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顆粒球系の変化を解析 page1/2
1 末梢血の好中球増多と骨髄像
2 好中球の成熟過程の変化
3 好中球の死
4 細胞破砕片<fragmentation>
5 好中球が貪食された像
 赤芽球系が貧血症の主な解析対象となるように,顆粒球系の変化は一般には好中球減少症の解析村象になる.近年多い薬剤の副作用では,顆粒球減少症のほか,ときに複数の造血系統や造血の3系統全体にわたる解析の必要性があり,骨髄抑制が問題になる.反応性の変化としては,末梢血の好中球は一般に細菌感染症で増加する.ウイルス感染では,一過性の好中球減少に続いてリンパ球が減少し,やがて反応性にリンパ球が増加する.骨髄の顆粒球系は約50%を占め,なかでも好中球系の実数や形態は変化に富み,検査の立場から類推,想像した骨髄像とは異なることも多い.
 ここでは,好中球系を中心に,骨髄の反応性変化を解析してみたい.以下に述べる複雑な変化を見抜くことで,好中球系の生理的な反応状態を知ることになる.一方,血液疾患本来の骨髄所見は,いかに特徴的な所見で成りたっているかも理解しやすくなる.骨髄像を「観察」して「考えること」が「解析すること」につながることを案内してみたい.

表 骨髄像の好中球系の抽出例
分類値(%)
a b c
骨髄芽球 0.72 1.1 2.2
前骨髄球 1.19 5.6 3.8
骨髄球 9.61 10.4 37.8
後骨髄球 15.54 4.9 8.8
杆状核球 9.77 16.7 7.8
分葉核球 8.25 16.9 0

図1 分節核球の増加(表b欄の例)

図2 幼若好中球の増加(表c欄の例)

薬物による副作用末梢血は無顆粒球症.骨髄像は著明な幼若好中球の増加

1 末梢血の好中球増多と骨髄像

 骨髄から末梢血に動員できる好中球は,骨髄にプールされた杆状核球以降の成熟好中球である.動員では分節核球,次に杆状核球の順に出て行くので,骨髄でもその順に減少する(表1a欄).正常骨髄では,分裂プールから最も近い後骨髄球の値が最大で,杆状核球,分節核球の順に少ない.

 骨髄球,後骨髄球および杆状核球の判定基準が合理的でないと,好中球系の成熟段階でみられる微妙な変動がみえにくい.つまり,後骨髄球を少なく判読する傾向の観察者の眼には,その分だけ杆状核球が相対的に多くみえる.その結果は,反応性変化の例(表1b欄)で示した感染症の回復時の微妙な好中球の変化(図1)と意味が異なるのに,数値では同じパタンになり、数値になった後では鑑別が難しい.後骨髄球から分節核球までの核の形態解析は次の機会にとりあげたい.

2 好中球の成熟過程の変化

 成熟好中球を血液に放出後,骨髄では相対的にも実数的にも幼若好中球系が増加する(表1c欄).

 好中球系の分裂,増殖が加速された結果,骨髄球や後骨髄球の実数は増加する(図2).細胞質の成熟は相対的に遅れて「核に対し細胞質成熟のずれ」が生じて,塩基好性が残る(図3a).

 さらに骨髄球段階で「顆粒成熟のずれ」が加わると,後骨髄球以降にまでアズール顆粒が残存(図3b)する.

 これら2つの変化が高度になると,成熟不全は末梢血に現われ,デーレ小体(図4a)や中毒性顆拉(図4b)になり,細胞の中毒状態の所見になる1)