中竹俊彦 リンパ球の世界(V) 2007 -リンパ球系の核小体形成体・AgNORAgNOR染色した画像への解説 1.リンパ球とリンパ形質細胞様細胞の比較

リンパ球の世界(V)

 リンパ球系の核小体形成体・AgNOR

     AgNOR染色した画像への解説

1.lymhpocyte;リンパ球とlymphoplasmacytoid cell;リンパ形質細胞様細胞の比較(画像No.015→提示画面1)

                        杏林大学 保健学部 臨床血液学 中竹 俊彦

 画面の中央2個の細胞は、lymhpocyte;リンパ球(下)とlymphoplasmacytoid cell;リンパ形質細胞様細胞(上)の差異の比較です。

 まず、骨髄のリンパ球(下)は、核小体が1個あります。若いリンパ球は核小体が1個認められるのが普通です(機能した後のリンパ球ではこのような明瞭な核小体はありえません)。また、上段は細胞形態のみの判断では形質細胞の形態に近づいているのでlymphoplasmacytoid cell;リンパ形質細胞様細胞で、分化の位置としては新しい用語で前駆形質細胞(昔の用語では、前形質細胞;proplasma cell)と言い換えられる段階でしょう。

 下のリンパ球の核中央が赤褐色に染まった部位は、準備された核小体です。大きさの推定では直径が約2μmで血小板大、いわゆる好中球のドラムスティック相当(1×1.5μm)よりやや大きめだと判断されます。そして、すでに核小体が準備されたという点で、セルサイクルのG1期に入っていることを意味しています。細胞質の塩基好性が淡い段階なので、これから活動が活発になることが予見できます。

 一方、中央上段のリンパ形質細胞様細胞は核小体はリンパ球と共通ですが、すでに移行して細胞質の塩基好性がより一層強くなっています。また、液胞(vacuole)の存在が目立ちます。そして形質細胞の初期の形態にふさわしく、その点でリンパ球から次第に形質細胞の性質を示す特徴へと移行していることが推定できます。

 これらの2個の細胞は結論として、若いリンパ球および、若い(または、前駆)形質細胞で、ともにこれからRNA合成(リボソームの増加につながる)に移行して、リンパ球はサイトカイン産生に必要なリボソームを、また、形質細胞は抗体産生に必要なリボソームを合成する準備状態と考えられます。

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 体裁

 B5版(本文 305頁)

 目次(序論・1〜24まで9頁)

 索引(欧文A〜Z 2頁、和文索引19頁 合計21頁)

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