リンパ球を追う(シリーズ300-B)

リンパ球の世界(3‐B)

 B.リンパ球をどうみるか 

3.刺激を受けたリンパ球の変化

                          杏林大学 保健学部 臨床血液学 中竹 俊彦

 免疫学的に抗原認識を経過(受容)したリンパ球は、全身に素早く拡散するために、再び前述のリンパ本幹にきて血中へ再循環しているはずです。百日咳の症例のリンパ球増加は典型でしょう。しかし、百日咳はウイルス感染ではなく、細菌感染症でのリンパ球増加という「特殊性:百日咳菌体成分固有の特殊性」も理解して、背景を説明できなければなりません。

(下記の骨髄像の解析と表現法(第2巻)−リンパ球を追う−」または、画像はCD-ROM;ブラストマスターを参照してみてください)

 リンパ球は再循環中に再度、体内のどこかで、抗原に出会うと抗原刺激に反応して、刺激を受けたリンパ球の変化としては、最大限に「活性化」されます。

 その結果、刺激に反応したリンパ球だけは血中滞在時間内にも活性化を意味する膜抗原や接着因子を膜面に表現します(末梢血塗抹標本でも、リンパ球の細胞質辺縁に、大小さまざまな突起が出てくると説明に窮しますが、細胞学的に意味があるはずです)

 また一方、抗原なしにサイトカイン刺激(例えば、IL-2など)にも反応して、少し塩基好性が増すなど性質に応じて形態が少し変わり、比較的短時間のうちに起こるサイトカイン産生とともに形態は変化し、運動性の活発化などを示すリンパ球があるはずです。

 私たちが健常成人の血液で定型的であるとみている平常時のリンパ球は、上記のような経過ですでに刺激(抗原記憶、認識、受容)を受けていて、ある程度の活性化(反応性変化)を含むリンパ球です。すなわち 末梢血のリンパ球は、その形態が連続的に少しずつ変化しつつあるというのが「平常のリンパ球」です。形態学的な反応性変化の極限では、最も大型で塩基好性の強い異型リンパ球が「活性化」の典型です。

 以上の過程でサイトカインや抗原で刺激され、活性化されて生じた形態変化を示すものを本稿では「反応性リンパ球」としたいのです。そして、新生リンパ球が何らかの異常を刺激として受け、感受性によって反応性に変化していく過程をみて、私たちがリンパ球個々の質的変化、塩基好性の量的変化とみることを広義の「異常」として表題につけた次第です。簡単に言うと、平常のリンパ球を活性化、反応性の発揮として追っていく(追究)ということです。

 正常な範囲を知り、反応性の範囲を知れば、それ以上の反応性(病的な)所見には何かコメントする責任が伴うという自覚です。異型リンパ球もそのコメントの1例でしょう。

 さて、従来のリンパ球の形態の説明に必要なキーワードは、細胞の大きさ(標本上の細胞直径)、細胞の外形、核の大きさ(直径)、核の形、核のクロマチンの構造、核小体の有無、細胞質の広さ(ときにはN/C比)、細胞質の塩基好性、 顆粒の有無、空胞化(液胞形成)などです。

 体裁

 B5版(本文 305頁)

 目次(序論・1〜24まで9頁)

 索引(欧文A〜Z 2頁、和文索引19頁 合計21頁)

  (頒布いたします)

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