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核の形態解析の基本事項 page2/2

2 単球の染色体(クロモソーム)が分離した小核(図2)

 本例は単球に生じた小核である.赤血球内の残遺物の例ではジョリー小体があり,ありふれた赤血球内封入体であるが,本例は単球である点が異なる.このような核分裂(マイトーシス)段階の異常は,2分裂でクロモソームを引き分けるときに中心小体とクロモソームの間をつなぐ紡錘糸が切れて生じる.末分化の段階でこれが起こると影響は重大である.分離した小核の欠落が,もしも以降の分化や細胞分裂に大きな支障ではなければ,本体の核の方が次の細胞に異数性を伝達していくことになるかもしれない.しかし,細胞分裂の最終回で小核が生じても,ジョリー小体や小核程度の異常で終ってしまう.

3 クロマチンの粗大化の意味を見抜く

 図3は前赤芽球のクロモソーム形成段階1)である.血液形態学では核のクロマチンの粗大化は成熟を示すと表現するが,クロモソームの形成と混同してはいけない.細胞分裂の準備段階にあたるクロモソーム形成は,正常な23組のクロモソーム46本に組み立てられる.このとき,核の辺緑は核膜も消える.図4の核辺緑のデコボコはその所見である.図のクロマチン魂の大きさはクロモソームのサイズで決まり,染色性(または,染まりかた)は斑紋状である.

 一方,核の成熟の所見ならば,核辺縁は鮮明で,辺緑のクロマチンの付着による肥厚が明瞭になり,クロマチン魂は粗大で,濃縮したクロマチンは核DNAの機能の終了を意味している.

4 巨核球系の核の倍数性

 図4は巨核芽球の2核の細胞である.巨核芽球ではこのように対称的な2個の核が向き合った形態がときどき観察される.

1個の核がそれぞれ4N相当の大きさで,すでに8Nに近い細胞である.巨核球系はDNA合成が完了すると核内核分裂(エンドマイトーシス)し,普通では核分裂像をみることはできない.しかし,ときには図4のように2個に分裂した核を認めるが,核の外側はすでに核膜はないようで,中央の境界面だけが明瞭である.この核内分裂時に核膜は消えるので1個の8Nになれば異常ではない.CMLでは多核成熟巨核球をみることがある.巨核球には特有の複雑な分裂調節機構があるようで,観察するほど神秘的でさえある.

文献

1)中竹俊彦:骨髄像の解析と表現.第1巻,1993(出阪連絡先:杏林大学保健学部臨床血液学教室)

出典中竹俊彦,高橋 良,関根名里子:血液細胞の社会をのぞく(7)核の形態解析の基本事項.医学検査44巻 12号.

図2 単球の核の分離した小体

図3 赤芽球の核のクロモソーム形成

図4 2個の核を持つ巨核芽球