自国・他国の歴史、文化を知り　国際社会で活躍を

　さて、多くの方はこれから実社会へと進むことになります。この社会は刻々と変化しています。その流れの中で近年もっとも顕著なものの一つは、社会全体のグローバル化であります。グローバリズムは国や国境という概念を超えた地球全体を対象としたものです。グローバル化は、自分たちの生活と遠い存在であると決して思わないでください。いろいろな病気、とくに感染症をみればよく分かります。エイズや鳥インフルエンザを例に挙げるまでもなく、多くの感染症はあっという間に地球全体を駆け巡ります。それに対応するには、まさに世界中の医学者を含めた様々な力を結集せねばなりません。経済の分野でもグローバリズムが極めて急速に進行しています。日本を代表する多くの企業の収益は、国内よりも国外からのものが上回るようになっていますし、ある国の経済危機がたちまち世界経済に大きな影響をもたらすことは皆様もよくご存知のことです。これには一つの国だけの力ではもう対応しきれないものでしょう。
　この社会の中で、皆様はどのように力を発揮できるのでしょうか。医学部、保健学部、看護専門学校の方は、専門家として、常に世界に目を開き、新しい医学医療を実践してください。総合政策学部のみなさん、学際的演習で学んだ幅広い学修で得たことを活かし、海外との交流を視野に入れた社会人となってください。外国語学部のみなさん、国際的共通語の英語、16億人の母国語である中国語を必修として学んだことを活かしてください。　　　
　もうひとつ、現代の実社会で重要なことは、グローバル化がどんなに進展してもその根底には今までの長い歴史や文化が存在するということです。それは人類の歴史、我が国の歴史、他国の歴史であり、我が国の文化・他国の文化です。皆様がグローバルに活躍しようとするとき、自身の国の歴史・文化をしっかりと意識し、他国のそれも同様に尊重し強調して進むことが重要ではないでしょうか。皆様、杏林学園で学んだことを礎とし、その上に皆さんの力で未来を築き上げてください。

　杏林学園の卒業生は3万名を超えており、これに新しく皆さんが同窓生として加わります。三鷹、八王子のキャンパスでともに学んだ一員として、いつまでも杏林学園の一員としてしっかり絆を深めていただきたいと思います。私どもも同窓会などと強く連携していきたいと考えており、母校と皆様は今後も手を携えて歩んでまいります。
　杏林学園は平成28年度に創立50周年を迎えます。それに向けて、新しいキャンパスの構想や勉学、研究体制の充実など50周年記念事業を今進めているところです。新しい杏林学園に向けて、皆様のお力を是非お貸しくださるよう、お願いいたします。
　卒業生の皆様、自身の健康には十分注意してください。そして、今後様々な分野でご活躍されることを願っております。