1 末梢血の好中球増多と骨髄像
骨髄から末梢血に動員できる好中球は,骨髄にプールされた杆状核球以降の成熟好中球である.動員では分節核球,次に杆状核球の順に出て行くので,骨髄でもその順に減少する(表1a欄).正常骨髄では,分裂プールから最も近い後骨髄球の値が最大で,杆状核球,分節核球の順に少ない.
骨髄球,後骨髄球および杆状核球の判定基準が合理的でないと,好中球系の成熟段階でみられる微妙な変動がみえにくい.つまり,後骨髄球を少なく判読する傾向の観察者の眼には,その分だけ杆状核球が相対的に多くみえる.その結果は,反応性変化の例(表1b欄)で示した感染症の回復時の微妙な好中球の変化(図1)と意味が異なるのに,数値では同じパタンになり、数値になった後では鑑別が難しい.後骨髄球から分節核球までの核の形態解析は次の機会にとりあげたい.
2 好中球の成熟過程の変化
成熟好中球を血液に放出後,骨髄では相対的にも実数的にも幼若好中球系が増加する(表1c欄).
好中球系の分裂,増殖が加速された結果,骨髄球や後骨髄球の実数は増加する(図2).細胞質の成熟は相対的に遅れて「核に対し細胞質成熟のずれ」が生じて,塩基好性が残る(図3a).
さらに骨髄球段階で「顆粒成熟のずれ」が加わると,後骨髄球以降にまでアズール顆粒が残存(図3b)する.
これら2つの変化が高度になると,成熟不全は末梢血に現われ,デーレ小体(図4a)や中毒性顆拉(図4b)になり,細胞の中毒状態の所見になる1)
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