リンパ球を追う(シリーズV

リンパ球の世界(V)

 リンパ球系の核小体形成体・AgNOR

     AgNOR染色した画像への解説

5.形質細胞(2核になった異常)(画像No.004→提示画像5)

                        杏林大学 保健学部 臨床血液学 中竹 俊彦

 画面中央の形質細胞は、2核になった異常ですが、それだけではありません。

 十分に大きい核小体をそれぞれの核が保持して、細胞質の塩基好性も強く、また細胞質も広大です。単純に核/細胞質比(N/C)だけから結論すると、成熟傾向が明らかです。

 しかし、普通染色だけではよく観察できない「核小体の意義」に関連してAgNOR染色の標本に目を向けると、この成熟傾向の細胞質を持ちながら形質細胞の核形態には不釣合いの大型核小体があることが分かります。

 2核化自体は健常人でもときには見られるとしても、それぞれの核に大きな核小体の存在を指摘できれば、これでも正常だとは断言できない矛盾があることになるでしょう。なぜなら、核小体はまだこれからも機能を発揮して、リボソームを合成しつつ、細胞容積はさらに大型化していくことになるからです。

 2核化した形質細胞が萎縮していくならば、抗体産生に抑制がかかったという解釈も可能です。

 ところが、ここでは逆に、2核化した異常のその上に核小体は明瞭で大きく、さらに異常形態のまま細胞自体が大型化するという意味が読み取れます。このような所見は、正常な範囲というべき形態からかけ離れていくことなのです。

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 体裁

 B5版(本文 305頁)

 目次(序論・1〜24まで9頁)

 索引(欧文A〜Z 2頁、和文索引19頁 合計21頁)

  (頒布いたします)

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