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核の形態解析の基本事項 page1/2

1 分節核の重複した異常
2 単球の染色体(クロモソーム)が分離した小核
3 クロマチンの粗大化の意味を見抜く
4 巨核球系の核の倍数性
 核の形態学的解析で病態がさらに詳細にみえてくる例は多い.核の形態学的所見は,造血細胞の分裂・増殖および成熟のセルサイクルに伴って変化する.クロマチン構造の変化や核形態異常が細抱分裂のどの段階の異常で生じたのかを読み取るには,細胞生物学的なポイントをつかむと判読しやすい.

1.分節核の重複した異常(図1)

 それぞれ独立して分裂した2つの分節核をもつ異常好中球である.この重複した分節核は倍数性(N)が正常好中球(2N)と同じものが2個含まれるので4N相当の細胞である.核の2分裂は進行したのに,細胞質側の細胞分裂機構の異常で生じたものである.核DNAの倍加に伴って細胞容積も500fl程度に増加しているとみてよい.

 正常好中球の細胞直径が平均15マイクロメートルだとみると,この異常細胞は一回り大きく,長径20マイクロメートル,短径16マイクロメートル,平均18マイクロメートル程度である.この2核細胞は,悪性貧血などでいう巨大後骨髄球や巨大杆状核球およぴ過分節核球(6分節核以上)のように,一個の4N相当の核とは異なる.

 骨髄中のDNA合成の遅れで核分裂ができないときは,4Nに近づいた核が巨大杆状核・過分節核になるのに対して,この細胞では核は2分裂できたにもかかわらず,細胞質が2分裂できなかった異常である.結果的に好中球の細胞数は倍加しないという点では,過分節核球と同じである.

 本例は悪性リンパ腫の治療中の所見であるが,リンパ腫細胞の増殖を薬剤でたたくと,正常な好中球の増殖も障害されたという,ごくありふれた実例である.こうした異常はDNA合成障害,核の分裂機構の障害,細胞質分裂の障害のどれが起因したかがみえてくる.もしも検査担当者がこの症例の治療状況を知らなければ,この形態の原因の解釈は難しい.

 好中球系の細胞分裂の最終回で生じたこの異常は,以後の核分裂の必要性がないからみえてきたが,骨髄芽球や前骨髄球の分裂時(分裂回数1〜4回目)に2核化が起こると,その系統では以降の核分裂は混乱して分裂不能となり,好中球はつくれない.好中球系の滅少があれば,このような2核の形態異常は解析の対象になり,その原因が問題になる.骨髄異形成症候群における無効造血がその典型例である.また,形質細胞と赤芽球系では2核異常が生じやすい.

図1 分節核の重複