杏林大学医学部 衛生学公衆衛生学教室

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メダカとは

 メダカは日本の土着生物であり、昔からなじみのあるものです。近年はテクノロジーの進歩、インフラの整備により、多くの研究者がモデル動物として使用しています。私はメダカの最大の特徴は、「遺伝学を駆使できる」「脊椎動物」であることだと思っています。もちろん現代生命科学の発展はマウスを用いた遺伝学的研究に依るところが大きいのですが、そうは言ってもマウスはかなり敷居の高い動物です。メダカは、線虫やショウジョウバエほどではないにしても取扱いが簡単であり、かつ、脊椎動物であるというところがポイントです。

ニホンメダカ(Oryzias latipes)
ニホンメダカ(Oryzias latipes)

その他にも、メダカ(あるいはゼブラフィッシュを含む小型魚類と言ってもいいですが)には、以下のような優れた特徴があります。

  • 体外発生をするので、胎児影響を評価しやすい。
  • 胚が透明であり、蛍光タンパクなどで生きたまま各臓器を可視化することができる。
  • 毎日卵を産むので、試料の調整が比較的楽である。
  • 体サイズが小さいので、マルチウェルプレートを使用した暴露実験が行える。
  • 哺乳動物に比べ倫理的な問題が少ない。

遺伝子破壊メダカとは

形態異常を示す遺伝性疾患モデルメダカの作成(内因性要因による奇形発症メカニズムの解明)

 ヒトにはメンデル遺伝するさまざまな遺伝性疾患があります。その多くのものは何々症候群と命名されていて、胎児期の形態異常として現れます。これらの疾患は比較的稀であるため、製薬会社はマーケットの関係上あまり関心を示しません。メダカは体外発生すること、胚が透明で蛍光タンパク等により各臓器を可視化できること、発生生物学的な知見の蓄積が豊富あることより、これらの疾患の解析に適しています。私たちは小児科・臨床遺伝学センターの小崎健次郎博士らと共同で、大量のシーケンス情報を一度に得ることができる次世代シーケンサーを用いて、メダカTILLINGライブラリーから数十種類の疾患遺伝子変異体の単離を試みています。これらの変異体は将来、創薬スクリーニング、疾患モデルのミュータジェネシスによるモディファイヤー遺伝子の単離同定、発症メカニズムの解明などに使うことができます。

催奇性物質の標的分子の同定(外因性要因による奇形発症メカニズムの解明)

 種々の化学物質が胎児発生に異常を引き起こします。そのいくつかのものは臨床的に使われている薬剤で、妊娠中の女性への投与は禁忌になっています。しかし例えば一群の抗てんかん薬のように、催奇性は強いものの簡単には中止できないものもあるので、臨床現場ではお母さん、医師ともに難しい選択を迫られます。化学物質が生体に作用するからには、必ずその標的となっている分子(多くの場合、タンパク質)があるはずで、それがわかれば副作用の少ない新薬開発につながる可能性があります。現在、薬効あるいは副作用が現れる際の標的分子がわかっているものはほんの一握りの化合物に限られます。
 東京工業大学の半田宏博士は、タンパク質をベイトとして低分子化合物を単離するためのナノビーズを開発して、薬害発生から半世紀ぶりにサリドマイドの標的分子を同定しました(Ito, et al. Science, 2010)。サリドマイドに結合しない変異型標的タンパクを持つゼブラフィッシュ胚は、四肢の相同器官であるヒレが正常に発生します。私たちは、半田研究室から慶應義塾大学に移ってきた加部泰明博士、小児科の小崎健次郎博士と共同で、ナノビーズを使い、催奇性薬剤の標的分子の同定を行っています。

さまざまな遺伝子破壊メダカ