法

   どちらを用いるかで、結果に大きな違いが出るといわれる

 

 

参考文献;

『高齢者福祉総論』 加藤博史・川崎昭博・北村由美・斎藤千鶴・杉本敏夫・山田裕子2003年 晃洋書房発行