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赤芽球の核形態を解析(その2) page1/2

1 絶対数の増加(過形成)と核の直径の不均一
2 クロマチン構造異常やHb合成の異常
3 核自体の形の異常 
4 Hb合成も遅れた二重の不均衡
5 巨核球系の異常
6 好中球の核,細胞質の異常
 貧血の原因が骨髄の赤芽球系の異常によるときは,赤芽球の絶対数と形態(質)に異常がある.その異常がもっともよくみられるのは,骨髄異形成症候群(MDS)である.この疾患での形態異常所見は,赤芽球系,顆粒球系(主に好中球系),巨核球系それぞれに発生している.特に赤芽球系には多彩な形態異常があり,巨赤芽球様細胞(megaloblastoid cell)と呼ぶ系統では,核の異常が著しい.赤芽球,好中球系,白血球系ともに形態異常が激しいときは,貧血だけでなく白血球系の減少,血小板減少が同時に起こる.背景には無効造血の増大が隠れていることを,形態異常から見抜かないといけない.

図2(左):クロマチン構造異常やHb合成の異常

 顆粒状クロマチンは成熟し,幾分か粗大化する(a)が,異数性のためか核の濃縮が伴わず巨赤芽球に似る(巨赤芽球様細胞:核成熟の遅れと大型化).しかし,Hb合成障害もあり,細胞質は薄く斑紋状(b)で,巨赤芽球ではない.似ているだけで,原因は染色体の異常、もちろんビタミンB12には反応しないから「不応性貧血の語源」

図1(上):絶対数の増加(過形成)と核の直径の不均一

 赤芽球の過形成には形態異常を伴い,成熟段階の鑑別が困難.核はどれも幼若な所見(顆粒状クロマチンのまま移行:megaloblastoid;巨赤芽球様:abc)のために,濃縮した核直径だけが不均一となり,細胞質の成熟が伴わない.

図3 核自体の形の異常

 赤芽球の核が1個(単一)の核で異常形態のものや,二核,多核など複数になるのは,分裂異常に基づく所見.発生した成熟段階の推定は,核の大きさ,塩基好性 Hb量による多染性の進行程度などの細胞質の染色性で見当がつく.形態異常は帰属不明の芽球(a)から正染性段階(d)まで広範囲に起こり,大きさ,形,核数(複数化),Hb量など,多種多彩である.図cでは,核分裂が3極になってみえるが,中央部を中心小体が支えているようで,それが図bや図dのような3個の核形成の背景にあるらしい.

赤芽球系では,
1)絶対数の増加(過形成:図1
2)核の直径の不均一(図1
3)クロマチン構造の異常(図1,2
4)核自体の形態異常(図3
5)血色素(Hb)合成の不均衡(図1,2,3,4

 このほか,代謝異常は環状鉄芽球やPAS陽性像など,多くの異常が同時に認められる.MDSの赤芽球系の代謝異常では,なぜ正色素性と低色素性の2種類の赤芽球が出現するのかとか,環状鉄芽球の評価や対比染色のコツなどは,拙著1)を参照していただきたい.他の造血系統にも形態異常があり,

6)好中球系の核の異常(図4,6
7)巨核球系の異常(図5)などもみられることが多い.
8)好中球系の顆粒産生の異常(図6