重要なポイント(シリーズ601

「骨髄像の見方 -初学者の研修のありかた-」

 ‐赤血球,好中球,血小板の形態から骨髄像までを見通す予備知識‐

                 杏林大学保健学部 臨床血液学(教授) 中竹 俊彦

 この解説の次に,パワーポイント(シリーズ620)をご参照ください.特殊染色は(シリーズ630)に提示しています。

シリーズ601-0

はじめに

 骨髄穿刺液の精密検査は,一般的には血液疾患,その他では不明熱などの精密検査として行われます.観察者がその骨髄像をみるということは,骨髄の造血細胞を観察して,細胞の形態の意味を説明でき,報告できるということです.報告ができないと骨髄像の検査にはなりません.文字どおり,観察するのには,細胞の様子を観て考察しなければなりませんから,考察や報告を可能にするための準備・学習が必要です.

 そこで,骨髄像の精密検査依頼を受けた私たちは,依頼書に記載された臨床的な経緯,末梢血液の検査成績およびその他の臨床検査成績などを参考に骨髄像を判読して,造血状態を解析し,整合性を判断してから適切な用語で報告するということになります.

 私たちは骨髄像検査に至った経緯(背景)を十分に知った上で,諸検査成績の異常値を念頭に置き,骨髄の造血状態を解析していくことになります.しかし,事前の臨床検査成績が不十分な場合や,患者の臨床経過が早いためにまだ検査が十分に行われていない場合には,解析は難しくなります.とくに,骨髄検査の理由が「FUO(不明熱;fever of unknown origin)」とだけ記載されていた場合や「貧血の精査」,「pancytopenia;汎血球減少」,あるいはまた「leukopenia;白血球減少」などと簡単な記入だけで申し込まれたときは,検査情報が少ないだけに,かなり難しい症例が経験されるはずです.それでも骨髄に特定の形態または形態異常の細胞(群)が多く認められるときは,解析は比較的容易です.

ところが,標本にみえたものが二次的な変化を主体とした所見だけで,特異的あるいは特徴的所見が少ないときは,原因の解明には多面的な考察や洞察も必要とし,時間もかかります.結局,焦点(フォーカス)の不明確な,取り留めのない報告を記述することにも繋がります.極端な例は,数値だけ出しても何を報告したらよいものか解らないのでは,何のための骨髄検査だったのか疑われます.

 骨髄像検査の初学者は,実際に判読の研修を合理的に進めていくうえで,いくつかの基本的な事項を把握して取り掛かることが大切です.ただ闇雲(暗中模索)に進んでも,自分のレベルを見失いがちです.つまり,それまでの経験に応じた今後の研修ステップを踏んで進めていくことが早道であり,大切だといえます.

ここでは,私が骨髄像解析の研修会担当や学生への教育を通じて経験した点をお話します.また,骨髄像の解析と表現法という「テキスト」として作成した練習コースについても概説するとともに,以下には初歩からステップアップしていくための研修の早道と要点を述べてみます.皆さんのこれからの自己研修の参考になれば幸いです.

 文献

1) 中竹 俊彦:骨髄像の解析と表現法(第1巻):以下の<教材の御案内>を御参照ください.

(参考資料)

1.中竹俊彦:骨髄像の解析と表現法(1)

2.中竹俊彦:骨髄像の解析と表現法(2)‐リンパ球を追う‐

3.中竹俊彦:マルクマスター,ブラストマスター(ともに,CD-ROM教材)

 上記の問合せ先:杏林大学保健学部 臨床血液学 中竹俊彦(042-691-0011内線4305,4308)

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 体裁

 B5版(本文 305頁)

 目次(序論・1〜24まで9頁)

 索引(欧文A〜Z 2頁、和文索引19頁 合計21頁)

  (頒布いたします)

入手方法の問い合わせ( nakatake@kdt.biglobe.ne.jp )半角アットマークで可能です。