中竹俊彦 リンパ球の世界(IV)-リンパ球形態の各部の意味(2007)-17.リンパ球の核周明庭(ゴルジ野)

リンパ球の世界(IV)

リンパ球形態の各部の意味

17.リンパ球の核周明庭(ゴルジ野)

                          杏林大学 保健学部 臨床血液学 中竹 俊彦

 リンパ球が活性化されても細胞質の微細構造のうち普通染色法では染まらない部分があります。つまり、普通染色ではミトコンドリアはギムザ(Giemsa)染色などの普通染色法では色素には染まらず、無色透明な微細な斑点になります。また、滑面小胞体、ゴルジ小胞、ゴルジ嚢なども染まらないのです。 核の近くに広がりのある明野、明庭としてゴルジ装置に相当する部分が存在します。ゴルジ装置は普通染色ではリンパ球の核周明庭となってみえている部分です。

 ゴルジ野は電顕的には何層かのゴルジ嚢が重なり、半球状ないし球状の集合体を形成するので、細胞質にある程度の広がりのある核周明庭として発達してきます。

 ゴルジ装置が最もよく発達するのは、Bリンパ球が免疫学的に刺激されて分化した形質細胞が具体的、典型的です。その結果、核が片方へ押しやられて偏在します。

 特定のリンパ球は抗原刺激を受けて活性化されると、リボソームが増加して、細胞質の塩基好性が増すとともに、核周明庭がめだってくる場合があります。従来はリンホカインとかサイトカインと呼ばれてきましたが、現在は活性化されたリンパ球その他の細胞を含めて、遺伝子の判明したものは番号を付けてIL-1から番号順に表示される約束です。

 リンパ球はILような生物活性をもつ蛋白分子を産生できます。産物は細胞質から放出されるためには、産物を含む小胞の状態が必要で、産生過程ではゴルジ装置を経由したことになります。小さくても核周明庭としてゴルジ野がある細胞が産生したということになります。

 一般に細胞は、加水分解酵素や特定のILなどのさまざまな分子量の糖蛋白性の産物を合成しています。細胞外へ分泌するにはゴルジ装置を経由して分泌可能な顆粒あるいは、液胞の形にして産生します。この場合、加水分解酵素つまり、ライソザイム:lysozymeを含む小胞のときはライソソーム:lysosomeと呼ばれます。また、サイトカイン類を含む分泌可能で微細な小胞(液胞)をも産生します。

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 体裁

 B5版(本文 305頁)

 目次(序論・1〜24まで9頁)

 索引(欧文A〜Z 2頁、和文索引19頁 合計21頁)

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