重要なポイント(シリーズ630-1-abst.

 

 概説・<抄録>特殊染色の方法とその読み方」

                 杏林大学保健学部 臨床血液学(教授) 中竹 俊彦

 この概説・抄録から項目ごとに<1.・・・の詳細解説を見る>という案内があります。そこをクリックすると、それぞれのレクチャー(詳細解説)を示します。下まで読み通してから次の詳細解説へも移行できます.その次には、パワーポイント形式の特殊染色(シリーズ630)を提示します.

 (ここは、シリーズ630-1-abst. )

1.網(状)赤血球染色(reticulocyte stain):

 若い赤血球内に残るrRNA,ミトコンドリア,紡錘糸など特定の構造物が,特定の塩基性色素で生の赤血球に染め出されます.

 従来法:

 ニューメチレン青(CI-No927,CI-52030)またはブリリアントクレシル青(CI-51010)で超生体染色し,網状〜顆粒物質の「構造物」をもつ赤血球のみを全赤血球数との比率で絶対数換算.均一に濃く染まる赤血球は除外.赤血球内RNAは,特定の塩基性色素(ニューメチレン青)か,もしくは以下で用いる蛍光色素の1つ(オーラミンO)で染色されます.

 自動測定法:

 自動計数装置に閾値を設定し,蛍光色素(オーラミンO)で染色後に,一定範囲内の蛍光強度を示した赤血球が計数されます.網状構造物の他にも,重度の鉄欠乏状態では残余分のrRNAが「高蛍光の血球(HFR):幼若網赤血球」として検出されるらしく,重症貧血回復の初期にも従来法の網赤血球より早い時期から増加します.大型血小板や巨大血小板増加,赤芽球出現,寒冷凝集素価高値(赤血球凝集)で高値:従来法で確認 .

上記の<1.網(状)赤血球染色(reticulocyte stain):の詳細解説を見る>

2.鉄染色1)

 細胞内ヘモシデリン,フェリチンの3価鉄は塩酸酸性下でフェロシアン化カリウムと結合し,不溶化物質(ベルリン青)になります.前者は粗大顆粒〜微粒子状に,後者は瀰漫性・均一に青染します.

 ホルマリン蒸気固定または10%ホルマリン-エタノール固定後に,HCl・フェロシアンK混合液(双方2%溶液の等量混合)で30分〜60分染色(室温よりも37℃で,さらに65℃では短時間で良好).

 十分に水洗し,0.5%サフラニンO液で適度濃いと微細陽性が見えない)に対比(後)染色します.普通染色後や古い標本でも鉄分は安定なので,転用できます.

(A)細網細胞(組織球,またはマクロファージとも表現):貯蔵鉄の判定(鉄過剰か,正常か,著減・枯渇などの判断)

(B)赤芽球系:鉄芽球,環状(または,輪状)鉄芽球の比率(鉄芽球性貧血)

(C)形質細胞にヘモシデリンがあるときは,鉄過剰状態(所見では形質細胞も鉄は必要らしいが,理由は不明).

上記の2.鉄染色の詳細解説を見る>

3.ペルオキシダ−ゼ染色(PO):

 白血病細胞(芽球)は顆粒がないとリンパ球系に見えても,顆粒球系のPOD(ミエロペルオキシダーゼ:MPO)を含むと特徴的に染色される(非リンパ性白血病細胞).骨髄芽球性白血病でもFAB M0とM7は陰性,単芽球(FAB M5a)でも陰性傾向(PO非産生のとき).

 染色法2)

 教科書的には自家調整でα-ナフトール法でおこなうか,キット(NB-PO染色キット:ムトウ)があります.以下,国際的にはDAB法(染色キットがある)など,多様な方法があります.

 POの染色感度,色調(対比染色液との色調関係を含めて),染色態度の安定性,陽性顆粒のキシロールやアルコール類への安定性など,色素の特性で一長一短があります.

上記の3.ペルオキシダ−ゼ染色(PO):の詳細解説を見る>

4.アルカリホスファターゼ染色(ALP,またはNAP):

 慢性骨髄性白血病(CML)は陽性度,陽性率とも染色性が弱く,陽性スコアーも低い点は類白血病反応と好対照.発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)で低い点は再生不良性貧血と好対照.

上記の<4.アルカリホスファターゼ染色(ALP,またはNAP):の詳細解説を見る>

5.エステラーゼ染色:

 顆粒球系の白血病細胞(FAB M2,M3 variant,M4)では幼若な白血病細胞(特異的エステラーゼ陽性)が,また単球系白血病細胞(FAB M5a,M5b)は非特異的エステラーゼ陽性が鑑別に有用.発色基質が限定されているので煩わしさは少ないものの,染色キットが経済性や実用性から汎用されます.

上記の<5.エステラーゼ染色:の詳細解説を見る>

6.PAS染色:

 急性リンパ性白血病の一部と赤芽球系の異常細胞(FAB M6,およびMDSと巨赤芽球性貧血との鑑別など),また,骨髄腫でM蛋白の蓄積された細胞のときには有用性があります.

上記の6.PAS染色:の詳細解説を見る>

7.核小体・NOR(核小体形成体)染色:

 核小体の所見から病態に迫ることは上記1〜6ほどではないものの,多発性骨髄腫では核小体の大きさや数が病状の変化と関連するとされます.銀染色を応用したAgNORとして観察すると,旧来の核小体染色にも造血細胞全般を含めて新しい所見としての集積が今後も期待できます

上記の<7.核小体・NOR(核小体形成体)染色:の詳細解説を見る>

文献

1)中竹俊彦:骨髄鉄染色法と臨床的意義 検査と技術 31(8)687-692,2003.

2)亀井喜恵子:ペルオキシダ−ゼ染色新染色法のすべて(Medical Technology別冊)276-282,1999.

(参考資料)

1.中竹俊彦:骨髄像の解析と表現法(1)

2.中竹俊彦:骨髄像の解析と表現法(2)‐リンパ球を追う‐

3.中竹俊彦:マルクマスター,ブラストマスター(ともに,CD-ROM教材)

 

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 体裁

 B5版(本文 305頁)

 目次(序論・1〜24まで9頁)

 索引(欧文A〜Z 2頁、和文索引19頁 合計21頁)

  (頒布いたします)

入手方法の問い合わせ( nakatake@kdt.biglobe.ne.jp )半角アットマークで可能です。