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HL-60細胞で見る細胞の分化 page4/4

 さて,他にもHL-60細胞の分化能を誘導できる化学物質がある.今度は,HL−60細胞を最初にphorbol myristate acetate:PMAで弱く刺激すると,細胞の一部では単球系への誘導が起こってくる(図10).

 前骨髄球よりもアズール顆粒は微細で,数も少ない.このときペルオキシダーゼ反応も前骨髄球よりは弱い(図11).

 PAS染色では小さい明瞭な顆粒状の陽性像が認められるようになる(図12).

 エステラーゼ二重染色では単球系の特徴であるαナフチルブチレートを基質に反応する非特異的エステラーゼの赤褐色陽性所見が著明になっている(図13).

 このようにみてくると,細胞刺激の性質によっては,誘導されてくる結果が異なる.生体では細菌感染症で好中球アルカリホスファターゼ活性が高値になったり,また,顆粒球系コロニー刺激因子(G−CSF)の投与によって著明なアズール顆粒の増加がみられることなどにも関連して,興味深い現象である.

図10 PMA刺激後のライト・ギムザ染色所見
 細胞の一部では単球系への誘導が起こってしまう.前骨髄球よりもアズール顆粒は微細で,数も少ない(中央の1個)
図11 PMA刺激後のペルオキシダーセー反応
 明瞭なペルオキシダーゼ反応陽性像を示すのは前骨髄球の特徴だが,単球系への誘導が起こった細胞は陽性を示す顆粒が小さく,しかも反応が弱い(中央右の3個
図12 PMA刺激後のPAS染色
 小さい明瞭な顆粒状の陽性像が認められるようになる
図13 PMA刺激後のエステラーゼ二重染色
 単球系の特徴であるαナフチルブチレートを基質として反応する非特異的エステラーゼの赤褐色陽性所見が著明に増強している(中央