重要なポイント(シリーズ630-2-1.sp.st.tech1〜7)
実技編
「詳細解説・特殊染色の方法とその読み方」
杏林大学保健学部 臨床血液学(教授) 中竹 俊彦
この解説の次に,パワーポイントで特殊染色は(シリーズ630)に提示しています。
シリーズ630-2-5.Est
V.エステラーゼ(Es)染色
V-1.Es染色の方法
a.特異的エステラーゼ(クロロアセテート エステラーゼ)
顆粒球系に限って陽性で,比較的長鎖の高級脂肪酸エステルを分解するリパーゼ・コリンエステラーゼ・アセチルコリンエステラーゼがあります.Moloney法はナフトールクロロ酢酸エステル(Naphthol AS-D chloroacetate:Sigma)を基質にします.
1)固定液:緩衝ホルマリン・アセトン混合液,pH約6.6(Na2HPO4 20mg,KH2PO4 100mgを蒸留水30mlに溶かし,アセトン45mlと37%ホルマリン液25mlを加え,よく混和.冷蔵庫に2か月保存できる.
2)基質液:Naphthol AS-D chloroacetate(Sigma)の1mgをN-N’-dimethylformamideの0.5mlに溶かし,冷蔵庫に保存.
3)呈色液:1/15Mリン酸緩衝液(pH 7.4)10mlにfast blue RR salt 5mgを溶解する.これに上記の基質液を混合して濾過後,直ちに使用する.
b.非特異的エステラーゼ(ブチレート エステラーゼ)
単球・血小板系・リンパ球・形質細胞などに広く分布しています.比較的短鎖の低級脂肪酸エステルを加水分解します.α-ナフチール・ブチレート(α-naphthyl butyrate)か,α-ナフチール・アセテート(α-naphthyl acetate)を基質にします、前者がよく用いられます.しかし,前者は陰性で後者では陽性の例もあります.
非特異的エステラーゼ用反応液の調製
1)Fast Garnet GBC 10mgを1/15Mリン酸Buffer(pH6.3)9.5mlで溶かす.
2)α-NB 10mgにEGME(エチレングリコールモノメチルエーテル)0.5mlを加えよく混和する.
3).I液にII液を加えて転倒混和したものを反応液とする.
染色液の処方は幾通りもあるので,わが国ではキット(武藤化学)などを用いるほうが簡便である.
武藤化学のキットによる非特異的エステラーゼの染色手順を以下に示す(キットでは使用説明書に従うのがよい).
染色操作
1)固定:冷却固定液(4℃前後)を標本に満載(固定液は事前に必ず冷蔵庫に保存)して30秒間,固定.
2)水洗:流水で30秒水洗.
3)反応:標本に反応液を満載(湿潤で37℃30分)して反応させる.
4)水洗:流水で30秒,水洗.
5)後染色:カラッチ・ヘマトキシリンで10分染色.
6)水洗:流水で十分に(5分間)水洗.
7)乾燥・鏡検
V-2.Es染色の読み方
V-2a.特異的エステラーゼ(クロロアセテート エステラーゼ)
青色の顆粒状に染まる.前骨髄球から分節核球まで各成熟段階の好中球系細胞が陽性を示します.
V-2b.非特異的エステラーゼ(ブチレート エステラーゼ)
赤褐色の顆粒状に染まる.単球系細胞とマクロファージで瀰慢性に陽性となる.リンパ球の一部は1〜数個の粗大顆粒状に染まります.
本法で非特異的エステラーゼが強く出るのは単球に限られ,巨核球とリンパ球の一部が弱陽性になるくらいで,好中球系は陰性です.クロロアセテートエステラーゼは好中球で強く染まり,単球系は前単球で陽性であってもドット数は少なく染色性も弱いものです.もし区別しにくいときは,反応液にフッ化ナトリウムを加えると,好中球やリンパ球では反応が阻害されないのに,単球系ではほとんど,あるいは全く染まらなくなるので鑑別されます.(フッ化ナトリウム抑制試験)
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(参考資料)
1.中竹俊彦:骨髄像の解析と表現法(1)
2.中竹俊彦:骨髄像の解析と表現法(2)‐リンパ球を追う‐
3.中竹俊彦:マルクマスター,ブラストマスター(ともに,CD-ROM教材)
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体裁
B5版(本文 305頁)
目次(序論・1〜24まで9頁)
索引(欧文A〜Z 2頁、和文索引19頁 合計21頁)
(頒布いたします)
入手方法の問い合わせ( nakatake@kdt.biglobe.ne.jp )半角アットマークで可能です。