重要なポイント(シリーズ630-2-1-2.sp.st.tech1〜7)
実技編
「詳細解説・特殊染色の方法とその読み方」
杏林大学保健学部 臨床血液学(教授) 中竹 俊彦
この解説の次に,パワーポイントで特殊染色は(シリーズ630)に提示しています。
シリーズ630-2-2.sp.stSidero.tech
II.鉄染色法
II-2.鉄染色の読み方の1例
上の画像は鉄染色の一例を示します.この画像は悪性貧血症例へのVB12注射3日後の鉄染色です.ところが,本症では骨髄の鉄貯蔵量はマクロファージ(組織球)中にも本来,多くはないのです.なぜなら,悪性貧血の病態は内因子抗体と同時に壁細胞抗体があるので胃粘膜には著明な萎縮性胃炎があるのが普通です.したがって,骨髄は巨赤芽球性に陥って無効造血のために,一見すると血清鉄の高値と総鉄結合能が低下した鉄過剰のパターンにみえます.ところが,鉄の吸収は無酸症のために全身的には鉄欠乏状態でマクロファージも貯蔵鉄は見かけ上は鉄が多いのですが,無効造血に伴う利用率低下の状態にあります.これに対してビタミンB12が注射されると,その日から3日以内に巨赤芽球はDNA合成が回復し,細胞分裂も旺盛になります.ビタミンB12が到達したとき巨赤芽球は1回目の細胞分裂で次に「大赤芽球」となり,さらに次の細胞分裂で「正赤芽球」へと変化して細胞分裂する結果,著しい赤芽球過形成に至ります.この時期には一過性に鉄利用が増大する結果,全身的な鉄欠乏が表面化するので,Hbの回復が鈍り始め,やがて頭打ち状態になって「鉄欠乏に伴うHb回復の限界」に至ります.
末梢血は「網赤血球分利」という状態になります.その状態では鉄の利用が最大限に回転し始めるので,結果的に骨髄内の鉄過剰とみられた見かけ上の鉄は消費されて,やがて鉄欠乏状態が表面化してきて,ヘモグロビンの回復速度が鈍っていくのです.すなわち,網赤血球分利は長続きしないのです.悪性貧血には鉄剤も同時に供給されないと,この様に見掛け上の貯蔵鉄はすぐに底をついて,ヘモグロビンの回復が鈍くなってしまうのです.
II-2-1)〜3) 鉄染色の読み方の要点
1)小球性低色素性貧血が「鉄芽球性貧血を基盤」とするときは,環状鉄芽球(ringed sideroblast)を指摘すること.マクロファージにはヘモシデリンが過剰.
2)溶血性貧血など鉄過剰状態は,マクロファージの著しい貯蔵鉄(ヘモシデリン)の存在と同時に,フェリチンの均一な濃染状態を認める(特殊染色パワーポイントスライドで提示).溶血性貧血では一目瞭然である(上記の資料を参照)
3)骨髄異形成症候群(MDS)では一般に鉄過剰であり,環状鉄芽球がある場合(RARS)とそうではない場合とがある.
文献
1)中竹俊彦:骨髄鉄染色法と臨床的意義.検査と技術31巻8号687〜692,2003
(参考資料)
1.中竹俊彦:骨髄像の解析と表現法(1)
2.中竹俊彦:骨髄像の解析と表現法(2)‐リンパ球を追う‐
3.中竹俊彦:マルクマスター,ブラストマスター(ともに,CD-ROM教材)
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体裁
B5版(本文 305頁)
目次(序論・1〜24まで9頁)
索引(欧文A〜Z 2頁、和文索引19頁 合計21頁)
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