重要なポイント(シリーズ620-1-16

 ‐赤血球,好中球,血小板の形態から骨髄像までを見通す予備知識‐

 「重要なポイントではどのように細胞をみたり考えたりするか」

                 杏林大学保健学部 臨床血液学(教授) 中竹 俊彦

 この解説の次に,パワーポイント(シリーズ620)をご参照ください.特殊染色は(シリーズ630)に提示しています。

シリーズ620-1-16 

V.「絞り込めない細胞群」や病態の存在

 判別してもなお「絞り込めない細胞群」や病態の存在とは,細胞の鑑別・分類を行ってみても,病態が判然としてこない血液疾患がある場合です.あるいは,そういう病態がじつに多いのも骨髄検査症例の実態です.その典型例は,以下に述べるダウン症に起きがちな「transient abnormal myelopoiesis:TAM ・良性の骨髄異常」でしょう.あるいはまた現状では,特発性血小板減少性紫斑病(ITPの約半数を占めるようなヘリコバクター・ピロリ感染があります.

 そのほかにも,ウイルス感染症(ウイルス関連血球貪食症候群:VAHSを含む),ときには軽症(または,初期)の骨髄異形成症候群(MDS抗生物質の重大な副作用その他薬剤起因性とみられる二次性骨髄抑制(造血障害)があります.

 そして話題の最後になりますが,伝染性単核症を中心とした末梢血の異型リンパ球(リンパ性腫瘍との鑑別などは,以前から論議されてきたものの,ほとんど骨髄検査の対象外)の鑑別基準の問題などです.

V- 1.TAM

V-2.ITP

V-3.VAHS

V- 4.薬剤起因性骨髄抑制

V- 5.異型リンパ球の鑑別基準

 これらの症例での所見は,「形態学的に単一・特定の細胞群」があるのかというと,「病的原因を背景にして生じた異常な特定の細胞」であるとみることは現実的ではありません.

 つまり,因果関係が簡単には指摘できない複雑な細胞群の解析です.その結果,造血3系統の細胞全般に軽度の異常が派生し,あるいは造血支持細胞の機能までもが二次的に障害を受けている場面にも遭遇します.

 臨床側では,例えば血小板減少の原因は何か,出血に至るほどの減少症になるのか,回復はそのままで期待できるのか,回復するにはどれくらいの期間にわたって注意すればいいのかなどかなりの(観察・報告に対する)期待感があることも事実でしょう.好中球減少や貧血にしても深刻さは幾分異なっても,同様な背景をもつことが想定されます.

 また,臨床側で原因が判明している場合には,増血剤(G-CSFやエリスロポエチンなど)が骨髄穿刺前に適応と判断され既に使用されている例もあることでしょう.こうした例は,細胞個々の変化をみてさらに病態の面から考察することが現実的ですから,次のシリーズ620でパワーポイントを使っていくつか画像を提示し,実例の所見を詳細に解説します.ご参照ください.(この項おわり)

 文献

(参考資料)

1.中竹俊彦:骨髄像の解析と表現法(1)

2.中竹俊彦:骨髄像の解析と表現法(2)‐リンパ球を追う‐

3.中竹俊彦:マルクマスター,ブラストマスター(ともに,CD-ROM教材)

 上記の問合せ先:中竹 俊彦

杏林大学保健学部 臨床血液学 中竹俊彦(042-691-0011内線4305,4308)

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 体裁

 B5版(本文 305頁)

 目次(序論・1〜24まで9頁)

 索引(欧文A〜Z 2頁、和文索引19頁 合計21頁)

  (頒布いたします)

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