脊椎・脊髄外科センター概要・特色

診療科概要

脊椎・脊髄外科センターは、脊椎・脊髄疾患の外科治療を担うことを目的に平成21年10月1日からに杏林大学医学部付属病院に設置されました。従来から椎間板ヘルニアに代表される脊椎・脊髄疾患は運動器疾患の中でも患者数が多い分野でしたが、近年の高齢化社会に伴いさらに増加の一途です。一方、高齢医学や麻酔学の進歩により高齢者でも安全に手術が受けられるようになり、また生活の質の向上という観点からも高齢者でも脊椎・脊髄の手術を選択する患者さんが増加しております。特に腰部脊柱管狭窄症はその典型的な疾患といえます。
しかし、いざ自分が脊椎や脊髄疾患になった時にどの病院に行ったら脊椎・脊髄外科の専門医に診てもらえるのかわからないのが現状ですが、当センターでは日本脊椎脊髄病学会の認定する脊椎脊髄外科指導医が主に診断、治療にあたります。また、最近の特徴として内科的疾患をはじめとしていろいろな併発症をお持ちの患者さんが多くなりました。これは以前なら手術できなかった症例も他科の協力により可能になった影響もあります。すなわち、術前のみならず、術後の不測の合併症の対処においても、高度の専門設備と専門医の協力が得られる大学付属病院の利点が活かされております。
近年の脊椎・脊髄外科治療の進歩の結果として手術後早期のリハビリと社会復帰が可能となりました。その1つに金属を用いたインスツルメンテーション手術があります。当センターでは適応のある症例には積極的にこの手術を行い、患者さんの早期社会復帰をめざしております。このためハード面でも最先端の手術中CTナビゲーションシステムを導入して、これらの手術が安全に行えるようにしております。腰椎椎間板ヘルニアには内視鏡手術を行っております。平成20年度の腰椎椎間板ヘルニアに対するヘルニア摘出術の80%以上が内視鏡手術で、年々増加しております。さらに、内視鏡手術を腰部脊柱管狭窄症にも適応を拡大しつつあります。
最近注目されている骨粗鬆症性の椎体圧迫骨折では、骨折の治癒が遅れたり、神経麻痺を生じる例がみられますが、このような症例に対しても椎体形成術やインスツルメンテーション手術を積極的に行っております。また、脊髄腫瘍の摘出術などでは手術が安全に行えるように術中に電気診断を用いた脊髄モニタリングを実施しております。

<診療スタッフ>

  • センター責任者:市村正一(整形外科臨床教授、脊椎・脊髄外科指導医)
  • 長谷川雅一(整形外科助教、脊椎・脊髄外科指導医)
  • 高橋雅人(整形外科助教、脊椎・脊髄外科指導医)
  • 佐野秀仁(整形外科助教、脊椎・脊髄外科指導医)
  • 長谷川淳(整形外科専攻医、整形外科専門医)
  • 五十嵐一峰(調布病院出向中、脊椎脊髄病医)
  • 大祢英昭(清智会記念病院出向中、整形外科専門医)
  • 佐藤俊輔(村山医療センター出向中、整形外科専門医)
  • 竹内拓海(慶友整形外科病院出向中、整形外科専門医)

<診療日と予約方法>
初診日(脊椎センター):月、木(受付13時30分~15時30分)
再診日(脊椎再診):水、木(第一、三)(13時30分~15時30分)
土(10時30分~11時00分)

初診は紹介患者さんのみ受け付けいたします。このため診察をご希望の方は行きつけの病院または診療所から杏林大学病院の医療連携室を通じて「脊椎センター」と指定して予約の上、紹介状をご持参下さい。初診後、検査入院や手術が必要と判断された場合には、次回の外来から脊椎・脊髄外科専門医の外来に通院していただきます。
また、脊椎再診では手術後の患者さんだけを診察いたします。

推薦図書 患者さんのための腰椎椎間板ヘルニアガイドブック
―診療ガイドラインに基づいてー  南江堂
手足のしびれ、歩きにくい症状がある方に
―診療ガイドラインに基づいた頚椎症性脊髄症ガイドブックー  南江堂
患者さんのための頚椎後縦靭帯骨化症ガイドブック  南江堂

取り扱っている主な疾患

基本的には脊椎・脊髄疾患で外科治療の対象となる疾患を扱っています。代表的疾患名を下記に列記いたします。

  • 腰椎椎間板ヘルニア
  • 腰部脊柱管狭窄症
  • 腰椎変性すべり症
  • 腰椎分離・すべり症
  • 頚椎椎間板ヘルニア
  • 頚椎症性脊髄症
  • 頚椎後縦靭帯骨化症
  • 頚椎症性筋委縮症
  • 胸椎後縦靭帯骨化症
  • 胸椎黄色靭帯骨化症
  • 脊髄腫瘍
  • 化膿性脊椎炎
  • 椎体圧迫骨折
  • 環軸椎亜脱臼(リウマチ性など)
  • 透析性脊椎炎
  • 脊椎外傷
  • 脊髄空洞症
  • 脊椎側弯症
  • その他脊椎・脊髄疾患で手術治療を要するもの

理念

最新設備を駆使し、他科との協力体制の下、脊椎・脊髄外科指導医による安全で確実な診療を患者さんに提供いたします

基本方針

術後早期の社会復帰をめざし、安全で的確な治療を提供します

目標

脊椎・脊髄疾患の診療のみならず、研究や教育にも取り組み、診断・治療のさらなる向上を目指します

特色

臨床、教育、研究の実践により、質の高い医療を提供します。

臨床

危険性や難度の高い手術を年間250~300例行っております。より安全に、より確実に、そしてより低侵襲に行うことを心がけております。

  • 1)ナビゲーション手術
    上位頸椎、高度の脊柱変形矯正手術のほか、術中3D-CTを駆使したピンポイント手術で確実で低侵襲手術を行っております。
  • 2)術中脊髄モニタリング
    術後麻痺の危険が高い脊髄腫瘍、靭帯骨化症や側弯症などの変形矯正手術の麻痺悪化の回避に努め、安全性を高めています。
  • 3)内視鏡手術
    腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症に対して低侵襲な方法で入院期間を短縮し早期社会復帰を実現しています。
  • 4)Balloon Kyphoplasty(BKP)
    骨粗鬆症性椎体骨折に対しての低侵襲手術で、入院期間が大幅に短縮されます。
教育

脊椎脊髄外科専門医を育成し、国民に良質で安全な治療を提供します。

国内留学で村山医療センター、慶友整形外科病院(館林市)に教室員を派遣し、脊椎脊髄外科研修を行っています。また、調布病院、清智会記念病院に脊椎脊髄外科専門医を派遣し、地域医療に貢献しています。

研究

骨粗鬆症、脊髄生理に関する基礎研究を行い、臨床に還元しています。

骨粗鬆症

現在当研究室で最も注目しているのは上皮小体ホルモン(PTH)の骨折治癒への応用を目的とした基礎研究です。家兎の骨折モデルにおいて、PTH が仮骨のリモデリングや力学的強度の増強に有効に働くことがわかりました。この研究成果は権威ある米国骨代謝学会の Young Investigator Award 受賞(2007年、丸野助教)という形で国際的に評価されました。現在、臨床応用に必要な基礎的データの収集や、同実験モデルを他の骨代謝疾患の病態解析に応用することを課題としております。
新しい骨粗鬆症治療薬の治験や新しい骨代謝マーカーの臨床応用、さらに脊椎圧迫骨折に対する保存療法、手術療法を含む新たな治療体系の構築など臨床研究にも積極的に取り組んでいます。

脊髄神経生理~安全、確実な脊椎脊髄疾患の治療をめざして~

脊椎脊髄手術の合併症として術後麻痺が大きな問題となっています。1970年代以降、脊髄機能診断学の発展により、術中脊髄モニタリングとして安全な脊椎脊髄手術に貢献しております。世界をリードするこの分野の中心人物の一人が第三代教授の里見和彦先生です。
臨床研究課題として術中脊髄モニタリングの信頼性向上に関する研究と、基礎研究課題として脊髄損傷後神経麻痺の機能代償機構の研究を行っています。双方とも安全、確実な脊椎脊髄疾患の治療をめざす重要分野であると考えています。

私たちの研究は(財)整形災害外科学研究助成財団 平成23年度財団奨励賞を受賞しました。